■国内自動車販売の大きな変革の流れのなかで
トヨタが国内販売車種数を大幅に削減する、というニュースは、2017年10月頃から報じられていた。その時点では(レクサス車を含めて)約60車種のラインアップを、2020年代中頃には半減して約30車種にするという内容であった。
2021年9月時点でトヨタブランドの国内販売車種数は約36車種で、レクサスブランドは約10車種。合計46車種で、この先さらに再編は進むと見ていい。兄弟車の整理と、販売が伸びていないセダン分野や、あきらかに車種数が多いコンパクトカーやSUV分野で、整理される車種が出てくるだろう。
これまで、兄弟車を含めて、選べる車種数が豊富であり、最寄りのディーラーで(トヨタが用意している車種が)どれでも買えるという状況は、ユーザーにとってありがたいことだと言われていた。
しかし全店舗全車種扱いとなったことで、現場のディーラー販売員への負担が増加。グレード構成やエンジン種類、複雑化する安全装備、駆動方式などが細かく違う約40車種を、来店者に合わせてすべての販売員がすべて細かく覚えておくことは難しく、タブレット端末の導入や説明の簡素化などで対応していたが、結果的に売れるクルマはより売れるように、売れないクルマはより売れなくなる傾向が強まっていった。
(「エスクァイアが欲しい」といって入店した客に対して、試乗車が用意できないため近隣ディーラーからヴォクシーを借りてきて「こちらで」と案内するケースもあるそう)
日産やホンダの各店舗の取り扱い車種は(軽自動車を含めても)15~20車種ほどであり、メルセデスベンツやBMWは7車種ほどとなる。確かにトヨタの取り扱い車種は多すぎる。
また、これは数字としてまだ表面化していないが、ディーラー間の競争が激化することで小店舗での細かい営業が難しくなる懸念もある。これまで地場経営による小さなディーラーが全国にたくさんあったが、全店舗全車種扱いとなり、さらに車種数も減っていけば、値引きや整備の面で大型店舗や大規模販売チェーンがより有利になる。大規模販売チェーンに再編されて生き残ることができればよいが、採算がよくない地域は「無ディーラー地帯」が増える可能性もある(ざっくり言えば、大手スーパーと地域商店街の関係と似た状況が、自動車販売現場でも進む可能性がある)。
自動車販売現場にもデジタル化の波が押し寄せ、来店者や来店回数は減少傾向にある。購入前にいろいろな店舗へ、何度も来店するケースは減り、事前にWebサイトで情報を調べて、「決め打ち」で来店するユーザーが増えた。
エスクァイアのような、かつての人気シリーズでも早々に生産終了を公表することは、こうした大きな国内販売改革の一端でもある。
これから先の10年、日本自動車販売現場は大きな変革を遂げることになる。少子化が進み、国内経済が全体的に疲弊するなかで、生存競争はますます厳しくなってゆく。自動車は日本の基盤産業でもあることから、なるべくならユーザーにとっても、販売店にとっても、より多くの人にとってやさしい変化であることを願いたい。
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