そうはいっても各社事情が異なり、祝日や休日を動かすことは並大抵のことではない。
今回の理事会では、「まずは業界で祝日を動かす、という検討を始めよう」というところまでコンセンサスが取れたという。片山正則副会長(前会長/いすゞ)は、「やるという方向で考えよう、というメッセージを今日はトップが出した」と強調。「長期連休を前段・中段・後段に分散して工事を組み込むことで、9〜10日間の連休がなくても対応できるはずだ」と具体案を示した。
この議論の背景にあるのは、自動車産業の人材確保への危機感だ。列席した記者から「豊田市内でブラジル人労働者ですら”子供には継がせたくない”と言っている」という現場の声が紹介されると、佐藤会長は「その通りです。やりがいを持ってものづくりに携われる環境を産業として作らなければ、人が来なくなる」と語った。
人への総合投資という観点でも、協調領域が広がっている。工場のDX化や自動化においても、各社がバラバラなシステムを採用すれば、サプライチェーンの深い部分にいる部品メーカーはOEM各社ごとに異なる対応を求められ、負担が2倍・3倍になる。標準化できる部分を協調し、その分の経営資源を競争力強化に集中させる── その構図は、自動運転でも物流でも働き方改革でも共通している。
また、今後の取り組みとして国際連携の強化も報告された。総合政策委員長の松山氏が米国の自動車業界団体(AFAI・ADAなど)との意見交換をワシントンD.C.で実施したことが明かされた。日本の自動車産業が米国で生んでいる雇用・投資・拠点の情報をまとめたPR資料を用いて、政権との関係強化に取り組んでいる。来週にはヨーロッパにも訪問し、資源調達や自動運転規格に関する意見交換を行う予定だ。
「自動車産業のために捨て身でここに来ています」とメディアの役割
佐藤会長は今回の説明会の最後にこう締めくくった。
「決まったことしかしゃべらないというコミュニケーションはしたくない。リアルタイムで皆さんと議論しながらインタラクティブに進めていきたい。次回も1カ月後をめどに、さらなる進捗を共有できるようにしていきます」
これまで2カ月に一度だった自工会理事会と記者会見を、当面は1カ月に一度のペースに引き上げるという。ほ……本気だ。
佐藤会長は先日(2026年2月6日)、トヨタ自動車の社長職を退いて、副会長へ就任することを発表した(4月1日付け)。就任からわずか3年でのトヨタ社長交代劇に記者たちから「なぜ?」と問われた佐藤会長は、「自動車産業全体の発展に身を尽くす」と語った。トヨタ社長職を近健太氏へ譲り、自身は自工会会長職および経団連副会長職に専念する宣言をしたわけだ。
つまり佐藤会長は、こういった自工会としての活動を加速させるためにトヨタ社長職を辞して働くということ。佐藤会長は「これで(自工会の活動が)加速しなかったら、ぼく、バカみたいじゃないですか。自動車産業のために、捨て身でここに来ているんです」と語る。
【参考記事】「情熱の火を灯せ」トヨタが電撃社長交代で「業界連携×稼ぐ力」アップ!! 佐藤恒治氏は副会長CIO、近健太氏が社長CEOへ
本記事で紹介したとおり、今回の自工会理事会では「危機感の共有」に多くの時間が使われた。また、自工会が「新7つの課題」を進めるにあたり、重視している3つの柱のうちのひとつに「ナラティブなアプローチ」を挙げている(残り2つは「多様性という特性の利用」と「スピード感」)。
今回異例のペースでメディア向け説明会が開かれたのは、佐藤会長が率いる自工会が「ナラティブ」、つまり「メディアと国民へ物語ること」を重視し、「メディアもこの危機感を持ってくれ、この危機感を国民に伝えてくれ」というメッセージだと受け取った。自動車産業は日本経済の大黒柱であり、いま迫りくる危機に、一緒に対応してくれ、と。話し合っている内容は全部共有するから「オールハンズ」で立ち向かってほしい、と。
「灰皿一個の共通化」に終わらないために。自工会の本気が形になりつつある。本誌は自動車情報専門メディアの本懐として、巨大な課題の社会実装に本気で取り組む自工会の動きを、自動車ユーザーとの架け橋として、以後も詳細に伝えていきます。頑張って!!
【画像ギャラリー】自工会佐藤恒治会長と自工会メディア説明会配布資料(4枚)画像ギャラリー



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