「自動運転」という言葉がある。手放し運転を想像する人や、部分的な運転支援を考える人など受けるイメージはさまざまだろう。過渡期にある技術だからこそ、誤解も生じやすい「自動運転」。
今後、その普及に伴って、どんな問題点が出てくるのか? その3大論点に迫る。
文:西村直人
ベストカー2016年11月26日号
自動運転社会に対する問題点とは?
- 1.過信
- 2.人への影響
- 3.社会への影響
上記の3つの問題が発生する。1つずつ解説していく。
自動運転でも機械のミスは発生する
「過信」で真っ先に問われるのは「自動運転」技術への信頼性。このところ「自動運転」技術を推進する報告書の多くには、「事故原因の80~90%は人の認知・判断・操作に起因する」との記述が目立つ。確かに統計上はそうなるのだろう。
しかし、機械側にもミスやエラーは発生する。一般社会ではこうしたミスやエラーを見越したフェイルセーフ機能を予めプログラミングしたり、
ほかのシステムでバックアップしたりすることで大きな問題になりにくいと言われているが、それでも完全無欠ではない。技術への過信が正しい普及を妨げるという問題点がここにある。
ドライバーの“危機回避能力”が低下
「人への影響」は非常にシンプルだ。高速道路などで条件が整えば、ほぼ100%の運転操作をシステムに任せること(いわゆる「レベル4」の段階)ができるようになると、人は運転環境に対する緊張感を徐々に失いはじめる。
また、手動で運転する時間が少なくなることで、ドライバーの平均的な運転スキルが低下することが考えられるし、異変を察知したり、自らの運転で危険を避けたりする能力も下がる。ここが大きな問題点だ。
欧州や北米における商用車の世界では、レベル4での運転中にステアリングから手が放せ、さらにシートをリクライニングさせた車内で伝票整理などのサブタスクを行えることが提案されている。
しかし、車両総重量(GVW)25t以上の大型トラックでそれは望ましい姿なのか……。
情報端末の画面とにらめっこしている最中に、クルマ側から「10秒後に手動運転に切り替えます!」とアナウンスされて、瞬時に周囲の安全状況を把握して運転操作を引き継げるのか……。
先頃、セレナが「プロパイロット」という名の運転支援技術を搭載してきた。しかしセレナのみならず、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=追従型のクルコン)や衝突被害軽減ブレーキとしての自律自動ブレーキには、制動力など物理的な限界がある。
このため運行状況を監視するというドライバーに課せられた重要なタスクは、こうした運転支援技術を搭載しているクルマであってもドライバーに残るわけだ。責任もしかりだ。
よって、自動運転技術が実用化される前にルールを作り、運転支援技術に対する正しい使い方の徹底を図る必要がある。
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