現代に至るまで、日本車にはハンドリングを追求した技術が数多く投入されてきた。
なかでも1980年代には、4WSなどをはじめ次々と新技術が世に送り出された。そんな過去を振り返りつつ、特に優れていた5つを選出してみる。
文:鈴木直也
ベストカー2016年12月10日号
いいハンドリングとの関係を紐解いていく
日本車のサスペンション技術が飛躍的に進化した1980年代は、今では考えられないほど凝った足回りが続々と登場した。
先進的だったのは1980年デビューの初代FFファミリア(5代目)だ。こいつのリアサスは台形配置のロワリンクを使ったストラットだったが、横Gやブレーキ力を受けるとトーインするジオメトリーが特徴。
この考え方はポルシェ928が提唱したヴァイザッハ・アクスルと同じもの。通称SSサスペンションと呼ばれて一世を風靡した。
1980年代後半になると、この「リアサスのトー角変化をコントロールすることが重要だよね」という思想から、各メーカー揃って4WS(四輪操舵)の開発に注力する。
その先駆けとなったのが1985年登場のR31スカイラインに搭載されたHICASだ。
初期のHICASは、リアサブフレームをゴムブッシュの遊び分だけ強引にズラすという原始的なものだったが、「アクティブに後輪を操舵する」という思想はきわめて先進的。
コンセプトの面では、この時代の日本車は欧州勢よりずっと先を進んでいた。
この技術は、4輪の接地性を常に最適化するという思想のもと発展を続け、1989年のR32スカイラインでひとつの頂点を極める。
R32では、安定性だけではなく運動性をも高めるため「位相反転制御」を採り入れたスーパーHICASに発展。
これは、旋回開始時に一瞬スピン方向に後輪を操舵し、すぐ同位相に切り戻すという凄まじい技術。4輪マルチリンクの凝りに凝ったサスペンションとともに、R32が世界トップレベルの操安性と評価される原動力となった。
この時代、「クルマの走りを向上させるには4輪すべての接地性とトラクションを最適制御しなければならない」という方向性が定まったわけだが、それをさらに、左右輪の駆動トルクに差をつけて「トルクで曲がる」レベルまで発展させたのが、ランエボIVから装備されたAYCだ。
現行車では、この思想を電子制御と組み合わせてより高度に制御するのがトレンド。
スカイラインのダイレクトアダプティブステアリングはHICASの正統な後継者だし、ダイレクトヨーコントロールを電気モーターで実現しているのが、レジェンドやNSXのSH-AWD。
そのほか、1990年代には3代目ソアラをはじめ姿勢変化を抑えるアクティブサスペンションなども登場した。
コストの制約から、最近の日本車はサスペンションはじめ足回りがショボイといわれることが多いけど、今後も頑張ってほしいものであります。
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