ホンダ モビリオは路面電車をイメージしたコンパクトミニバン! なぜ1代限りでなくなったのか?【愛すべき日本の珍車と珍技術】

運転がしやすく多人数で乗っても走りに不満なし

 走りにおいて核となるのは「グローバル・スモールプラットフォーム」の採用だ。燃料タンクをフロアフレームで囲むセンタータンクレイアウトをベースに、ホイールベース延長部にはクロスメンバーを追加し、リヤパネルを大断面化。さらにアウターパネルを額縁構造化するなど、随所に剛性向上策を盛り込んだ。

 その結果、全長約4mというコンパクトなボディに3列シートと広大な室内を収めながら、優れた骨格剛性を実現している。

 静粛性も抜かりない。フロア剛性向上によるこもり音低減、高剛性エンジン骨格と高性能エンジンマウントによる振動抑制、ルーフやフロアへの上級車並みの防音材採用など、軽量かつ効果的な防音施工を実施。ドアからの侵入音や風切り音も抑え、クラスを超えた静粛性を確保している。

 7人乗車時でも余裕ある走りを実現するため、モビリオ専用の1.5L i-DSIエンジンを新開発した。狭角バルブ配置によるコンパクトな燃焼室に、1気筒あたり2本の点火プラグを備える「i-DSIシステム」を採用し、発進加速の力強さと街乗り域での軽快さを両立。最大トルクは131N・m/2,700rpmと低回転域に設定し、日常使用での扱いやすさを高めている。

 燃焼効率向上と各部フリクション低減により単体燃費を向上させ、さらにホンダマルチマチックSとの組み合わせで、7人乗りクラスのトップレベルとなる18.2km/L(10・15モード燃費)を達成した。また、新世代CVTであるホンダマルチマチックSにはSポジションを追加し、走行状況に応じた変速制御を最適化。発進時の素早い加速、スムースな巡航、減速時の適度なエンジンブレーキを自動的に実現する。

 フロントにはストラット式サスペンションを採用し、スペース効率と接地応答性を両立している。スプリングを斜めに配置してダンパーフリクションを低減し、乗り心地を向上させた。リアはH型トーションビーム式サスペンションで、ダンパーとスプリングを別体に床下配置することで低床化とホイールストローク向上を両立している。

 ブレーキは軽いペダルタッチで確実に効く設定とし、EBD付ABSやブレーキアシストを全タイプに標準装備して、日常から緊急時まで高い制動性能を発揮する。

リア両サイドにはスライドドアを備え、コンパクトカーとは思えないレベルで日常の使い勝手を高めている
リア両サイドにはスライドドアを備え、コンパクトカーとは思えないレベルで日常の使い勝手を高めている

 3列・7名乗りというパッケージで2001年にデビューしたモビリオは市場で確固たる地位を確立し、登場から1年後の2002年9月には2列シートで5名乗り仕様の「モビリオスパイク」を追加し、ラインナップの強化を図った。さらにVTECエンジン搭載モデルを導入するなどのアップデートによって魅力を増し、ファミリーからレジャーユースまで幅広い層に支持された。

 独特の個性と優れた利便性がウケて売れ筋ミニバンの一角に名を連ねたものの、2008年に後継モデルとしてフリードが登場すると、モビリオはその役割を譲ることとなる。

 フリードほど爆発的にヒットしたわけではないが、革新的なセンタータンクレイアウトやユーロトラムをモチーフにした独創的デザイン、そして実用性と走行性能を高いレベルで融合させたコンセプトは、今も色褪せない。

 モビリオは単なるコンパクトミニバンではなく、ホンダの設計思想とチャレンジ精神を体現した一台として、確かにホンダのブランド史に名を刻んでいる。

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