マツダの新世代店舗「高田馬場店」はこうして生まれた

マツダの新世代店舗「高田馬場店」はこうして生まれた

 明治通り沿いの西早稲田駅周辺にやってくると、曲線を描く巨大な外壁とオープンデッキの建物が目にとびこんでくる。はっとさせる存在感と高級感があるいっぽうで、近寄りがたさはあまり感じさせない。

 光がふりそそぐウッドデッキは、いかにも居心地のよさそうな雰囲気で、カフェ店舗と勘違いしそうになるくらいだ。本格的なカフェカウンターもガラス越しに見える。

 実はこれ、11月5日にオープンしたばかりのマツダの新店舗「高田馬場店」のことなのだ。

 関東マツダのなかでは、目黒碑文谷店に続く2店舗目の新世代店舗となるが、今回のリニューアルにあたっては「外と中との連続性、入りやすさ」を大切にしたという。

 リニューアルのキーマンである、マツダデザイン本部の前田育男氏(写真・右)とデザイン・設計を担当した建築家の谷尻誠氏(写真・左)にお話をうかがった。

 文:WEBベストカー編集部/写真:WEBベストカー編集部


明治通りを何度も往復して見え方を確かめた

 編集部 目黒碑文谷店に比べてずいぶん明るい雰囲気の店舗になりましたが?

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ガラスの向こうにはカフェのカウンターが見えている。展示車がなければ居心地のよさそうなカフェそのもの

 前田 高田馬場店は地域性を考えて方針を決めました。谷尻さんと最初に打ち合わせたときも、「明治通り沿いだし、大学がいっぱいあって若い人がいっぱい通るよね。そういう人たちが、すっと入ってこれるような感じにしたいよね」と話ました。そこから生まれたのが、こうした縁側的な外と中をゆるやかにつなげる発想のデザインです。

 編集部 新世代店舗にはブランド体験型の側面があるとのことですが?

 前田 そう、以前のディーラーだとクルマを買うこと以外にやることがない。だから店舗に入れないんですよ、買う気のない人は。
そもそもクルマの販売店って入りにくい店舗が多いじゃないですか。高級な店舗ほど入りにくい。ヨーロッパのお城のように、城門を越えていかなきゃいけない気の重さがある。しかも入ったら書類を書かされるかなって。

 でも日本の寺院ってすごく入りやすくありませんか。ヨーロッパのお城と違って、どこへでもすっと入っていけてしまう。それでいて、おもてなしの敷居みたいなものは作ってある。

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オープンデッキと店内には、空とルーバーから漏れる光が木漏れ日のように差し込む

 編集部 そうした日本的な間を生かしたのが新店舗ということなのですね。

 前田 この窓際のあたりに立つと分かるのですが、外壁をルーバーの組み合わせにしたのは、光が木漏れ日のように落ちてくるのを狙ってです。その木漏れ日の下からゆるやかに外と内が繋がっている。

 編集部 このウッドデッキの部分の屋根はあえて外してあるのですね。

 前田 そうです。閉ざされた空間ではない、ゆるやかなつながりを表現したくて、こうしたオープンなスペースにしてあるのです。

 あと、外から見たときに、ゆるやかにルーバーがツイストしているから、光が動くんです。建屋としての圧迫感って、実は環境にすごく大きなインパクトを与えてしまいます。巨大なボックス状の建物ができると「うわっ」とプレッシャーがかかる。そういうところも払拭したくて、この外観デザインにしました。

 でも、このルーバーってのは、相当チャレンジングな試みでしたね。いったい、どう見えちゃうんだって。

 谷尻 すごく上手くいきましたよね。

 前田 この辺は、実はクルマのデザインと建築家のコラボが生きているところなんです。このルーバーの角度とか、見え方のシミュレーションをクルマのCADを使ってやっているんです。

 われわれクルマ屋は、コンマ3mmの世界で見栄えを検証しているんで、ものすごく正確なものができる。でも、建築用のCADはすごく荒くて、われわれからするとありえないくらい(笑)。

 谷尻 わりときれないほうなんですけど(笑)。

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