初代NSXの登場で300km/hが近づいた?
初代NSXが登場し最高速は270km/hという国産車として大きな進歩を見せた1990年代前半、フェラーリは428psの512TRが最高速314km/hを表示していたものの、248tb/tsは275km/hだったし、ポルシェ911ターボも360psながら最高速は280km/h。
世界的にも300km/hは高い壁だったのだ。ちなみにポルシェ911ターボが300km/hを超えるのは、1998年登場の996型が初めてで最高出力は420psだった。
2004年の280ps規制解除後は日本でも300psオーバーのクルマが続々と登場。その究極だったのがR35 GT-Rで、480psでデビューして300km/h超えを達成。
その後進化を重ね、今ではノーマルグレードが550ps、NISMOは600psにまでパワーアップし、最高速も315km/hまで伸ばしている。
2010年にはレクサスLFAが登場し、325km/hを表示。500台限定の少量生産車だったが、世界的にみても325㎞/h以上をマークするクルマは超高額の少量生産車ばかり。
スーパースポーツでも量産車では300~320km/hあたりが限界値となっている。
GT-Rで300km/hを見た男たちのストーリー
【鈴木利男の場合】
GT-Rの開発テストで、アウトバーンの300km/hは何度も経験していますよ。300km/hも出したら、それは怖いですよ。
アウトバーンを走っているドライバーは、みんな後ろをよく見てくれていますが、それでもいつ車線変更してこちらに出てくるかわかりませんから、やっぱり緊張します。
開発している側としては、何km/hで走っていても挙動が変わらないようにしたいわけですが、やはり250~260㎞/hを超えると空力でボディが持ち上がり、全体的にクルマが軽くなった感じは受けますね。
また、スピードが出れば出るほど横風の影響が大きくなるので、山あいから抜けた瞬間に多少ぶれたりすることはありますね。
水野(和敏)さんはよく「GT-Rは300km/hでもリラックスして走れる」と言っていましたが、さすがにそれは無理ですね(笑)。
そのスピードで何かあったら絶対に対処できないわけで、ドライバーにできるのは危険を予知することしかないんですよ。前車の挙動はもちろん、匂いとか振動など、五感を研ぎ澄まして危険を感じ取らないといけない。
やはり普通に走っている時のようにリラックスはできませんよね。300km/hで走るのは快感でもなんでもないですよ。
また、無理して、我慢して出すものでもありません。テストドライバーが怖いのを我慢して300km/hで走ったって、お客さんに「300km/hで走れます」とは言えないですからね。
【ホットバージョン編集長 本田俊也の場合】
GT-Rの開発現場を動画で記録する仕事をしていたので、何度かアウトバーンで300km/hを経験しました。911ターボを持ち込んで比較もしましたが、両車の最大の違いはブレーキングの安定性でしたね。
前のクルマがこちらの速さを読み切れず、追い越し車線に入ってくることがあるんですけど、そういう時、強めにブレーキを踏むと911はリアがズルズルするのに対し、GT-Rは路面に吸い付くようにビターッと減速してくれるんですよ。
また、高速になればなるほどダウンフォースが大きくなって、固めた足がちょうどいい感じになるんです。超高速域に照準を合わせた足なんだということがよくわかりますね。
音は270~280km/hくらいから急激に騒がしくなるんですが、2010年モデルからだいぶ静かになった印象がありましたね。
問題は燃費で、300km/h近くで走っていると満タンにしていても20分くらいでガソリンがなくなるんです。多分1km/L台だったんじゃないかな?
助手席でも何度も300km/hを体験しました。日産のテストドライバーの方が運転する雨の高速テストに同乗した時なんですが、走行中いきなり豪雨になって、ハイドロプレーンのような状態になり、横を向いたことがあるんです。
僕の感覚では90度くらい横を向いたように思って「ダメだ!!」と思ったんですが、あとで動画を確認したらわずかなものでしたね。やっぱり助手席だとだいぶ感覚が違うんでしょうね。
水野さんはデータロガーを確認しながら「4WDがきっちり制御できてる」って言ってましたね。正直言って300km/hは快感ですよ。
この経験でスピード感覚も磨かれたと思いますけど、それが今、何かの役に立っているかというと、何もないですね(笑)。
日産GT-Rは登場から10年が経とうとしているものの、国産車最速の地位は譲らない。いまだに世界のライバルと肩を並べているのが凄い。
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