2017年4月24日は日産・スカイラインの誕生60周年記念日。東京都港区の六本木ヒルズでは4月21日〜24日(11:00〜20:00/最終日のみ18:00まで)の日程で歴代全13モデルが展示されるイベントが開催。
メイン写真は本イベントに先立つ4月20日、プレス向けの発表イベントで俳優、ミュージシャンの浅野忠信さんが登場し、自身のスカイラインに対する熱い思いを語った際のもの。
そのイベントを取材した『ベストカー』本誌ウメキ(かつてのスカイラインオーナー)が、「ここはオレに語らせてくれ!」と当サイトへ長文を寄稿。
その熱い想いを受け止める覚悟がある方だけぜひどうぞ。スカイライン汁がほとばしってます!
文・写真:編集部ウメキ 日産自動車
日産のスカイライン担当開発者は大変だなぁ……と
1957年4月24日に初代「ALSI」型スカイラインが世に出て60年を迎えた。還暦だ。
現行型V37型でスカイラインは13代目となる。常々思っているのだが、歴代スカイラインの開発を担当する『日産の人』は大変だなぁ……と。
何しろ日本史上ほかに類を見ないビッグネームだから、代を重ねるごとに「オレのスカイライン」像が多岐にわたり広がって行き、どんなスカイラインを作り上げても必ずや反発の声を受けなければならないからだ。
いっぽう、その反発を畏れて無難な新型スカイラインを世に放とうものなら「新型スカイラインはつまらない」などと、これまた批判の対象になる。
おそらく、どんなに素晴らしい“新型スカイライン”を作り上げても、絶対に批判の声がない、などということはあり得ない。歴史ある名車、スカイラインとはそういうクルマなのだ。
今さらですが、スカイラインの歴史をおさらい
スカイラインといえば「GT=スカG」……というのが一般的なイメージだろう。
その成り立ちはあまりにも有名すぎて、今さら説明するのも気恥ずかしいのだが、それは2代目、まだ日産と合併する以前のプリンス自動車工業時代のS50型スカイラインにグロリア用の直列6気筒、2Lエンジン(G7型)を搭載した『スカイラインGT』に端を発する。
日本グランプリに出場するために100台を突貫作業で作り上げてホモロゲを取得した、というあの話だ。
このときの100台が『スカイラインGT』であり、その後カタログモデルとして正式にラインアップに加わったのが3連ウェーバーキャブのハイパワー仕様『スカイライン2000GT-B』とシングルキャブの『スカイライン2000GT-A』だった。これが現代に続くスカGの歴史のスタートなのだ。
ショートノーズの2代目S50型スカイライン。このスカイラインまで開発はプリンス自動車興業だ
その後スカイラインは6気筒エンジン搭載モデルに「GT」という名称を与え、特別な存在の最上級スポーティモデルとして大切に育て上げられてきた。
4代目C110型(ケンメリ)以降、スカGには丸形4連テールランプが与えられ、これが後々スカイラインのアイデンティティとなっていく。
日産の開発に移行した3代目C10型、いわゆるハコスカにはステーションワゴン、4ナンバーのバンなども用意されていた
だがしかし、真のスカイラインファンはスカイラインの真髄は4気筒エンジン搭載モデルにある!! 不肖ウメキはそう断言したいわけだ。
スカイラインの真髄は4気筒にあり!!
もともとスカイラインは4気筒エンジンを搭載する手軽でちょっとスポーティな走りを楽しめる4ドアファミリーセダン、というコンセプトで誕生した。
実際、プリンスのS50型だって「スカイライン1500」がオリジナルとして存在しており、先に述べたようにレース用に直6エンジンを搭載したのがスカGだった。
長い直列6気筒エンジンを搭載するため、フロントノーズを切った貼ったで延長したためホイールベースはオリジナルの2390mmから200mmも長い2590mmとなり、全長も4100mmから4300mmへと伸びている。
結果、ロングノーズスタイルとなったGTは伸びやかでスポーティなプロポーションとなったのだが、走らせるとショートノーズの4気筒車のほうがフロントが軽く、またホイールベースが短く軽快だったというのは当時を知る人にとっては定説だったのだ。
続く3代目C10型、いわゆるハコスカでも同様。オリジナルは4気筒エンジンの「スカイライン1500」で上級スポーティバージョンとして「スカイライン2000GT」が用意された。
ホイールベースは4気筒が2490mmに対し6気筒は2640mmと150mmの差。さらにC10型では1970年に2ドアハードトップが設定され、こちらは4ドアセダンに対し70mm短いので、C10型スカイラインには4タイプのホイールベース違いが存在しことになる。
一番短いのは4気筒のハードトップの2420mmである。
4気筒車と6気筒車のホイールベース違い(というか、ノーズ長の違い)は5代目C210型「スカイライン・ジャパン」まで継続された。
81年に登場した6代目R30型ではノーズ長の差別化は廃止され、6気筒、4気筒ともにフロントノーズ長は同一とされ、プロポーション状の違いは消滅したものの、
それでも軽い4気筒エンジンを搭載する「TI」シリーズは、6気筒エンジン搭載のGTに対しハンドリング面では勝っている部分も多く、あえてTIを選ぶ人もいた。
4代目C110型ケンメリの4気筒エンジン搭載モデル。ショートノーズ、ショートホイールベースに加え、テールランプはGT系の丸形4灯とは差別化された独特のデザイン
C210型5代目スカイラインでは4気筒ショートノーズバージョンに「TI」という名称が与えられた。TIとはツーリングインターナショナルの意味
この4気筒シリーズ、4代目C110型以降7代目R31型まではスカイラインのアイコンとも言える丸形4連テールランプが装着されていないのだ。
一部例外はあるものの、スカイラインの4連丸形テールランプは「スカG」の証であり、4気筒シリーズにはその時代時代のオリジナルデザインのリアコンビランプが与えられていたことを思い出す人も少なくないはず。
スカイライン=丸テールではなく、スカイラインGTの特別装備が丸形4等テールランプなのだ。
ところが89年に登場したR32型では1・8L、直4エンジン搭載の「GXi」でも他のGT系と同じ丸形テールランプが与えられていたが、これはおそらく、1グレードのみ残された4気筒車のために異なるパーツを用意するコストを抑えるためだったのだろう。
そして93年にR33型以降、4気筒スカイラインは一旦姿を消す。「一旦」といったのは、現行型V37では4気筒2Lターボの200GT-tが存在するため。ダウンサイズ時代になり、スカイラインは4気筒車にも「GT」の名称を与えたのだ。
現行型であるV37スカイラインの200GT-t。2014年5月に発表され、日産は「次世代ターボ車」と名付けた
また、スカイラインには伝統的にステーションワゴンがラインアップされていた。6代目R30型までは4ナンバーのバンもあり、このR30型には異色の存在として5ドアハッチバックのラインアップもあった。
この時代、車種バリエーションが少なく、ひとつの車名にさまざまなボディバリエーションが用意されていたものなのだ。そんなスカイラインも今では4ドアのみ。2ドアクーペもあるにはあるが、V36型のままで新型に切り替わりが待たれている。
スカイライン史上、唯一の5ドアハッチバックが設定されたのがR30型。6気筒エンジン搭載モデルは「GT」で丸形テールランプが装着されたが、4気筒の「TI」は角形テールランプだ
今、日本のスカイラインファン……否、スポーツセダンファンは新型インフィニティQ50を待望しているのではなく、日本のための新型スカイラインが欲しいのだ。
そう、5代目C210型がそうアピールしたように、『日本の風土が生んだ名車』、スカイライン・ジャパンの復活だ!!
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