■ダイソンは自動車を作ることが可能か?
さてダイソンだ。ダイソンは家電業界でユニークな技術を売りにしており、モーター技術も持っている。
だからといって電気自動車を独自に作れるかと聞かれたら、迷うことなく「いいえ!」と答えるだろう。前述の通りテスラですらトヨタの工場がベースになっているし、車体技術は自動車メーカーのベテランによって実現している……。
ここまで読んで鋭い読者諸兄なら気づくことだろう。「テスラを見習えばよい」と。
具体的に説明したい。ベースになるのは自動車技術の専門家チームだ。いまや日本人を筆頭に自動車関係のレベルの高い技術者がたくさんフリーランスになっている。
中国の自動車産業が飛躍的に進んだのも、すべて日本人の技術者によるもの。今や世界最大の電気自動車メーカー「BYD」をみると、日本人の技術者だけで100人くらいいるそうな。高額の給与を提示されたり、定年を迎えた後の再就職など、事情はさまざまです。
開発だってゼロスタートをしなくていいかもしれない。あくまで「例えば……」だけれど、三菱自動車がクルマ作りを教えたマレーシアの「プロトン」あたりと組んでマレーシアに開発&生産拠点を置いたらどうか。
日本の生産技術とイギリスのアイデアをミックスさせた電気自動車など作ったら、相当レベル高い内容になると思う。マレーシア政府も電気自動車の生産国になることは望ましいこと。
ダイソンはイギリスの企業なので、インドと組む選択肢だってあるだろう。テスラのような高額の電気自動車は作れないが、コミューターなどからスタートしようと考えているのであれば、生産コストで最も有利。
すでにニュースになっている如く、インド政府も2040年以降エンジンで走るクルマの販売を禁止すると決めている。電気自動車の生産はダイソンにとってもインド政府にとってもすばらしいチャンスになる。
と書いたものの、改めてダイソンの「2020年に販売する計画」を信じるなら、新しい工場を建てるというゼロスタートは間に合わないだろう。となれば売りに出た自動車メーカーの工場を居抜きで買うのが最も手っ取り早いかもしれない。
マツダあたりが生産設備の新しいメキシコ工場をダイソンに居抜きで売るようなことになれば、一気に現実味を帯びてくる。まぁ工場はダイソンがどの地域で電気自動車売るかで変わります。
いまや自動車は国を越えての移動が難しい「商品」になってしまった。自由に自動車を輸入できて、しかも関税なしという国って日本くらいのもの。アメリカのように関税低くたって、大統領から輸入規制の圧力かかるケースもある。
販売する地域で生産するというのが基本。ということを考えるなら、やはり2019年からNEV(燃費電池車、電気自動車、PHV)の販売義務を始める中国か(2019年は販売台数の10%、2020年は12%以上をNEVにしなければならない)。
■バッテリー技術が大きな武器になる?
そしてダイソンはどうやら「強力な武器」を持っているようなのだ。現在主流になっているリチウムイオン電池の下を見て2倍以上の性能を持つ「全固体電池」と呼ばれる新世代の電池である。
日本ではトヨタが開発をしており、2022年あたりの市販を計画している模様。ダイソンはもう少し早いタイミングで市販できるメドをつけたのかもしれない。全固体電池を実用化させたら、もはや内燃機関は不要かもしれない。
すなわち来年デビューするリーフの60kWh電池スペースに最低でも120kWh搭載可能ということ。いや、そんな大容量電池を搭載しても意味ないため、60kWhをキープしたまま大きさと重さを半分にするだろう。
また、急速充電は5分前後で80%を入れられる。リーフ級のボディサイズであれば5分前後の急速充電で400km走れてしまう。全固体電池さえ実用化できたなら、自動車の常識が根底から変わると思う。
文頭の通り3000億円の開発予算を投じていると報じられている。この金額、新しい電池と車体を開発するのに充分。
生産拠点もテスラのような38億円というワケにはいかないかもしれないが、電気自動車産業を推進したい国家さえあれば、さまざまな恩典を受けられることだろう。
ダイソンのようなデザイン力や、商品性を持つ企業は、日本の自動車メーカーにとって既存の自動車メーカーより脅威かもしれない。
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