ダイソンのEV開発に勝算はあるのか?

ダイソンのEV開発に勝算はあるのか?

 斬新なデザインと優れた性能の電化製品で有名なイギリスの家電メーカーの大手「ダイソン」が2020年までにEV市場に参入すると表明しました。

 ダイソンはEVを作ることは可能なのでしょうか? そもそもなぜEVを作るのか? 最新のEV事情とともに、ダイソンの実力に迫ります。

文:国沢光宏


■家電メーカーが自動車産業に参入を狙う理由

 突如、掃除機に代表されるイギリスの家電メーカー「ダイソン」が電気自動車に参入すると発表した。けっこうホンキのプロジェクトのようで、3000億円を投じて開発し、早くも2020年までに販売を開始するという。

 驚いていたら、規模こそ小さいものの、パナソニックが自動運転技術を盛り込んだ小型電気コミューターの試験車両を発表。今や家電業界の皆さん自動車産業に強い関心を示しているように思う。

 なぜか? テスラが驚くほど成功しているからにほかならない。

 ご存じのとおりテスラはIT企業から始まったベンチャーながら、瞬間風速でGMを抜く時価総額になったほど。モーターや電池、電子制御など広域に亘る技術を持つ家電産業からすれば、参入のハードルが低いと判断しても当然のこと。

 しかも先細りとなっている家電産業と比べ、自動車産業はケタ違いに大きい。実際、家電業界の雄であるパナソニックすら、今や自動車関連部品の売れゆきが3分の1を占める状況。

 家電メーカーの本業であるTVやAV、冷蔵庫や洗濯機に代表される「いわゆる」シロモノ家電は中国など新興国の価格競争に巻き込まれてしまい、会社を発展させようとすれば自動車関連の売り上げを伸ばすしかない状況になっているのだった。

 もっといえば、中国の家電メーカーですら電気自動車に強い関心を示し始めた。電気自動車の開発に乗り出さない企業であっても、皆さん電気自動車や自動運転技術に参入したいと考えていることだろう。

 となると気になるのが「ダイソンに代表される家電メーカーは自動車を作れるのか?」という点。実現可能か。自動車に詳しい人の多くが「作れない!」と言う。

 自動車技術はパワーユニットだけじゃないからだ。走行安定性や、衝突安全性、信頼性など、家電とまったく違う技術を必要とする命を運ぶ道具。確かにハードルは高い。

 しかし、結論から書くと可能だと思う。もちろん家電メーカーがゼロから自動車を作ろうとしたら絶対無理。そんな甘くない。されどたくさんの迂回ルートがある。

■テスラだってゼロから作ったわけではない

 新興メーカーの目標であるテスラを考えて欲しい。当初は制御技術とモーターこそオリジナルながら、ロータス・エリーゼのシャシーをベースに、携帯用パソコンの電池を組み合わせたいわゆる「コンバートEV」のようなもの。

 利益率少なく赤字続きで、破綻する直前の状況になってしまった。そんなテスラのホワイトナイト(救世主)になったのがトヨタである。約45億円を出資し3.15%ながらテスラの株を持つ。

 しかも出資の決断をしたのは豊田章男社長なのだから心強かった。トヨタの裏書きあれば投資や融資をする人も企業も多数出てくる。

 さらにトヨタはカリフォルニア州フリーモントにある年産40万台規模の本格的な自動車生産工場を、大半の生産設備を残したまま38億円という破格の条件で売却した。

 これだけの規模の工場を新規で作るとなれば、下を見て1500億円程度必要。テスラを救ったのは間違いなくトヨタだ。

 という流れを見たら、テスラは幸運に恵まれたと思う。トヨタの工場と一緒に最も難易度の高い自動車生産のノウハウを得たうえ、新型車「モデルS」の開発にあたり、たくさんの自動車メーカーから技術者をヘッドハンティングしている。

 モデルSのサスペンションなどドイツ車のようだし、インテリアに使われている部品の多くがベンツと共通。モデルSを見るかぎり、ゼロから自動車を作ったんじゃないことがわかる。

EV開発には膨大なノウハウが必要だが、「抜け道」もある
EV開発には膨大なノウハウと蓄積が必要だが、「抜け道」もある

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