■「多様性」を守るところがトヨタ流
〇それぞれの電池を搭載したBEVのラインアップはどうなるのか?
トヨタ社内に設立されたワンチームの独立組織「BEVファクトリー」が、2026年から新型車を順次発表し、4年後の2030年までに5車種、合計170万台のBEVを販売する…という計画を明らかにした。またトヨタ全体では2030年の時点で年間BEV販売台数350万台を計画しており、(BEVファクトリー製ではない)180万台のBEVは、既存のモデルをBEV化するなどしてラインアップを拡充してゆく予定。
この多様で豊富なラインアップのなかで、それぞれのモデルの特性に合った電池を搭載してゆくことになる。なお、この「多様性を守ろうとする姿勢」こそが、スマホとクルマの違いであり、テスラやBYDとトヨタの「会社として目指すモビリティの違い」の最大のポイントだと見受けられる。だからこそトヨタは「チップ全置き戦略」(≒マルチパスウェイ)をとることになったわけだし、そもそもの話として、クルマは生活や地域や年代の違いに合わせてたくさん選べたほうがいいですよね。
(なお本企画担当編集者は「いきなりこんなにたくさん作れるんですか」とBEVファクトリーの加藤武郎代表に聞いたところ、「できる見通しは立てましたし、やらないと追いつけませんし、やるしかないです」と仰ってました。が…がんばってください!!)
〇いきなりBEVを大量に作れたとしても充電インフラが足りなくなる、または従来の急速充電器が性能的に追いつかなくなる可能性があるのではないか?
この懸念についてはトヨタも認識しており、上述した開発中の次世代電池でいうと(1)次世代電池(パフォーマンス版)くらいまでは従来の350kW級急速充電器で対応できるものの、それ以降はなかなか難しくなっており、現在各充電器メーカーとともに500kW級、600kW級の急速充電器を開発中とのこと。これはもちろん性能面もさることながら、価格面でも(安価でないとどのみち普及しない)共同で検討を重ねているそう。
〇内燃機関車からBEVにシフトしていくと、たとえば工場ラインなどで人員が「あまる」のではないか?(雇用が減少するのでは?)
今回の先行技術説明会の最重要点のひとつが、新しい思想により構築された(「BEVを作る」という前提で組み立てられた)工場ラインの確立であり、この工場は製造工程が1/2になる見込みだという。当然そこにあてられる人員も半分になる計算で、この点に関して参加した記者からも質問が飛んだが、トヨタとしては「現時点での作業が楽になる、スムーズになる、という点を大事にしたいのと、ここで人員が余った場合は、より価値の高い作業、人間でしかできない領域の仕事で活躍していただく」との回答があった。
人員が余るというよりも、別の作業へ従事すること、「クルマ」から「モビリティ」へ転換してゆくなかで、製作に携わる人の作業内容や配置が大きく変化することになるが、それは「人員削減」「雇用減少」という話にはならない、と理解した。
ここまで一気に紹介したトヨタの新技術説明会。実はこれだけでなく「ギガキャスト構造」、「空力」、「水素」、「代替燃料」、「知能化技術」なども合わせて説明があったのだが、一気に紹介するのはとても無理なので、順次お知らせします。
今回のトヨタの先行技術説明会は、おそらく2023年3月2日に開催された「Tesla’s 2023 Investor Day」(投資家向けのテスラの説明会イベント、イーロン・マスクCEOが筆頭に立って約4時間にわたって開催された)に刺激を受けたものだろう。それを考慮しても、技術説明や情報開示、開発中の技術内容に関して「攻め」の姿勢を見せたことを高く評価したい。すくなくとも各種メディアは、最低限この技術をすべて学んだ上でないと、もう「(業界標準に比べて)遅れている」だとか「説明不足」とは言えなくなりました。はい。
【画像ギャラリー】グラフと表で見るトヨタの次世代BEV戦略(5枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方この記事を見てもイマイチ、トヨタはBEV開発が遅れているという認識が覆されませんでした。結局わかったのは4年後までに新車4種出して何万台売りたいなぁという理想だけでした。
全方位戦略良いと思いますけど、広く浅くになってませんかね?
トヨタには期待してたけど、4年の間にいっぱいハイブリッド売って国内で稼げるだけ稼いでそのお金で、BEVではない次のモビリティのイノベーションを起こすしかない。
あまりに遠すぎる。その四年後には、既存の電池技術もどんどん進化しています。例えばCATLは今年中に10分400キロ充電対応の電池を量産すると言っています。
トヨタが今できる、そして最も効果的なEV投資は「脱チャデモ」です。チャデモは1ストールしか無い場所多くすぐ充電渋滞、相性で動かない、女性老人では扱えない巨大で重いケーブルとアダプタ、壊れてる、場所場所で充電スピード異なる、あまりに問題が多い
トヨタの強みは従業員全員が原価低減意識持ってること。そして5年、10年先の技術開発を
本社技術部門と東富士研究所に分け行ってることではないかな?