【ペダル踏み間違い事故を減らすために】 どこまで防げる?? 安全技術の実態と限界

 交通事故はさまざまな原因が重なり合って発生するが、特に最近は高齢ドライバーによるペダルの踏み間違いに起因すると思われる事故が多い。2019年4月19日に東京・池袋で起きた乗用車の暴走による死亡事故も、そのひとつだ。

 実は、データのうえでも、高齢者による踏み間違い事故は、若年層より圧倒的に多く、また近年増加傾向にあることがわかっている。

 一方、最新の車には、いわゆる緊急自動ブレーキや踏み間違い加速抑制システムが装備されているモデルも珍しくない。こうした技術で、「ペダル踏み間違い」の事故はどこまで防げるものなのか?

 当然ながら機能には「限界」があり、車だけでなく、道路インフラも含め、関係各所が連携した対策が求められている。

文:渡辺陽一郎
写真:TOYOTA


「踏み間違い」事故は高齢者に頻発! 割合は若年層の3倍超

ペダル踏み間違い事故 年齢別の割合。特に75歳以上では近年、発生割合が増加しており、今後も増加が予測される(出典:交通事故総合分析センター「イタルダインフォメーション No.124」より)

 公益財団法人・交通事故総合分析センターによると、以前から年齢が高まるに連れて、ペダルの踏み間違い事故も増えることが指摘されていた。

 具体的には、25~54歳のドライバーでは、発生させた交通事故原因に占めるペダル踏み間違いの比率が1%を下まわる。

 しかし、65~74歳になると1%を上まわり、75歳以上は発生させた交通事故原因の3%がペダルの踏み間違いに基づく。高齢になるほど、ペダルの踏み間違い事故を発生させやすい。

 そして、65歳以上のドライバーの人数は、過去10年間で約2倍に増えており、今後も増え続ける。

 その理由は、第二次世界大戦直後の1947~1949年に生まれた団塊の世代から、運転免許保有者が急増するためだ。特に団塊の世代は世代別に見た時の人口も多いため、運転免許保有者が大幅に増える。

 団塊の世代は、運転免許の取得が常識になった最初の人達といえるだろう。この世代が今は70歳に達しているから、日本は今まで経験したことのない「高齢ドライバー時代」を迎えている。

 そして前述のように、ドライバーが高齢化するほどペダルの踏み間違い事故を発生させる危険性も高まるため、今後は事故件数がさらに増えると心配される。

踏み間違いには最新車でも「防ぎにくい」事故形態がある

トヨタは新型RAV4など最新車の多くに「パーキングサポートブレーキ」を搭載。 アクセルの踏み間違いによる衝突を緩和する機能だが、あくまで駐車場など車が「停止」、または「徐行中」を念頭に置いたシステムだ

 交通事故総合分析センターによると、ペダルの踏み間違い事故は1年間に6000件以上発生しており、事故原因をブレーキ操作の不適切まで広げると2万件に達する。

 問題はペダルの踏み間違い事故をいかに防ぐかだが、事故形態はさまざまだ。誤ってアクセルペダルを踏んでいることは共通しているが、状況は「走行中」、車庫入れなどのための「徐行中」(後退を含む)、「停車中」にわけられる。

 このうち、停車中や徐行中の踏み間違い事故は、万全とはいえないものの、事故形態が比較的定まっているから車両側の安全装備で防ぎやすい。

 例えばトヨタは、音波センサーを使ったペダルの踏み間違い事故防止装置を幅広い車種に搭載しており、後付けタイプも用意する。

 前後方向に障害物があるのにアクセルペダルを深く踏んだり、後退時については障害物のない状態でアクセルペダルを深く踏んだ時も、エンジン出力を抑える。

 後付けの可能な車種は、プリウス、ウィッシュ、ポルテ&スペイドなど売れ筋のトヨタ車で価格は5万5080円だ。

(編注:現状対応する計8車種に加えて、10月にはカローラアクシオ、カローラフィールダー、パッソに。12月にはヴィッツにも設定を拡大予定)

 ほかのメーカーも含めて、このような安全装備を65歳以上のユーザーが装着する時には、例えば1台当たり3万5000円の補助金を交付するなどの配慮をして良いだろう。

 今は電気自動車には上限で40万円、プラグインハイブリッド車は一律20万円、一部のクリーンディーゼル車にも補助金を交付しているが、安全性の向上にこそ使うべきだ。

 また、トヨタではD(ドライブ)レンジからR(リバース/後退)レンジに素早くシフトするなど、通常では行われない操作の後にアクセルペダルが深く踏まれた時も、エンジン出力を抑える。

 停車中や徐行中に比べると、走行中の事故は複雑で、速度もさまざまだ。ステアリングを操作している場合もある。

 衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)は、事故防止の有効な手段だから積極的に装着を進めるべきだが、すべての場面で作動するとは限らない。緊急自動ブレーキの普及と性能向上を促進させながら、総合的な対策が必要になる。

事故件数左右する「事故率と交通量」

 基本的な話をすると、交差点などで発生する事故件数は「事故率と交通量」によって決まる。

 形状が複雑で事故率の高い交差点は、シンプルな形状に改めたり、歩行者の横断中は車両の信号を全方向すべて赤にするなどの対策が考えられる。

 交通事故は主に「人や車が互いに接近すること」で発生するから、全方向の信号をすべて赤にする制御は、交差点の事故率低減に効果的だ。渋滞を招くなど難しい面もあるが、事故防止の対策として注目される。

 一方、交通量を抑えるには、高速道路やバイパスの建造が効果的だ。市街地を通過する車両の流入を抑えられるから、走行車両の数に加えて、その地域の道路環境に不慣れなドライバーも減らすことができる。

 以上は交通事故件数を抑制する基本的な考え方だが、最近発生している痛ましい交通事故は、必ずしもそこに当てはまらない。

交差点事故 防ぐための効果的な対策は?

最新の緊急自動ブレーキでは、夜間であっても歩行者に対応したシステムもある。ただし、車速を含めた状況次第では対応できない場合もある。事故予防には、道路インフラも含めた対応が求められる

 滋賀県大津市で発生した事故では、右折車両の過失によって直進車両と衝突し、この影響で直進車両が保育園児らの列に入り込んでしまった。

 つまり、交差点の対策としては、右折車と直進車による事故防止と、事故を発生させた車両が歩道に乗り上げないことの2つが求められる。

 大津市の場合、交差点の形状がT字路で、右折車両は大回りに曲がる。しかも交差点に面する歩道の角が曲線でRを描いているため、右折車両のドライバーから見ると、進む方向の目安が乏しくわかりにくい。

 そうなると、曲がる方向を一層注視することになり、直進車両への注意力が下がりやすい。交差点は「四つ角」になっていないと、ドライバーは右折しにくいのだ。

 このほかドライブレコーダーなどによって撮影された各種の事故映像を見て気になるのは、事故の当事者になったドライバーが、事故直後にブレーキペダルを確実に踏めていないことだ。

 衝突した後、車両がフラフラと緩慢に動いていることが多い。ドライバーが意識を失っていることもあるから一概にいえないが、異常が生じたらブレーキペダルを即座に強く踏むことが大切になる。

 車両側が、二次的な衝突被害を軽減するための緊急自動ブレーキを作動させる必要もあるだろう。

 いろいろな部署の人達が、連係して早急に具体的な対策を立てねばならない。

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