ホンダ N-BOX 開発者が語る「発売5年後でも月2万台売れる」理由

独自の技術で潜在ニーズを掘り起こす

 当然、この3つだけで成功するわけではなくて、そこはやはり、最初に言った女性のニーズを聞くこと、さらにその先にあるはずの潜在ニーズを考えることが重要です。

「送迎に使いやすいクルマ」という要望から、子どもと自転車を一緒に連れて帰れるよう、女性がひとりで楽に自転車を積みたいという潜在ニーズまで想像力を働かせ、考えに考え抜く。そして、ホンダのオリジナル技術でそれを実現できれば強い商品になるのです。

 N-BOXの開発コンセプトをひと言で表現するなら「独自技術で潜在ニーズに応える」となります。成功の理由は、それがうまくできたということでしょうか。

(取材/文:編集部)

N-BOXの荷室は、自転車の積み降ろしのしやすさにも配慮されている
N-BOXの荷室は、自転車の積み降ろしのしやすさにも配慮されている

N-BOXが売れ続ける理由は作り手の全力投球な姿勢にあり

 N-BOXの人気の秘密は、ぼくの見るところ、作り手側の全力投球ぶり、あるいは渾身の熱いクルマ作りみたいなものが、N-BOXを通してユーザーに伝わった結果ではないかと思ってる。

 N-BOX以前、ホンダにおける軽自動車の重要度は明らかに低かった。最重要課題は北米市場、続いてそのほかの普通車、それから軽自動車という順番。

 大きな投資ができないからエンジン・パワートレーンもライバルよりひと世代古く、生産も子会社の八千代工業に任されていた。

 これでは、鎬を削る激しいシェア争いを繰り広げるスズキとダイハツのライバルたり得ない。国内市場における軽自動車の重要性が増すなかで、ホンダは危機感を強めていたわけだ。

 しかし、こういう危機バネが働いた時のホンダは強い。

 LPL(開発責任者)にセナ/プロ時代のターボF1エンジンに携わっていた浅木泰昭さんを引っ張ってきて、エンジン・パワートレーンはもちろんプラットフォームから一新。

 商品ラインアップ面でもN-BOXを中心に多様なバリエーションを一気に展開。全社一丸となって反転攻勢に打って出たのだ。

N-BOXは発売後、N-BOX+や、写真のN-BOXスラッシュなど、積極的に派性モデルを拡充させた
N-BOXは発売後、N-BOX+や、写真のN-BOXスラッシュなど、積極的に派性モデルを拡充させた

N-BOXにホンダ復活の鍵あり

 ぼくは、メーカーが“本気”を出せば、それは必ずユーザーに伝わると思っている。

 ぞくぞく登場した新しいNシリーズは、ほかのどのホンダ車よりフレッシュでエネルギーに溢れているのがアリアリ。

 ユーザーに「なんかよくわからないけど、このクルマすごくよくない?」と感じさせるメッセージ性とでも言いますか、そんな目に見えないオーラがあったからこそ、N-BOXはこれだけのロングセラーに育ったんじゃないかと思う。

 最近のホンダはあまり明るいニュースがないけれど、N-BOXの衰えない人気ぶりに、たぶん復活のヒントが隠れているように思う。

(文:鈴木直也)

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