売れまくり日産e-POWERはなぜ他メーカーから支持されないのか

売れまくり日産e-POWERはなぜ他メーカーから支持されないのか

 日産ノートが売れている。2018年度(2018年4月-2019年3月累計)の販売で累計131,760台を記録し、国内の登録車販売ランキング1位を獲得。日産車が年度の登録車販売で1位を獲得したのは、なんと1968年度に1位となった「ブルーバード」以来50年ぶりのこととなる。

 またセレナは2018年度の国内販売で100,017台を記録し、ミニバンセグメンで販売ランキング1位を獲得。セレナとして初めての年度販売10万台超えを達成した。

 両車の販売を支えているのは、もちろん大好評の「e-POWER」。ノートは2016年11月に、セレナには2018年3月に追加設定され、両モデルの販売を牽引している。

 このe-POWERという仕組み、技術自体は他メーカーも持っているはず。

 しかしノートが大ヒットしてからずいぶん時間がたつのに、トヨタやホンダから「e-POWERのようなクルマ」は出てこない。

 それはなぜなのか? できないのか? できるのにやらないのか?

 そこらへんの事情と仕組みを、元日産のエンジニアである吉川賢一氏に伺った。

文:吉川賢一(=日産自動車で11年間、次世代車の操縦安定性-乗り心地の先行開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発にも従事。「エンジニア視点での本音のクルマ評価」モットーに、モータージャーナリストへのキャリアを目指している)


■なぜ他のメーカーからは支持されていないのか

 絶対王者トヨタプリウスやホンダフィット、アクアなどを破り、日産ノートが2018年(暦年および年度とも)の登録車販売台数No.1になった。

2016年11月にノートへ追加されたe-POWER。追加以来ノートの販売台数は快進撃を続け、ついに国産登録車で販売台数1位を獲得するほどになった

 その最大功績はノートe-POWERにあったのは言うまでもない。充電いらずの電気自動車、ワンペダルでの走りが新鮮で楽しい、燃費が良い、200万円代というお手ごろな価格…など、e-POWERのウリが日本人に刺さった、ということだろうが、ではなぜ、同じようなシステムを装備したクルマが、他メーカーから出てこないのか。

 ノートやセレナに搭載されている「e-POWER」は、いわゆるシリーズハイブリッド(エンジンは発電用のみに使い駆動はモーターで行う)に属する。レンジエクステンダーEV(航続距離を延長するシステムを積んだEV)ともいう。普段は蓄えた電力で走行し、必要な時はエンジンを使って発電をするという、理にかなったシステムである。プリウスの様な複雑なハイブリッドシステムが不要のため、コストも低い。

 日産に限らず、EVの走行特性はどのメーカーも研究しており、静かで加速が良く、ガソリン車に比べて振動が少なく、空気の中を進むような滑らかなドライブフィーリングには、どのメーカーも価値を感じているであろう。となれば、e-POWERの様な「半分EV」が、他メーカーからも出てきてもよい気がするが、それをしない理由は、「高速走行時の電費の悪さ」にある。

■EVは高速走行が苦手な理由

 一般道を時速30~60kmで流す程度であれば、e-POWERはまったく問題ない。クルマはある程度は惰性で進むため、エンジンを使わなくて済み、その結果、驚異的な燃費をたたき出すこともある。

 しかし、高速道を時速100km+αで巡行となると、そういうわけにはいかない。

 クルマが前に進むには、空気抵抗、走行抵抗、駆動抵抗と釣り合う駆動力が最低限必要となるが、常に駆動力をかけ続けるような走行が、EVは苦手(電力を大きく食う)なためだ。高速道路を走行するほうが、燃費が伸びる内燃機関のクルマとは、逆なのである。

e-POWER搭載2車種めはセレナ。こちらも搭載モデルは(実質的に最上級グレードでありながら)最も売れるグレードとなっている

 ちなみに、筆者が日産リーフ(ZE0)で日々体感していることだが、時速100kmをキープすると、残りの航続距離があっという間に減っていく。日々の運転の中で、電費が良くなる走り方をいろいろ試した結果、高速道路では時速80km程度となるようアクセルオフを多用して走行するのが、もっとも電費が良いようだ。

 筆者がe-POWER搭載車に試乗をしている限り、高速燃費が悪いと感じた経験はないが、e-POWERでは起こりうる現象だ。グローバル販売前提のメーカーとすると、高速走行の機会が多い欧州や北米で厳しくなるシステムに、膨大な投資をするのは憚れる、ということなのだろう。

次ページは : ■将来的にはどのシステムが生き残る?

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!