車名の変更による弊害は無視できない
ただし車名の変更は理解し難い。アクセラがマツダ3に変更された時は、メーカーから以下のような説明を受けたからだ。
「今のマツダは、デザイン、メカニズムともに統一性の高い車両開発を行っている。そこで個々の車名よりも『マツダ車であること』を際立たせるため、アクセラの車名を海外と同じマツダ3に変更した。今回のフルモデルチェンジで車名を変えた理由は、従来のアクセラに比べて、マツダ3は変更の度合いが大きいからだ。魂動デザインを進化させ、プラットフォームとサスペンションも一新して、エンジンはスカイアクティブXを新搭載した。まったく違うクルマに生まれ変わったから、車名の変更に相応しいタイミングと判断してマツダ3を名乗った」。
ところがデミオをマツダ2に変更したり、アテンザをマツダ6にしたのは、マイナーチェンジに過ぎない。マツダ3とは異なり「車名の変更に相応しいフルモデルチェンジ」ではないだろう。
クルマに詳しいユーザーは、アクセラの車名がマツダ3に変わったり、デミオがマツダ2に変更されたことを知っているが、多くの消費者は受け止め方が違う。アクセラやデミオが生産を終えて、マツダ3やマツダ2が発売したと解釈する。
また車名の変更は、旧来のデミオやアクセラのリセールバリュー(数年後の中古車価格と売却額)を低下させる心配もある。マツダ2やマツダ3の車名が定着すると、中古車を検索する時も、この車名が使われるからだ。
つまりデミオやアクセラの車名で中古車を探すユーザーが減り、中古車販売にも影響を与えてリセールバリューを下げてしまう。マツダフレアやフレアワゴンといったOEM車のリセールバリューが、本家モデルのスズキワゴンRやスペーシアよりも低いのと同じ理由だ。
ロードスターが車名を残す理由
デミオ/アクセラ/アテンザの車名をマツダ2/3/6に変更したので、次はロードスターをMX-5に変えるかと思ったが、この車名は残すようだ。
メーカーによると「ロードスターには歴代モデルのファンが多く、車名が財産になっている。またロードスターは、ボディスタイルやスポーツカーのカテゴリーを示す名称でもあるから、デミオやアクセラとは意味が違う」というのが存続の理由だ。
この説明はデミオ/アクセラ/アテンザを乗り継いできたユーザーに失礼だろう。この3車種に関しても、車名は大切な財産であるからだ。ロードスターだけ特別扱いするのは筋が通らず、デミオ/アクセラ/アテンザも変えなければよかったことになってしまう。
車名変更に伴いユーザー、販売店の支援が必要
中高年齢層の読者諸兄は、1990年頃に展開して失敗に終わったマツダ5チャンネル体制(マツダ店/フォード店/アンフィニ店/ユーノス店/オートザム店)を思い出すかも知れない。
この時は短期間で5つ販売系列を設け、姉妹車を急増させた。マツダクロノス/フォードテルスター/アンフィニMS-6&MS-8/ユーノス500/オートザムクレフという具合だ。
姉妹車関係が複雑で、どこで買えばいいのかわからず売れ行きを下げたが、特に難解だったのはアルファベットや数字で示される車名だ。
アンフィニにはMS-6とMS-8に加えてMS-9もあり、ユーノスは100/300/500/800を揃えた。オートザム店にもAZ-1とAZ-3があり、マツダ店はクロノスのクーペ版としてMX-6も扱った。今はSUVを増やしたメルセデスベンツの車名が複雑でわかりにくいが、当時のマツダはそれ以上であった。
今のマツダは車種の数が限られるから、5チャンネル体制のようなわかりにくさは生じていないが、似通った印象も受ける。
マツダの販売店からは「少し時間が経過すれば、新しい車名に慣れると思うが、アクセラなどを廃止して海外と共通化するとは思わなかった。アクセラのお客様からは『どうして親しんだ車名を今になって変えるの?』と尋ねられた」という話が聞かれた。
メーカーは車名を変えたからには、ユーザーが迷ったり、販売店が困らないように入念な支援をすべきだ。
この支援が円滑に進み、マツダのブランド表現力が従来以上に高まってユーザーの満足度も向上すれば、車名の変更は正解だったことになるだろう。30年前の失敗を繰り返さないでいただきたい。
【マツダ2価格(FFモデル)】
●ガソリンエンジン
15S 154万4400円
15Sプロアクティブ 166万3200円
15SプロアクティブSパッケージ 186万8400円
15S Lパッケージ 205万2000円
15MB 162万円
●ディーゼルエンジン
XDプロアクティブ 195万4800円
XDプロアクティブSパッケージ 211万6800円
XD Lパッケージ 241万3800円
※15MBを除くすべてのグレードに6AT、6MTの設定があり同一価格。4WDは6ATの設定のみで、価格はFFの20万5200円高。モータースポーツベース車両の15MBはFF+6MTの組み合わせのみ。価格は5万円程度の値上げとなっている
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