■世界をリードする台湾のTSMC
こうしてアメリカは半導体の主導権を取り戻すが、そのいっぽうで、台湾にて半導体事業を振興した「TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)」が急成長する。サプライチェ―ンが必要な自動車を生産するには台湾はあまりにも小さな国なので、台湾政府は半導体の生産に乗り出したのである。アメリカで半導体事業を学んでいたモリス・チャンに、世界最先端の半導体工場の設置を任せたのである。
日米韓が半導体の競争をする中で、一人抜け出したのがTSMCだった。結果的に世界最大の半導体ファウンドーである企業に成長した。ファンドリー(Foundry)とは半導体素子や集積回路の製造を受託する企業のことを指し、他方ファブレス(fabrication+less)とは工場を持たない開発と設計主体の企業を指す。例えばテスラは自前の半導体を設計するファブレスであるが、製造は他のファンドリーに委託している。
そのTSMCが日本の熊本県に工場を建設し、そこに日本政府、ソニー、デンソーが出資している。ソニーは画像処理に不可欠な半導体の製造をTSMCに依頼しているが、最近になって第二工場の建設も計画されていることがわかっている。
そのため、熊本は地価が高騰し、人流と物流が急増することが予測され、新たな渋滞問題も起きている。いずれにしても熊本がシリコン・アイランドになることは間違いない。台湾有事のリスクを考えると、TSMCの工場を日本に誘致するのは地政学的には理解できる。
今回は紙面の都合で半導体に深く関係するソフトウェアのことまでレポートできなかったが、最近の流行語である「SDV」(ソフトウェア・ディファインド・ビークル=ソフトウェアで規定する車両)についても取材は続けている。
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