2027年度からの変更の中身──「第一歩」の先にある産業変革
今回の見直し内容を改めて正確に整理する。変更は2つのセットだ。
①GW期間中に集中していた工事・設備切替作業を、年間を通じて平準化する。これによりGW前後の協力会社(工事業者等)への負荷集中を解消し、工事計画の安定化・中長期的な人材確保につなげる。②その代わり、ハッピーマンデー(成人の日・敬老の日・海の日・スポーツの日等の月曜祝日)を世間一般と同様に休日化する。
「なぜGW集中工事を解消できるのか」については、鈴木副会長がこう語った。
「やる気になれば集中させなくても工事はできる。技術の進化でその余地は生まれており、AIも活用しながら工夫をしていきたい」
注意すべきは、2027年度は「休日総数は変わらない」点だ。会見の質疑で日経新聞記者が確認し、鈴木副会長が「2027年度は休日数が増えるということではない」と即答している。今回の変更は休日の「量」ではなく「配置」を世間に近づけることが本質だ。
また、このカレンダーの見直しは一斉強制実施ではなく「準備が整ったOEM(自動車メーカー)から順次実施」という形をとる。自動車産業はOEMを頂点に一次・二次・三次サプライヤー、物流会社、ディーラーまで広大なサプライチェーンを形成しており、稼働日が変われば部品納入スケジュールから物流ルートまで広範な調整が必要になるからだ。
本件を担当する自工会・祐川人財部会長(ホンダ)は「本日以降、関係団体へのヒアリングを含めた丁寧な理解活動を行う」と述べ、自動車総連(労組)とも「何度もお話し合いの場を持った」ことを明かした。カレンダー改革は自動車業界だけでは完結しない取り組みだ。
そして今回の変更は「終点」ではなく「出発点」だという点も重要だろう。祐川部会長は「今後継続して生産性向上を重ねることで、将来的には休日増を含む多様な働き方を実現できる産業構造へ進化したい」と語る。休日の増加は生産性向上との引き換えで実現していくという筋道が示されており、今春の春闘で休日増に踏み切った自動車メーカーの現場では「休日が増えると生産性を上げなければという緊張感が走った」という声も紹介された。
いや……まあ……確かに、自動車メーカーの管理職って、そういうこと(「休みを増やすならそのぶん平日の生産性を上げなきゃダメだよな」等)を言いそうだな…とは思います。はい。みんながんばろう。しあわせになろう。たくさん働いてしっかり休もう。
「自動車カレンダー」の本質は「産業内で同期し、社会とは非同期になるカレンダー」だった。この同期性こそが日本の自動車産業の強さを支えてきたが、社会との非同期がもたらすコストが、いま無視できない水準に達した。理想形は「自動車カレンダーをなくすこと」ではなく、生産同期のメリットを残しながら、社会とのズレを縮めていくこと、モビリティ産業が百年先も日本経済の大黒柱であり続けるための、優秀な人材確保だ。2027年度から始まる見直しは、その「産業の体質改善」の静かな、しかし確かな第一歩といえる。
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