ホンダ N-BOX 開発者が語る「発売5年後でも月2万台売れる」理由

ホンダ N-BOX 開発者が語る「発売5年後でも月2万台売れる」理由

 N-BOXが売れ続けている。デビュー直後から高い支持を獲得したN-BOXは、2012-2013年度と軽自動車販売1位となり、 2014年度はダイハツ タントにトップを譲って2位になったものの、2015-2016年度とトップを奪還。

 また、2017年3月単月でも登録車を含めたすべての車のなかで1位(2万6125台)となっており、新車時の勢いをそのまま持続している。

 正直、これほど売れ続けるとは想像できなかった。

 N-BOXの登場は2011年。販売を左右する燃費性能では後発のライバル、スズキ スペーシアやダイハツ タントが上回り、すでに発売開始から5年以上が経過している。にもかかわらずN-BOXは軽自動車トップセールスをいまだに記録し続けているのだ。    

 なぜ、N-BOXは売れ続けるのか? 開発責任者、そしてジャーナリストに訊いた。

文:編集部、鈴木直也/写真:HONDA、編集部


開発者が語る肝は3つの技術

N-BOXの開発責任者を務めた浅木泰昭氏(現・本田技術研究所執行役員)
N-BOXの開発責任者を務めた浅木泰昭氏(現・本田技術研究所執行役員)

 N-BOXをはじめとするNシリーズは、ホンダが軽自動車から撤退するかどうかという時に、最後の砦として開発されたクルマです。

 お客さん、特に女性のニーズを徹底的に掘り起こすとともに、競合他社が5年経ってもマネできない技術を搭載することを命題としました。

 値引きで競合他社と争うのではなく、プライスレスの、お金に換えられない価値を技術で提供することを目標にしたのです。

 結果的に発売から5年経ってもトップでいられるということは、その開発姿勢が正しかったということかもしれません。

 プライスレスの価値を持つ技術は、大きく分けて3つあります。ひとつはホンダが得意とするセンタータンクレイアウト。フロアを低くできるので女性が脚の力を使ってひとりで自転車を積み込めます。

 夜、母親が娘を駅まで迎えに行って、自転車と娘を一緒に連れて帰ることができる。他社のクルマもスペース的には自転車を積めるかもしれませんが、男性の腕力が必要なのです。

 次は圧倒的なエンジンルームの短さ。軽自動車というかぎられた全長のなかではアクセルペダルの位置、つまりドライバーをどこに座らせるかが重要です。

 N-BOXでは競合車よりもアクセルペダルを10cmほど前に置いていますので、それだけ後ろの空間も広いのです。小手先の数値ではなく本質的な広さを追求しているわけです。

 もちろん、衝突時の安全性はいっさい犠牲にしていません。コンパクトなエンジンを新しく開発できたからこそできた広さです。

ホンダのお家芸、センタータンクレイアウトを採用し、上級セダン並みの後席空間を実現したN-BOX
ホンダのお家芸、センタータンクレイアウトを採用し、上級セダン並みの後席空間を実現したN-BOX

独創的なデザインを可能にした新しいミラーシステム

 そして、3つめはデザイン。背の高い軽自動車は、どうしてもボディよりガラスの天地幅が広くなってしまいます。

 その理由は通称「1mポール」という法規があって、これは要するに子どもに見立てたポールなのですが、クルマの前方と左側面に置かれたこのポールを運転席から見えるようにしなければなりません。そのためにガラスの天地幅が大きくなってしまい、かわいらしいデザインになってしまうのです。

 そこで我々はAピラーの室内側に置く「ピタ駐ミラー」という新しいミラーシステムを開発しました。

 その名のとおり死角を減らして駐車をしやすくするための装備ですが、同時に「1mポール」の法規をクリアするためのものでもあります。

ピタ駐ミラー。ミラーAは、ドアミラーの背面に付けたミラーとの合わせ鏡で、運転席から見えにくい左前輪の前方を映す。ミラーBは、運転席から見えにくい助手席側ドアの下あたりを映す
ピタ駐ミラー。ミラーAは、ドアミラーの背面に付けたミラーとの合わせ鏡で、運転席から見えにくい左前輪の前方を映す。ミラーBは、運転席から見えにくい助手席側ドアの下あたりを映す

 これを使うことで、N-BOXはガラスとボディの比率を黄金比にすることができ、男性にも女性にも違和感がなく、かわいすぎず、クールすぎない、普遍的なデザインにできたのです。

 フェンダーなどに補助ミラーを付けるという方法もありますが、法規を満たしながら、安全性や使いやすさにこだわり、新たな技術を採用したことで誰からも受け入れられるデザインが生まれたのです。

次ページは : 独自の技術で潜在ニーズを掘り起こす

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