パトカーも出動!! 急増地域の「ヤード取材」で外国人のクルマ2台に追いかけられた…盗難車の温床「ヤード」とは?

■三重県木曽岬町のヤードで写真を撮っていたら…

 昨年(2021年)夏のことである。三重県木曽岬町で違法ヤードが急増しているというニュースを見て、関西方面での取材の帰り、立ち寄ってみることにした。
青々とした水田が広がる中、ところどころにヤードらしきものが点在している。金属製のフェンスで囲まれた場所にたくさんの古いクルマが積み重ねて置かれている。

 囲いはないが多数の中古車が停められている場所もあった。ヤードの出入口に掲げられた看板にはアラブ系、中東系と思われる代表者名が記されていることがほとんどだ。

 これらのヤードの写真は徐行しながら走るクルマの助手席からカメラマンが撮影していたわけだが…。

 10か所程度のヤードを撮り終えて、場所を移そうと木曽川沿いの道を走っていた時、後方に白いレクサスRXがいるのに気付いた。あれ、このRX、さっきヤードの前にいたクルマでは…? と思ったのだが、その後、RXは消えたが数分後にまた同じRXが後ろにいることに気づいた。何? もしかして追いかけられている?

 ヤードの写真を撮っていたことを怒っているのだろうか。もちろん、敷地内には侵入していないし、車道から見える範囲の撮影だ。

 何度か田んぼの角を曲がったかピッタリついてくる。なんで追われる。怖いな。と思っていたら、なんとRXの後ろに仲間らしきハリアーの姿も見えた。つまり私のクルマは2台に追いかけられている状態だ。と思ったらハリアーが角を曲がった。再びRXに追いかけられる状態となったわけだが、数分後、前方に再びハリアーが現れ、ハリアーとRXの間に挟まれた状態になった。

 そして、予想通りハリアーが止まって降りてきた外国人風の男性が私に「停まれ!!」というゼスチャーをしながら叫んでいる。すぐ後ろにはRXが控えており、窓を開けて何やら大声で叫んでいる。

 私たちは挟み撃ちになった状態だ。停まるしかないのか。いや、しかし何されるかわからない。停まるべきか? 突破すべきか? そして私は観念し(たふりをして)、ウィンカーとハザードを出して減速し、停車する意思を示した。ハリアーの男が歩いて近づいてくる。

「いまだ!」

 一瞬のスキをついてハリアーの前に出た。やった! 逃げ切った! と思ったが、ハリアーの男は即座にクルマに乗り込み、RXと2台で追いかけ始める。同乗していたカメラマンは110番しているが、周囲が田んぼばかりで住所を示す目印がない。警察からは「落ち着いてください、停まって下さい、停まって警察の到着を待って下さい」と指示されるが、場所の特定がなかなかできない。

 2台とはかなり距離も離れた状態で信号がある横断歩道に来た。

 青から黄色に変わるところでギリギリ通過。2台が通るときには当然赤になっているだろうと安心していたら、なんと2台とも赤信号を無視して横断歩道を突破してきた。どこか安全な場所に止まらないと! と思っていたら営業中の喫茶店が見えてきた。

 ここに入ろう! クルマを駐車場に停めて店内に駆け込んだ。「助けてください! 外国人に追いかけられているんです」と。

 駐車場にハリアーとRXが入って来たのも見えたが、店の中までは入ってこない。警察に喫茶店の名前と場所を告げた数分後、三重県警のパトカー2台が駐車場に入ってくるのが見えた。ああ、助かった。

■なぜ、私たちは追いかけられたのか

追いかけられたハリアーとRX。映画のワンシーンのような?人生初のカーチェイスを体験した
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 私たちはメディアで自動車盗難の記事を書いていることを伝え、ヤードがどういうところか知りたいので写真を撮っていたことを警察官に伝えた。

 そして私たちを追いかけてきた外国人2名が警察を通じて述べた「追いかけた理由」は以下。

「最近、ヤードに置いてある自動車部品を盗みに来る悪い奴らが増えている。写真を撮っていたあなたたちは部品を物色するために下見をしに来ているのかと思った。もしくは、なにかを盗もうとしていたのかと思った。だからクルマを停めて話を聞きたかっただけだ。」

 警察いわく、「調べたところ彼らは解体業者としての登録もあり、違法なヤードを運営しているわけではない」と。そして三重県警の警察官立会いのもと、息子が撮影した彼らの名前や会社名が入っているヤードの写真は削除させられた。

 これには納得がいかなかった。何もやましいところがなければ、命がけで信号無視までして追いかけて来る必要もないだろうし、写真を削除させることもないだろう。そもそも、彼らのヤードは高い塀に囲まれていて外からはほとんど何も見えない。削除させられた看板の写真は表に出ているもので、誰もが見ることができる。

 それに、正規に登録されている適正なヤードだからといって盗難車の解体に関わっていないとは言えないだろう。いろいろな思いが交錯し釈然としなかったが、事故も起こらず、身体に危害を加えられたわけでもないので、そのまま横浜(自宅)に向かうことにした。

 ちなみに(後日の取材調査によると)私たちを追いかけたのはパキスタン人である。中古車や自動車部品の輸出に在日パキスタン人が関わっていると言われるが、それを裏付けるのが以下のデータだ。在留資格を持つパキスタン人の全国分布人数である。

順位 都道府県 人数
1位/埼玉……… 2,911
2位/愛知………1,931
3位/茨城 ………1,929
4位/千葉 ………1,573
5位/神奈川 ………1,383
6位/栃木………1,319
7位/東京………1,268
8位/群馬………1,177

 上位4県はまさに「ヤード条例」を施行している県と一致しており、同時に8都道県すべてが自動車盗難のワースト10の常連である。パキスタン人の中にも善良な中古車輸出業者は多数存在するだろうが、ヤード条例、自動車盗難との相関関係はありそうだ。

次ページは : ■盗難車とヤードの関係

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