トヨタ ブレイドはVWゴルフに挑んだ意欲作 こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】

トヨタ ブレイドはVWゴルフに挑んだ意欲作 こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、内外装のクオリティの高さがオーナーに満足感を与えてくれるコンパクトハッチバック、ブレイドを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/トヨタ

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違いがわかる大人のために作られたひとクラス上のハッチバック

 「洒落た大人の高級ハッチバック」をテーマに開発された「ブレイド」は、トヨタが2009年に市場へ導入したプレミアムコンパクトカーとして話題を集めた。オーリスの兄弟車という位置づけだが、その仕立てはまったく別物で、見た目も中身も明らかに“ひとクラス上”を狙っていた。

 コンパクトなパッケージに高級車の要素を凝縮しているが、単なる高級グレードにとどまらず、質を重視する大人の選択肢として確固たる存在感を放っていた。たとえコンパクトカーでも妥協はしない、という開発陣のメッセージが体現され、新しいジャンルの創造に挑んだ意欲作だった。

「VIBRANT CLARITY(活き活き・明快)」というトヨタ独自のデザイン哲学に基づいた独創的なエクステリアは見る人を惹きつける
「VIBRANT CLARITY(活き活き・明快)」というトヨタ独自のデザイン哲学に基づいた独創的なエクステリアは見る人を惹きつける

 まず印象的なのは、彫りの深いエクステリアデザインだ。先進性と車格感を両立させることを狙いとした立体構成が特徴で、全体のフォルムは筋肉質なイメージとし、コンパクトカーにありがちな可愛らしさよりも精悍さを前面に押し出している。

 フロントまわりは、中央部を強調した彫刻的なデザインを基調としながら、バンパー開口部に奥行きを持たせることで空力性能と存在感を両立している。グリルには横バーの厚みと奥行きを段階的に変化させる造形手法が用いられ、視覚的な奥行きを強調するとともに構造強度や歩行者保護性能への配慮も見て取れる。

 L字型ヘッドランプは、スタイリング上のアクセントとしてだけでなく、視認性と配光性能の最適化を意図してデザインされ、日常域での被視認性向上にも寄与している。灯火器のデザインと機能の高度な統合が実現された事例と言えるだろう。

 サイドビューは、低重心化を意識したプロポーションとリアエンドに向かって立ち上がるキャラクターラインが、走行性能の高さを視覚的に印象づける。バックドア部分に十分なボリュームを持たせた造形とすることで、リアオーバーハングの最適化と荷室容量の確保も両立されている。

 リアビューはワイド感を強調した水平基調の造形と、大型の横長リアコンビネーションランプとの組み合わせによって安定感と車両全体の厚みを強調。リフレクターの配置やランプ構造にも工夫が凝らされており、上質感を表現するだけでなく夜間視認性や安全性の向上にも貢献している。

 また、外板の塗装には高品位な技術が採用され、クリア層の平滑性と発色性が高められている。これによってフォルムの陰影がより強調され、外観の動感と存在感が視覚的に増幅されている。

高級車らしい落ち着きのある上質な室内空間

 ドアを開けて乗り込むと、車内は想像以上に落ち着いた上質な空間に仕上げられている。ソフトパッドをふんだんに用いたダッシュボードをはじめ、本革ステアリングやアルミ調の加飾パネルなど、とくに運転席まわりを構成する素材の選定と造形へのこだわりが見られる。

 ドアトリムにはスエード調の表皮材が採用され、柔らかな手触りと高級感ある風合いを両立。素材には静電気や光反射への配慮がなされ、乗員の快適性と視認性の確保にも寄与している。

 空間全体の質感向上という点では、天井に配置された大型イルミネーションの存在も見逃せない。柔らかく拡散された光がキャビン全体を包み込み、夜間走行時には落ち着いた洒落た雰囲気を演出する。

 3ナンバーサイズの5ドアハッチバックとなるが、高級車という観点で見るとボディサイズはコンパクトな部類となる。全長4260mm、全幅1760mm、全高1530mmで、車内には乗員全員が快適に過ごせる広さを確保。前後方向だけでなく、上下方向ともに十分なスペースを持ち、上質な作りがなされた車内の雰囲気と相まって心地よく乗車できる。

 装備内容についても高級車らしい要素が見て取れる。運転席には、8ウェイのマルチアジャスタブルパワーシートを採用。体格や好みに応じた細かな調整が可能で、最適なドライビングポジションを容易に実現できる。また、操作系スイッチ類のレイアウトはドライバー中心に構成され、操作性や視認性にも十分な検討がなされていることがわかる。

 人間工学的観点に基づくコントロール配置と、上質素材の採用が高次元で融合されたインテリアは、日常的な用途における優れた利便性の実現と、所有する満足感を増幅する上質化を同時に叶える仕上がりだ。

シンプルながら面でボリューム感を演出。走りの楽しさと格調高さを感じさせるスタイルだ
シンプルながら面でボリューム感を演出。走りの楽しさと格調高さを感じさせるスタイルだ

 搭載されるエンジンは、2.4L直列4気筒と2007年8月に追加された3.5L V6をラインナップ。主力となるのはデビュー当初から設定されている2.4Lエンジンで、カムリ、エスティマ、RAV4などにも搭載されていた実績のあるユニット。最高出力167ps/最大トルク224Nmというスペックを発揮する。

 日常使用領域での扱いやすさと中高速域での余裕ある加速性能を高次元で両立しながら、燃費性能にも配慮されている。低回転域からフラットに立ち上がるトルク特性によって、街なかで扱いやすく、電子制御スロットルとの協調制御も相まって、ドライバーの意図に忠実なレスポンスが得られる。

 トランスミッションには、Super CVT-iを採用。変速ショックのないスムーズな加速フィールを実現しながらも、ドライバーの積極的な走りに応えるべく、7速スポーツシーケンシャルシフトマチック機構を搭載。ステップ感のある変速操作により、MTライクなドライビングフィールも提供している。「Fun to Drive」の思想がこの制御系にも色濃く反映されている。

 2007年8月に追加された「ブレイドマイスター」専用として用意された3.5L V6エンジンは、レクサスRX350やクラウンにも搭載された高出力ユニットで、最高出力280ps/最大トルク344Nmを発生。6速ATとの組み合わせによって、高回転領域まで爽快に吹き上がる伸びやかな回転フィールが楽しめた。

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