水深何cmでドアが開かなくなるのか?
今回の台風による大雨やゲリラ豪雨による道路の冠水で、クルマは水深何cmで開かなくなるのだろうか? JAFが行ったユーザーテストでは、水圧の影響でドアが開くかどうかを検証しているので見ていこう。
テストはセダンとミニバンの2台で、試験場のスロープ(角度5.7度)と平坦部分を使って、30cm、60cm、90cm、120cmの水深別に、セダンでは運転席ドア、ミニバンでは後席スライドドアを対象に、車内からのドア開けテストを行った。
クルマは水没する当初は重いエンジンから沈んで後輪が浮き始めるが、セダンでは水深60cmから、ミニバンでは水深90cmから後輪が浮き始めた。この後輪が浮いている状態と、完全に水没した状態での検証を行っている。
テスト結果は、セダン、ミニバンともに後輪が浮いている状態では、車外の水位が高いため、ドアに外から強い水圧がかかり開けられなかった。
水深60cmでは、水圧の影響により、セダンでは通常時の5倍近く(19.30kgf)の力が必要で、開けるのに24秒もかかった。ミニバンは男性の力でも開けることができない(計測不能)状態になった。
またセダン、ミニバンともに完全に水没した状態では、車内と外での水位差が小さくなり、水の抵抗で重いものの、どちらのドアも開けることができた。
脱出用ハンマーを標準装備にするべきだ!
水没すると電気系統が浸水し、水深90cm以上になると、パワーウインドウも作動しなくなる可能性がある。
このような状況のなかで、最大限に威力を発揮するのが、クルマ用の緊急脱出専用ツールとして開発されたのがレスキューマンIIIだ。
このレスキューマンIIIは、サイドウインドウを叩き割るためのピンポイントハンマーと、シートベルトを切断できるカッターを1つにまとめたもので、クルマに常備していても安全で、しかもいざという時に使いやすく誰でも正しい使い方ができるという点が素晴らしい。
なお、ハンマーでガラスを割る場合には、フロントガラスではなくサイドウィンドウを割る。フロントガラスは合わせガラスで粉々になりづらく、割るのに大きな力が必要だからだ。
水没時には通常はエンジンの重みで車体が前のめりになり、運転席や助手席のガラスが水没しやすい。水没しているガラスを割ると、車内に一気に水が流れ込むため、脱出が困難であるとともに、水に含まれたガラスの破片でけがをするおそれがある。
一方、後部座席側のガラスは水没するまでには時間があるので、前部座席が水没してきたら、こちらを割ったほうが安全である。
ハンマーで叩く場所は、ガラスの隅がよく、全面にヒビが入るので簡単に脱出口を作ることができる。ガラスの中央部を力いっぱいたたくと、勢い余ってガラスに手まで突っ込んでけがをしてしまうことがあるので注意が必要だ。
このレスキューマン、製造販売している丸愛産業によると、改良を重ねて、現在のモノは3代目。
トヨタ、レクサス、日産、ホンダアクセス、マツダ、三菱、ダイハツなどに純正アクセサリーとして用意され、年間18万本販売されているそうだ(丸愛産業)。
カー用品店やインターネットの通販サイト、Amazonでも購入できるが、今回の台風による冠水被害で、製造するとすぐ完売という状況が続いているそうだ。
価格は2484円(メーカーによっては価格変動あり)。 ディーラーによってはクルマに標準装備としているところや、フロアマットやサイドバイザーなどの付属品に含めている例もあるそうだ。
また警視庁をはじめ、大阪府県警本部、神奈川県警警察本部など全国の21の警察本部や日本道路公団、日本自動車連盟などがレスキューマンを装備しているという。
今回、東京をはじめ、埼玉県、千葉県をはじめとする首都圏の水害による怖さを改めて実感した人も多いだろう。
しかし、いまだに緊急脱出用ツールとして認知度が高くないように見受けられる。もちろん大部分のユーザーがこうした緊急脱出用ツールを使う機会などないかもしれない。
今回の台風においても、もしレスキューマンを装備していれば、助かったケースもあったに違いない。
万が一のために常備しておいて、使い方をマスターしておくべきだ。すべての自動車ディーラーが付属品として、標準装備にするべきではないだろうか。
また、後席シートベルトの着用の義務化に伴い、首や腹部にベルトを巻き付け、外れなくなる事故が多発していることからも、前後席への装備が必要といえる。さらにミニバンなど多人数で乗車する場合は2列目、3列目にも装備したほうがいいだろう。
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