私たち一般人でも日々の日常で“ありえない”と思う体験をすることがある。ならば、激しい戦いの場に身を置くレーサー/ラリーストならば、そんな“ありえない”シーンにきっと多数遭遇しているはずだ。
彼らが語る“ありえない”体験の数々を紹介しよう!
ベストカー2017年2月10日号
レーシングドライバー 脇阪寿一のありえない話
寒い日に条件が合わないレース用タイヤで走ると、クルマがありえない動きをするほど滑ります。
レースのタイヤってめちゃくちゃグリップすると皆さん思ってますよね!?
それがそうともかぎらないんですよ! レーシングタイヤが高いグリップ力を発揮するのは、その性能を発揮できる条件(気温、路温、路面コンディションなど)が合った時だけなんですよ!
条件が合わなければ……、涙。皆さんが乗用車で使用している夏タイヤで雪の上や凍った路面を走ったら、ハンドルは効かないし、アクセル踏んでもまともに前に進みませんよね!?
寒い日に条件が合わないタイヤでコースインすると、その100倍くらい滑ります。レーシングカーのエンジンは強烈なパワーです。足回りもガチガチです。それで走ったら……ね。
例えるなら、アイススケートリンクの上で普通のスニーカーを履いて、サッカーや野球、なんでもいいですけど、スポーツをするくらいの感覚です。余計わかりにくいわ! って言うな!!
まったく滑って進まない、ハンドル効かない、そんななかでもレーシングカーをコントロールして急いで走らないとダメなんです。あれが精神的に耐えられない。
怖くてゆっくり走っていると、いつまでたってもタイヤが温まらずグリップしません。あのありえないクルマの動きは、我々トップカテゴリーを経験したレーシングドライバーにしかわからないと思いますよ! 僕のありえない体験です。
レーシングドライバー 谷口信輝のありえない話
2005年のことなんだけど、中部地方の某サーキットのオープンの時に、チューニングカーで走行中にクラッシュして、ひっくり返って、池に落ちた。
「ヤッベ! 終わった」と思って、俺はこんな終わり方なのか、死んでいくのかと思いつつも、暇だからシートベルトでも外してみるかと思って……。
そしたらドアが開いて出られた。まさに九死に一生。運転席の窓はあいてて、泥水が入ってきて、視界は悪いし、天地もわからない。神様が死ぬのは今じゃないと、生かしてくれたんだと思ってる。まさに、ミラクルだよ(笑)。
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