ヴェルファイアに見る前後席の違い
さて、続いては最近人気の上級ミニバン、ヴェルファイアです。通常グレードの運転席に座った印象はマークXに近いですが、シートの芯はこちらのほうがしっかりとしています。
ただし、高級グレードの「エグゼクティブラウンジ」は別物。他グレードとはシート骨格が違うという話ですが、面白いのは後席と前席の座面の硬さの違い。後席のほうが柔らかめの作りになっています。
“柔らかいだけ”ではダメですが、エグゼクティブラウンジの後席は、クラウン同様柔らかさの奥に芯がある作り。これにより接地面積が広がり、疲れにくさにもつながります。明らかに前席とは印象が違い、「後席が主役」の設計思想ですね。
ただ、ひとつだけ気になるのは「足のやり場」。オットマンを使うと、人によっては足先が宙に浮く形になってしまう可能性があります。
これなら飛行機に付いているようなフットレストがあったほうが、足は疲れにくいように思います。
ランクルはクロカンならではの設計思想
シートのサイドサポート形状はクラウン等と比べて薄くフラット。
一般的には身体が横にズレやすく、疲れやすい形状ですが、現行型はホールド性が上がり、僕が愛車で乗っていたランクル100時代より滑りにくいよう改良を施している印象です。
車をよく観察すると、この形状にしている理由がわかります。ランクルは車高が高いため、セダンよりも乗り降りしづらい。
それにも関わらず、シートのサイドサポートを厚くしたら、さらに乗り降りがしづらくなるので、敢えてフラットな形状としているのでしょう。それゆえ、ランクルは素材など他の部分で滑りやすさを抑えようとしている印象です。
また、ランクルには革と布シートの設定がありますが、疲れにくさでは、布シートのほうが滑りにくい印象のため有利かもしれません。
こうして、シートの疲れにくさを考えると、このシートがどのような意図をもって設計されているかも見えてくるのが面白いですね。
86はスポーツ車特有の「接地」を稼ぐ工夫も
さて、打って変わってスポーツカーの86です。
シートは、骨盤からウエスト部分をホールドしてくれていて身体をきちんと支える設計になっています。
座った時の、座面と骨盤の角度、背中の関係は、ここまで紹介したトヨタ車と共通ですね。
ただ、シート背もたれの下部、この部分は「反り」が若干強い印象です。これは少しでもシートを背中に接地させようという意図なので、疲れにくさという観点では良い設計です。
86の場合は適度な反りですが、この形状をやりすぎると骨盤も反ってしまい、疲れやすくなるので、スポーツタイプの車に乗る際は、ぜひ実際に座って確かめてみてください。
シエンタのシートは「安価でも滑りにくい」
最後に良い意味で意外だったのはシエンタです。シートの疲れにくさは、コストを掛けられる高級車のほうが有利ですが、このシートの滑りにくさは値段を考えても特筆すべきポイント。
これはファブリックの生地によるところが大きいと思います。比較的安価な車でいえば、ヴィッツのファブリックシートより滑りにくい印象です。
車格から考えても、それほど高コストなシートは使っていないはず。そう考えると「形状」・「硬さ」・「表面素材」次第で、シートの疲れにくさは、大きく変わるということがよくわかりますね。
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純正シートは、さまざまな体格や使用シーンを想定しながら設計しなくてはならないのが難しいところ。本当は、体格や年齢などの状況に応じて、いくつかのシートを選択できるオプションがあっても良いと思います。
腰痛などに悩んでいる方は「形状」・「硬さ」・「表面素材」、この3大ポイントを確かめることが、自分に合ったシートを見つける助けになると思います。
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