軽量化のメリットとデメリット
なぜ自動車メーカーは新型車を軽量化するのか。それは、車のほとんどの性能を向上させる万能の対策法だからだ。
燃費がよくなるのはもちろん、加速やブレーキの性能も向上するし、ハンドリング性能もよくなる。さらに衝突時の衝撃力も減少するから、衝突安全性も高まる。
燃費だけを考えれば、空力性能の向上や転がり抵抗の低減、パワートレーンの効率アップでも改善は見込めるが、軽量化することで燃費を含めたトータル性能の向上が実現できるため、自動車メーカーにとって大きなアドバンテージとなるのだ。
面白いのは部品を軽く作ることで、その部品の支持剛性を落とすことができるから、さらにステーやブラケットを軽量化することもできる。軽量化が更なる軽量化を生むような現象も起こるのだ。
自動車メーカーとしては部品点数を減らすことで、部品の在庫管理のコストを削減できるのもメリットといえる。
■軽量化のデメリットは『コストと耐久性』
剛性や強度を確保しながら軽量化することには当然ながらコストがかかる。
「高価な材料を使えばより軽くすることもできると思うが現時点では軽自動車に必要な低価格を実現できないと考えています」
(ダイハツ工業車両開発部ボディ設計室主担当員・秋本智行氏)
というように軽量化は価格とのバランスが重要なのだ。
さらに経年劣化という問題もユーザーとしては無視できない。樹脂部品は熱や水分油分、紫外線などの影響を受けて、いずれは脆くなってしまう。
高張力鋼板も新車時は素晴らしい感触を伝えてくれるが、薄肉な分だけ劣化も進むから初期性能を長期間に渡って維持することは難しい。
硬いモノコックボディもやがては緩いボディになっていく。
鋼板、アルミ合金、CFRPなど材料を組み合せることは、効率よく軽量化するためには有効だが、リサイクル性を考えると分離させる方法まで考えなければならない。
安全技術の進化が軽量化やデザインの今後を変える!?
パーツの樹脂化も現時点ではかなり行き着いた感があるが、鋼板を使用しての軽量化のほうが限界に近づいているから異素材、特に樹脂化はますます進められるだろう。
今、材料メーカーや自動車メーカーが研究を進めているのは、エンジン部品の樹脂化だ。
カムカバーやインテークマニホールドといった部品は現時点でも樹脂化されているが、シリンダーブロックやコンロッドなども樹脂化が検討されている。
カーボンファイバーを樹脂に混ぜることで強度を上げる方法も、高級車から大衆車へと採用が広がっていく。今後は従来の樹脂部品からの置き換えやボディパネルなどへの採用が進んでいくだろう。
そして軽量化技術だけでなく、衝突事故を予防する技術が普及すれば、衝突安全性のための強度が今ほど必要ではなくなる時代になる。そうなればクルマのデザインも大幅に変わっていくかもしれない。
今後、クルマの進化はどういう方向性になっていくのか。まだまだ色んな可能性があるクルマの未来は、想像するだけで楽しめそうだ。
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