今や新車市場はハイブリッド車(HV)全盛。
各メーカーの登録車に占める2019年上半期のHV比率を見ると、トヨタは46.6%、日産は61.3%、ホンダは54.3%とHVを得意とするメーカーではおよそ半数を占めている。
その一方で、トレンドに逆行するかの如くHVがあるのに純ガソリンエンジン車が好調に売れる車種もある。人気車では例えば、アルファード/ヴェルファイアもそのひとつ。
なぜ、純ガソリン車の方が売れているのか? その理由を考えたい。ハイブリッドの欠点も浮き彫りにできるだろう。
文:渡辺陽一郎
写真:TOYOTA、編集部
フィットもガソリン車が過半数!
まず、フィットはガソリンエンジン比率が高い。コンパクトカーでは価格の安さに選ぶメリットがあるからだ。
1.3Lエンジン搭載の「13G・Lホンダセンシング」は165万3480円だが、これに相当する「ハイブリッド Lホンダセンシング」は207万9000円だ。装備に多少の違いがあるものの、ハイブリッドは40万円以上高い。
また、コンパクトカーはガソリンエンジン車でも燃費が良い。
フィット「13G・Lホンダセンシング」のJC08モード燃費は24.6km/Lで、「ハイブリッド Lホンダセンシング」は34km/Lだ。従って燃料代にもあまり差が付かない。
ミドルサイズ以上の車種は、全般的に燃料消費量が多く、なおかつハイブリッドとガソリンエンジン車で燃費数値に2倍の開きが生じることもある。これに比べると、コンパクトカーではHVが不利になりやすい。
HVとガソリンエンジン車の価格差が縮まれば話は変わるが、40万円も差があると、燃料代の差額で価格差を取り戻しにくい。
HVにはモーター、駆動用電池、制御機能などが加わるから、簡易型のマイルドHVを除くと価格差を縮めるのは難しい。
そしてコンパクトカーは、主に買い物など日常的な移動に使われ、営業車など一部用途を除くと走行距離が短い。1年間の走行距離が3000~5000kmに収まる車両も多く、HVによる燃料代の節約が進みにくい。
これらの事情を考えると、コンパクトカーではガソリンエンジンが有利だ。
しかも今は安全装備が充実して環境性能も向上したから、以前に比べて車の価格が全般的に高まった。
例えば2001年に発売された初代フィットの価格は、最上級グレード「1.3W」が税抜で126万円だった。現行「13G・Lホンダセンシング」は税抜で153万1000円だから、価格が1.2倍に増えている。
安全装備の充実などを考えると、現行型の方が断然割安だが、単純に額面だけを見れば現行型が高い。
アル/ヴェルは8割弱がガソリン車!!
アルファード&ヴェルファイアは、Lサイズのミニバンだから、ボディが重くなって空気抵抗も大きい。燃費も悪化しやすく、HVを選ぶメリットが多そうだが、売れ行きはガソリンエンジン車が上まわる。
HVの販売が伸び悩む理由は価格差だ。
アルファード&ヴェルファイアのHVは、後輪をモーターで駆動する4WDになる。前輪駆動の2WDは選べない。そのためにHVは、特に4WDが不要なユーザーにとって、価格が割高と受け取られやすい。
直列4気筒2.5Lエンジンを搭載するアルファード2WD「S」(7人乗り)の価格は375万7320円だが、4WDのハイブリッド「S」(7人乗り)は463万2120円に達するから、約88万円も高まってしまう。
ガソリンエンジン車の4WDは、2WDよりも約25万円高いので、この金額を差し引き、さらに装備の違いも補正すると、HVとガソリンエンジンの実質差額は約50万円だ。
それでも価格差は大きく、なおかつ中級グレードで463万2120円というハイブリッド「S」の価格自体も高い。カーナビなどのオプション価格も含めれば、500万円に達する。
このような事情から、アルファード&ヴェルファイアの売れ筋はガソリンエンジン車になった。仮に2WDのHVをガソリンエンジンの50万円程度の価格アップで設定すれば、ユーザーが増える可能性もある。
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