カタログに記載される燃費は、実燃費より2割程度いい数値がほとんどだ。
現在、カタログ燃費は「JC08モード」という基準で計測されるが、導入時は「これで実燃費に近づく」というふれこみだったハズ。ところが、蓋を開ければ実燃費との差は少なくなかった。
こうした背景もあり、2018年度から新たな燃費基準「WLTPモード」の導入が決定した。この「WLTPモード」とはいったい何なのか? そして、この新基準によってカタログ燃費は本当に実燃費に近づくのか?
文:鈴木直也
初出:ベストカー2016年6月26日号
WLTPモードは世界共通のカタログ燃費基準に
今年発覚した三菱の燃費不正問題は業界を大きく揺るがした。そして、その肝心のモード燃費を測定する規格そのものが、大きく変わろうとしている。
JC08モードに代わる新しい燃費測定規格の名称はWLTP。ワールドハーモナイズド・ライトビークル・テスト・プロシージャの頭文字をとった略称で、翻訳すると「小型車の国際調和テスト基準」とでも申しましょうか。
その名のとおり、各国バラバラだった燃費測定モードを統一する、はじめての世界共通燃費規格となる予定だ。
じつは、この新燃費規格WLTP、日本では2018年度からの導入がすでに決まっている。
ユーザーの混乱を避けるため、2022年までは従来どおりのJC08モードとの併用が認められているが、もうすぐ世界共通でカタログ燃費の比較ができる時代がやってくることは間違いない。
JC08モードに特化していた国産車はいい燃費値が出にくくなる
では、従来のJC08モードと比較してWLTPはどこがどう変わるのかだが、その仕様書を読み込んでみると「より平均速度がアップして、欧米の実用モードに近づいた」というイメージで間違いない。
JC08と単純比較すると、平均速度は24.41km/h→36.57km/h、最高速度は81.6km/h→97.4km/hへアップ。逆に、アイドリング時間は29.7%→15.4%に減っている。
JC08モード燃費では、アイドル停止をフル活用し、加速時にはCVTで燃費ベストゾーンをキープして数字を稼いでいるクルマが多いが、WLTPモードになると日本車のいわゆる“JC08スペシャル”はかなり不利となりそう。
なんとなく、またしても「欧米人中心のルール変更かよ?」というヒガミの声も聞こえなくもないが、より現実に即した燃費測定モードにしようという趣旨からいえば、方向性は間違っていない。
また、もうひとつ地味だけど重要なポイントは、試験車両の等価慣性重量区分(シャシダイナモに設定する負荷抵抗。三菱はここをインチキして軽く設定した)が、リニアな実重量となること。
これまでは、たとえば等価慣性重量1020kgでテストする車両は、実重量971~1080kgまでといった段階的区分だった。それゆえ、境界ギリギリのクルマは何がなんでも軽い区分に滑り込むため、たとえば燃料タンク容量を縮小するといった無茶がまかり通っていた。
WLTPではそういう無意味な燃費スペシャルが通用しなくなるわけで、これはユーザーにとってフェアな正常進化といえる。
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