軽自動車といえば660cc、定員4名で燃費もよく、日常の足として便利に使えるクルマというのはご存じのとおり。
しかし実用性のみならず、実はすごく楽しい存在に大変身できる素性のよさも持ち合わせている。買った瞬間からノーマル車よりも何倍も楽しめる、そんな夢のようなKカーコンプリートの世界へようこそ。
文:ベストカー編集部 / 写真:小宮岩男(モンスターアルトワークス)
ベストカー2016年7月10日号
緊急試乗!! モンタジ謹製、アルトワークスの本気度
「モンタジ」といえば誰もがうなる「モンスター田嶋」選手の愛称。その田嶋選手が創業したモンスタースポーツではKカースポーツの大名跡、スズキアルトワークスをチューンアップし、コンプリートカーとして販売中。
今回はデモカーを借りてワインディングをメインに徹底試乗した。
だいたいにして、その存在感からして“ただモノではない”な、と感じさせるモンスタースポーツのアルトワークス。いかにもモンタジらしい、本格派の香りがプンプンしてくる。
アルトワークスの特性を熟知したモンスタースポーツが専用開発したパーツを盛り込んだコンプリートカーだが、バージョン1から5まで5段階のチューニングメニューが用意されているのが嬉しい。
今回の試乗車はオプションパーツ「全部のせ」とも言える『バージョン5』で、専用開発されたオーリンズサスペンションが組まれている。
目を引くカーボン製エンジンフードはコンプリートには含まれておらず9万6000円の別売だが、専用形状の前後パンパー、カーボン製GTウイングなどはコンプリートに含まれる。
また、試乗車には現在開発中のローポジションシートマウントが装着されていて、純正レカロのヒップポイントが低くなり、よりスポーティなドラポジを取ることが可能だ。
走り出すと、まあなんとも楽しい!! 着座位置が低くなったことでアイポイントも下がりスポーティな印象。クルマの動きが腰でダイレクトに感じられるのがたまらない。
エンジンは特別パワーアップさせるような『仕掛け』はないとのことだが、ハイフローインタークーラーや専用マフラー、フロントパイプなど吸排気系のファインチューニングにより明らかにターボの立ち上がりが鋭くなり、またトップエンドの伸びもよくなっていて、ピックアップがよりパワフル!!
そしてこのクルマの最大の魅力は足回りにある。バージョン5専用のオーリンズサスはフリクションを感じさせないスムーズな動きで、乗り心地がよく、箱根のちょっと荒れた路面でもタイヤをしっかりと路面に押しつける。
バネはそれなりにハードな設定となっているのだが、固さを感じさせず“じわり”とロールしていくのでロードホールディングが高いのだ。
サスの動きがスムーズなので、少々ハイペースにコーナーを攻めても4輪でグリップするため姿勢は安定し、気持ちのいいハンドリングが楽しめるというわけだ。
今回は山道での試乗だったが、今度はミニサーキットで限界まで試してみたい!! そう思わせてくれるハンドリングだった。
今回紹介した「バージョン5」の価格は税抜き240万円(税込みだと259万2000円)!! ノーマルワークスの価格は150万9840円(税込み)なので、ザッと108万円高ということになる。
軽自動車なのだから300万円近くなるのはちょっと高い!? と感じる人もいるかもしれないが、オーリンズサスを使い、ブレーキチューン、吸排気系、内外装パーツなどの内容を見れば、コンプリートカーとして仕上げられた価格としてはむしろお買い得。
ユーザーの好みに合わせたメニューも展開されているのも大きな魅力だ。
まだまだあるぞ、コンプリートカー
コンプリートカーというとどうしてもスポーツカーばかりなイメージがあるが、実は実用車をカスタムするなんてショップも日本には多い。仕事でも家族でも使える、他のオーナーとは「ちょっと違う」、そんな面白さを発見できるクルマを以下にピックアップしよう。
ホンダ N-ONE モデューロ X
ホンダがカタログモデルとして設定するN-ONEのスポーティグレード。CVTしか設定がないが、バンパービームを専用品に交換、CVTやブレーキパッドまでもチューニングされている1台。189万8000円。
NEXT STAGE エブリイ
東京都羽村市にあるNEXT STAGE。ハスラーでも有名なお店だが、実はエブリイのカスタムもかなりかっこいい。30mmの車高アップが施されているが、スプリング、キャンバーボルト、ラテラルロッドがセットになっているので安全・安心の内容だ。165万2200円~
KCテクニカ アルトワークス
サーキット仕様への積極的なアプローチでも有名な京都府のKCテクニカ。新車をベースにカスタマーの好みに合わせてコンプリートカーを作り上げていく。価格は目安だが街乗り仕様で約200万円、サーキット向けフルチューンが約280万円ほどになるそう。もちろん、その中間を狙うことも可能。
三木スズキ ハスラーツートーン仕様
ポップな印象で人気のハスラー。人気車種だからこそ街中で「カブる」こともしばしば。そんなシーンを避けたい人には、この強烈な個性を放つツートーンのハスラーはどうだろう。
1インチアップの車高、そしてルーフのラッピングによるツートーンが新鮮だ。発売元の兵庫県にある三木スズキはスズキの販売店でもあるので安心。ちなみにこの仕様だと237万円となっている。
ショウワガレージ ジムニー
ジムニーほどコンプリートカーが存在するKカーはないだろう。今回紹介するのは愛知県のショウワガレージのジムニー。3インチアップの王道仕様ながらその落ち着いた印象はさすがだ。オプションでタイヤ、マフラーなども選択できる。価格は179万円から。
Kカーの究極はこれだ
Kカーをいくら弄っても普通車には適わないでしょ?
なんて考えを持っている方は究極を追求したこのクルマの動画を見てほしい。軽自動車がポルシェやフェラーリを岡山国際サーキットで追いかけ回す!!
この車載動画のクルマはGT-Rでも、スープラでもなくホンダのトゥデイ。かつて発売されたホンダの人気Kカーだが、それが追い回しているのはどう見てもチューニングされたポルシェ911。
これがミニサーキットならまだしも、舞台はF1も開催された岡山国際サーキット。
地の利はないに等しくむしろパワーマシンの独壇場なのに、なぜそんなに軽自動車が速いのか。オーナーである岡山県のホンダオート岡山販売の社長さんに聞いてみた。
外観はそこまで派手ではないんですが、エンジンは700ccにボアアップしてますよ。タービンはスカイラインGT-RのN1タービンで230psくらいかな。
アンチラグシステムも装備しているのでコーナーでも普通のスポーツカーに負けず劣らずに速いんです。
もうKカーとは思えないチューニング内容だが、とにかくここまでのメニューをこなせるポテンシャルがあるというのがトゥデイの凄いところ。
最近の軽自動車ではこうはいかないかもしれないが、それでもS660など楽しい素材はたくさんあるはず。
スポーツカーのみならず実用車でもさまざまな可能性を残すKカー。納車したその日からKカーを遊び尽くせるコンプリートの魅力を再発見だ。