2019年7月16日、久々に日産バッジを“復活”させた改良モデルのスカイラインが発表。
これまで海外で展開する「インフィニティ」のバッジを纏っていただけに、ファンにとっては朗報……なのだが、やはり今のスカイラインは何かが違う。そう、感じている往年のファンは少なくないだろう。
それを裏付けるように、今年上半期の販売台数は、ひと月平均で僅か145台に留まっている。
スカイラインは、60年に渡る歴史を持ち、国産車の中で随一の伝統と根強いファンを持つ車種といっても過言ではない。
なぜ今のスカイラインは、ファンから支持されないのか?
さまざま考えられるなかで、真骨頂だった性能と価格のバランスが変化したことも理由のひとつにあげられるだろう。
文:片岡英明
写真:編集部、NISSAN
スカイラインを名乗るはずではなかった「21世紀のスカイライン」
プリンス自動車が生んだ名車、スカイラインは21世紀になると大きな変貌を遂げた。
変わったのは、2001年に登場した11代目のV35型スカイラインからだ。V35型のキャッチフレーズは「スカイライン・リボーン」である。
パッケージングからメカニズムまで、すべてを刷新し、内外装のデザインも変えた。新世代のFM(フロント・ミッドシップ)プラットフォームを採用し、エンジンは直列6気筒ではなく、V型6気筒だ。伝統だった2Lエンジンの設定も、自慢のターボも用意されていない。
デザインもスカイラインらしさが薄かった。「鉄仮面」や「丸型テールランプ」など、スカイラインのアイコンは11代目に継承されなかったし、プロポーションも異なっているのだ。
先入観なしに見ると、スカイラインとはわからない。だから往年のスカイラインファンからは反感を買い、乗り換える人が激減している。
もとはと言えば、このV35型はスカイラインとして送り出される車ではなかった。高級ブランドのインフィニティ一族の「G35」として開発され、北米などで販売を計画していたのである。1999年の東京モーターショーには「XVL」の名で参考出品され、日本では別の名前で発売する予定だった。
だが、ゴーン体制に移った日産は、ルノーの役員と協議し、このG35を急遽「スカイライン」として発売することを決めた。
だからスカイラインらしさは希薄だったし、性能的にも飛び抜けて高性能ではなかった。“プレミアムスポーツセダン”としての出来はよかったが、スカイラインを名乗るには魅力が乏しかったのである。
当然、日本のスカイラインファンからは敬遠された。少しでもファンを増やすために2003年にはクーペも投入する。このスカイラインクーペは丸型テールランプだ。
日本では今一歩の販売だった。が、北米市場を中心にインフィニティG35は大ヒットしている。販売が好調だったことにより、スカイラインの運命は大きく変わっていく。
販売が低迷しているため、日本だけでは存続が危ぶまれた。が、海外でヒットしたことにより12代目のスカイラインの開発にゴーサインが出されたのである。
そもそも現行スカイラインの実力は高いのか?
現行型(13代目)のスカイラインが登場したのは2014年2月だ。最初はハイブリッド車だけと割り切ったラインアップだった。
心臓は、3.5LのV型6気筒エンジンに、モーターの組み合わせである。ハイブリッドシステムは、独自設計の1モーター2クラッチ方式。驚くほどパワフルで、ターボより俊敏な加速を引き出すことができた。
また、世界初の「ダイレクト・アダブティブ・ステアリング」は、ステアリングの動きを電気信号に置き換えてタイヤを操舵する画期的なものである。異次元のシャープなハンドリングが自慢だった。2014年5月には久しぶりに2Lのターボエンジンを復活させている。
そして、2019年7月、スカイラインはフェイスリフトを行い、日本専用のフロントマスクを採用。
GT-Rと似た「Vモーショングリル」を採用し、リアには丸型4灯式テールランプを組み込んでいる。また、世界で初めてプロパイロット2.0を搭載したことも大きなニュースだ。
ステアリングを握ってみると、V型6気筒エンジンを積む新世代スカイラインは気持ちがいい。ワインディングロードでもダイレクトかつシャープな動きを見せ、操舵応答性は驚くほど正確である。
スポーツカーを操っているかのように、安定した姿勢を保ちながらコーナーを気持ちよく駆け抜けていく。前後の重量配分も直列6気筒の時代より優れている印象だ。しかも目地や段差などを乗り越えても乗り心地がいい。
また、静粛性も高い。クルージング時はとても静かだ。リラックスした気分でロングドライブを楽しむことができる。
コメント
コメントの使い方