技術は「機能」だけでなく「使い方」も大事
やや唐突ですが、以前から「ドラえもんって、四次元ポケットのインターフェースとして超有能だよなー」と考えていました。
あらゆるスペース効率を無視できる四次元ポケット技術は(ドラえもんがやってきた)22世紀における究極の発明だっただろうし、そこに収納されている便利な秘密道具はどれも偉大なエンジニアたちの努力の結晶だと思うのですが、それを人がうまく使いこなすためには、「状況に合わせてどんな道具が必要かを判断し」「その道具を検索し」「手を突っ込むだけで瞬時に出し入れでき」「かつ成績のよくない小学生相手にも簡潔に用途を説明し理解させられる」という、愛らしい二頭身のネコ型高機能インターフェースが必要だったのです。たぶん。
それと同じなのですラッキービーストは。
話が大胆にドリフトしてきた気がしますが、進めます。本作中、サーバルさんとカバンさんはジャパリバス走行中に何度もキャビン部分で楽しげに(時にルーフから顔を出して)語り合います。
もしあの時、運転席にラッキービーストがいなかったら、彼女たちはああまでリラックスして語り合えていたでしょうか。
乗客のあの安心感、あの笑顔こそが、ラッキービーストのもたらす効能なのです。
本作では、ジャパリパークにおける文明のモニュメントとして、ロープウェイや山頂の喫茶店、図書館、宿泊ロッジ、観覧車とともにこのジャパリバスが登場し、活躍します。
人がすべて立ち退いたのち、絶海の孤島で生まれた獣たちの桃源郷に、遺されたもののひとつが高機能自動運転車両とそれを操作する人工知能ガイドロボットだというのは、なんとも寓意的で現代的な話だなと思います。
それはつまり、移動の自由は「どこへ」とともに「誰とどう」が大切なのだという話であったり、安心と安全の違いだったり、コミュニケーションとは何かという話だったり。
あるいは『けものフレンズ』に通底する「人とは何か(人以外の生き物たちを見せることでそれを浮かび上がらせる)」という、優れた表現作品に共通する深くて伝統的なテーマを象徴していたのかもしれないなーなどと考えておりました。
そろそろ長くなった本稿は、そもそも何を伝えたかったのかと申しますと、国土交通省や警察庁や経産省の偉い人、トヨタ、日産、ホンダ、スバルほか各メーカー経営陣および開発陣は、今すぐ『けものフレンズ』を見るべきだ、ということです。
あそこには、社会の目指すべき未来のひとつがあります。
(※一部追記/もちろん各メーカー開発者の皆さんが自動運転と人工知能の開発、連動に関してすでに多くの知見を積み上げており、なお試行錯誤を重ねていることは存じております。
そんな皆さまにこの上なお不肖雑誌編集者が名指しで特定の作品を「見るべき」などというのはおこがましい提案であるとも思います。
ただ皆さまが日々研鑽を重ねて目指している「車と人の幸せな共生社会」のひとつの理想がこの作品にありますと、一緒に楽しみたいと申し上げたいために、本稿において一部かなり筆が滑っていることをお許しください)
以上、ご静聴ありがとうございました。
- 『けものフレンズ』オフィシャルDVD(1)
- 監修:けものフレンズプロジェクト
- 3780円(税込)/KADOKAWA/2017年3月25日発売
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