精密に設計された美しき骨格がパフォーマンスを支える
LFAのパフォーマンスを根底から支えているのが、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のモノコック構造だ。レクサスはこの素材にいち早く着目し、航空機レベルの技術を自社開発ラインに導入。その結果、同形状のアルミニウムボディと比較して約100kgもの軽量化を実現している。
軽いだけではない。CFRPは鉄の約10倍の強度を持ちながら、重量はわずか4分の1という理想的な素材だ。LFAでは、部位ごとに繊維の方向や層構成を変えることで、剛性と柔軟性を自在にチューニングしている。衝撃吸収性を高めたい部分にはクロス積層を、精密なステアリングフィールを求めるフロント周辺には一方向繊維を採用するなど、緻密な素材設計が行われている。
このCFRPモノコックがもたらすのは、圧倒的な構造剛性と応答性だ。シャシー全体がねじれにくく、ステアリング操作に対して瞬時にボディが反応。その精度の高いフィードバックこそが、LFA特有のシャープなハンドリングと、超高速域でも揺るがない直進安定性を支えている。
足まわりは、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアをマルチリンク式サスペンションとした。高剛性なCFRPモノコックと組み合わせることで、路面からの入力に対して正確かつしなやかに動く脚を実現している。コーナリング中の姿勢変化は極めてフラットで、微妙な荷重移動までもドライバーが感じ取れる高いリニアリティを獲得した。
さらに、操縦安定性に寄与するもう一つの要素が空力性能だ。アンダーボディを完全にフラット化することで、走行中の気流をスムーズに整流。リアにはディフューザーを組み込み、負圧によって強力なダウンフォースを発生させる。
さらに、走行速度に応じて角度を自動制御するアクティブリアウィングを装備し、低速では空気抵抗を抑え、高速域では優れた安定性を確保している。
車体設計の初期段階から空力エンジニアとシャシー開発チームが密接に連携することで、構造材の配置や補強位置までもが、空気の流れを乱さないよう最適化されている。つまり、空力と構造が互いに影響し合う統合設計こそが、LFAの卓越したハンドリングを支えているというわけだ。
2009年の東京モーターショーで市販モデルが発表されると、LFAは世界のスーパースポーツシーンに衝撃を与えた。当時、市販化は不可能とまで言われた試作機が、世界限定500台、日本国内では3750万円という価格で発売。日本が世界に誇るスーパースポーツとして、瞬く間に伝説の存在となった。
2010年12月に生産が開始され、2012年に全500台の生産が完了。しかしLFAの物語は、そこで終わりではない。開発で培われた素材技術・空力設計・サウンドチューニング・走りの哲学は、RC F、LC、そして最新のF SPORTシリーズへと確実に息づいている。LFAは“F”ブランドの原点でありながら、今もなおレクサスの未来を導く指針として存在感を示している。
LFAは、ただのスーパーカーではない。美しい造形、精密なメカニズム、そして人の感性を震わせるエンジンサウンド。それらすべてが「機能美」として融合し、五感で味わう工業芸術として昇華された存在である。そこには、単なる速さやスペックを超え、人の心に寄り添う機会を作るというレクサスの思想が宿っている。

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