クルマを選ぶ楽しみのひとつであるボディカラー。今なお、ホワイト、ブラック、シルバーが大定番であることには変わりはないが、クルマのキャラクターを演出する重要な要素のひとつとして、今や軽自動車から多彩なカラーラインアップが用意されているのは、皆さんもご存知の通り。ユーザーの意識も変化し、自分だけの一台を手にすべく、個性的な色を選ぶ人も増えてきている。
その流れの中で、ヒットカラーといえるものも誕生。近年では、マツダが新世代車に「魂動デザイン」と共に導入した「ソウルレッド」や先代のスバルXVの専用色「タンジェリンオレンジ・パール」など挙げられる。いずれの色も進化を続け、最新モデルにも受け継がれている。
しかし、話題を集め、人気色となったものでも、1度きりや限定色で終わったものも多い。そんな復活や定番化が望まれる、あの車の人気色に迫ってみた。
文/大音安弘
写真/NISSAN、TOYOTA、MAZDA、HONDA
【画像ギャラリー】復活を期待したい限定色、専用色をまとった思い出のモデルたち
■魅惑の輝き「ミッドナイトパープル」
by 日産 スカラインGT-R(R34)
元々は、R33GT-Rに設定されたボディカラーだが、その怪しい輝きに魅了されたファンは、ハイテク満載の大人向けGTである。R34では、期間限定色として復活を遂げた。
実は、R34のミッドナイトパープルは、R33のものに改良を加えたもので、1999年仕様となる「ミッドナイトパープルII」と2000年仕様の「ミッドナイトパープルIII」の2種類存在する。いずれも前期モデルだけ、しかも期間限定色となるので、R34の中でも極めてレア存在だ。
現行型GT-Rでは、「ミッドナイト・オパール」として復活。2013年の「スペシャルディション」の専用色、2018年の「大坂なおみ選手・日産ブランドアンバサダー就任記念モデル」の選択色として設定。いずれも少数販売の限定車となるため、入手困難である点には変わりがない。
ちなみに、他車となるが2013年のジュークの特別仕様車「プレミアムパーソナライズパッケージ」の専用色「ミッドナイトパープルIV」としても復活したことがある。
■度胆をぬく“ピンクラ”「モモタロウ」
by トヨタ クラウン(S210系)
先代クラウンのデビュー時に初公開され、度肝を抜いたのが、この「ピンクラ」だ。意外なことに当初から発売することも明言され、大きな話題となった。先代のキャッチコピーである「CROWN ReBORN」を体現したボディカラーは、当時CMでコラボレーションをしていた漫画「ドラえもん」の「どこでもドア」に着想を得たものだという。
2013年9月の1カ月、期間限定受注の特別仕様車「ReBORN PINK」として発売。ハイブリッドのアスリートGをベースとしていた。小さなトリビアとして、ボディカラー名は、「ReBORN」ではなく、「モモタロウ」であることを覚えておいて欲しい。
また組み合わされる内装仕様については、演出家のテリー伊藤氏がプロデュースを担当した。その後、2015年に、60周年記念車として「空色エディション」と「若草色エディション」を発売、同年のマイナーチェンジでは「ジャパンカラーセレクションパッケージ」を設定するなど、ブレイクスルーなボディカラーを採用し続けたが、ピンクラの人気と衝撃を超えることはなかった。
1カ月の販売だったが、街角で見かけることもあり、運が良ければ、いい中古車とも出会えそうだ。
■最もレアなS2000?「アペックスブルー・パール」
by ホンダ S2000
イメージカラーのシルバーストーンメタリックのイメージが強いS2000だが、専用カラーの限定車「ジオーレ」や130通りの内外装の悔い見合わせから選択できる「カスタムカラープラン」なども色にこだわった仕様も用意されていた。そのなかでも印象に残るのが、最終仕様となる2007年10月の改良で登場した「アペックスブルー・パール」だ。
この改良で、追加された新グレード「タイプS」の専用色なのだが、ユニークなのは、ベースグレードにも専用の新色「バミューダブルー・パール」が誕生したこと。つまり、それぞれ色彩の異なるブルーパールがそれぞれ専用に与えられたのである。海のように鮮やかなバミューダブルーに対して、アペックスブルーは、美しいライトブルーという対比も面白い。
ただ、よりレーシーな仕上げとなるタイプS自体が希少なこともあり、アペックスブルーは、かなり貴重。中古車検索でも見つけることが出来ず……。まさに幻のS2000といえそうだ。
S660で復活なんてのも、アリではないだろうか。ただ新型シビックタイプRには、「レーシングブルーパール」が登場する。その色味に期待したい。
ユーノスとコラボ!「クラシックレッド」
by マツダ ロードスター
2019年、生誕30周年を迎えたマツダ・ロードスター。その30周年記念車に採用された「レーシングオレンジ」も注目を集めたが、原点回帰を図った現行型ロードスターには忘れてはならない限定色がある。それが「クラシックレッド」だ。
2017年1月13日から2月28日までの約1月半の受注期間限定色なのだが、何を隠そう初代となる「ユーノス・ロードスター」を象徴する「クラシックレッド」を、最新の水性塗料で再現したものなのだ。価格も、3万円程度と選びやすいものであったが、意外にも受注台数は少ないレアカラーだという。
誤解してはならないのは、マッチングはかなりよかったこと。筆者自身、実車を見て、ロードスターに乗るなら選びたいと思ったほどである。これもソウルレッド人気の意外な影響なのかもしれない。
■240ZGを現代に蘇らせた!?「プレミアムミスティックマルーン」
by 日産 フェアレディZ
今なお、海外でも高い人気を誇る初代、S30型フェアレディZのスタイルを現代的にアレンジし、2002年に復活を遂げたZ33。
そのボディカラーには、S30の色を強く反映した「プレミアムミスティックマルーン」が存在した。これは輸出用だった2.4Lエンジンを搭載し、空力特性を高めるグランドノーズを装着した上級モデル「240ZG」に採用された「マルーン」をモチーフとしたもの。2005年のマイナーチェンジでオプションカラーとして設定。その後、改良の際に設定から外されたものの、2008年1月15日から3月31日までの受注期間限定色として復活を遂げた。
スポーティでありながら、魔性の女性のような艶やかな雰囲気は、まさに大人のスポーツカーに相応しいものであった。有償色だが、カタログカラーであったことから、比較的中古車は探しやすい。クーペだけでなく、ロードスターも選べるのも魅力のひとつだろう。
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