ジンクス打破の鍵握るフィット
このようなホンダ車のジンクスを思うと、ちょっと心配なのが来年(2019年)登場が有力視される4代目となる次期フィットである。
2001年登場の初代フィットは、燃料タンクを車体中央に置く「センタータンクレイアウト」を核に、「これ1台で十分」といえる広い室内や明るさを感じる内外装の雰囲気、燃費の良さ、コンパクトカーの相場を変えてしまったほどの価格の安さなどを理由に大ヒット。
登場翌年の2002年にはカローラの34年連続年間ベストセラーを阻止するほどだった。
2代目は2007年、現行型となる3代目モデルは2013年にそれぞれ初代モデルからのキープコンセプトで登場。
2代目モデルはモデルサイクル中盤の2010年にハイブリッドを追加したことも強い後押しとなりモデル末期まで好調な販売をキープしたが、3代目モデルは十分に売れているにはせよ、ここ2年ほど「それまでほどは売れていない」という感も否めない。
特にスタンダードな1.3Lガソリンに乗ると、「これ以上のクルマは不要」と本当に思ってしまうほどよくできた現行フィットの販売が足踏み状態に感じる理由としては、
【1】3世代連続のキープコンセプトに飽きを感じているユーザーの存在
【2】フリードのような小型ミニバンやヴェゼルのような小型SUV、N-BOXのような軽自動車といった“比較的フィットに近い価格帯の他ジャンル”の競争力も強くなっている
といった点が浮かぶ。【1】に関しては、個人的にはトヨタ車とは対照的にホンダ車のコンセプトが歴代一貫しないことも疑問に思う面もある(単純にキープコンセプトならいい訳でも、変わることがいけないことでもないにせよ)。
フィットの「1台で満足できるコンパクトカー」というコンセプトは素晴らしいだけに、このコンセプトを変えるのは難しいだろうし、無理に変える必要もないと思う。
新型には「フィットでなければならない何か」が必要
ただ、ホンダ社内で似た値段で買えるN-BOXのスバ抜けた完成度の高さや広さを見てしまうと、高速道路での動力性能の余裕などフィットの良さはあるにせよ、N-BOXの方がダッシュボードの質感が優れるなど、「維持費の安さなどを考えたらN-BOXの方がいいかな」と思ってしまうのも事実だ。
こうしたことを考えると、キープコンセプトで登場する可能性が高い次期フィットには、これまでと同じ方向でのグレードアップに加えて、ダウンサイザー向けの今まで以上に全体的な質感の高いラグジュアリーなグレードやタイプRを含めたスポーツモデル、最低地上高を上げたクロスオーバーといったバリエーションの拡充など、「フィットでなければならない何か」が必要なのではないだろうか。
……という筆者が思いつくようなことは、優秀なフィットの開発陣はすでに考えているに違いない。
こんなことを考えていると、やや追い詰められた感もあるフィットが次期モデルで、どんな風に「自分の殻」を破ってくるか、ちょっと楽しみにもなってきた。
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