リムジンバスが重視するのは「時間」ではなく「時刻」
「リムジンバスに勝った!」と思ったのも束の間、弊社が発行するバス専門雑誌「バスマガジン」の編集長から衝撃の事実が伝えられた。え!? リムジンバスは速さを競っていないだって!? 以下、“バスマガ”編集長の末長氏が解説する。
首都高速や京葉道路、湾岸道路で白地にオレンジのボディで優雅に走る姿が見られる、東京空港交通のリムジンバス。いうまでもなく空港アクセスのプロだが、本誌の速達テストでは乗用車のほうが早く到着したという結果が出た。
しかし、バス目線で述べさせていただけば、これは『バスがさほど急いでなかったため』だ。今回のテストは“早く着く”という『時間』を競ったものだが、バスの場合は“決められた”『時刻』に着くことが大事。
そもそもバスは公共交通機関なので、こと運行時間においては定時性が最重要視される。だが、鉄道のように専用軌道を持たず、ほかの車両に混ざって道路を走るバスでは、鉄道以上に定時性を守ることが困難となる。その代表格は渋滞。
乗用車同様、バスも常時、渋滞情報を受けて運行しているが、乗用車と異なるのはカーナビやラジオよりもリアルタイムなものを得ている点。それは運行時間帯である日中、各地で走っているバスドライバーからのナマ情報だ。
実際に混雑を目にしたり、あるいは運行しているドライバーが、中央司令所に無線などでその情報を知らせる。これにより司令所はリアルタイムの道路情報を得る。
そして、続いて同ルートを運行する予定のバスに“運行が滞る可能性が高い”ことを伝える。しかし、これだけではただ遅れるだけなので、定時性を守るための『緊急避難的措置』として、高速道路を降りて一般道の通行に切り替えたり、遠回りとなっても遅延を少なくできる別ルートがあれば、そちらへ避難したりするなどの対処で、極力定時性を守る努力をする。
バスにとっての渋滞は、例えば突然の崖崩れで道路が閉鎖されたなどと同様のエマージェンシー。特に空港へ向かう便では航空機に搭乗予定の乗客が乗り遅れる危険性もあるため、なおさらだ。
輸送のプロであるリムジンバスは、こういった互助的な情報ネットワークを駆使して走るため、混雑した道路においてであれば、結果として乗用車より早く目的地に到着することもありうるはずだ。
(文:末長高章【バスマガジン編集長】)
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