『けものフレンズ』に自動運転とAIの幸せな可能性を見た【編集部便り】

 大ヒットアニメ『けものフレンズ』を見てズドドっと刺さった本記事担当編集。車好きならではの見方をしたこともあり、誰かに「すげえよかったよ!」と言いたくもあり、そんな思いのたけが漏れ出た記事です。

 正直かなり公式記事っぽくないので、本エントリが突然インデックスから消えたらまあそういう事情だったんだなとお察しください。

 以下、公式ツイッターでポロッと呟いたら大変反響が大きかった内容を、増補改訂版でお届けします。なお好きなフレンズはアルパカさんです。

 文:Web編集部 写真:けものフレンズプロジェクト、Shutterstock.com

 ※大変恐縮ですが、本記事は当該アニメ作品に興味がない方にはまったく響かず、しかもネタバレまで含むコンテンツです。

 申し訳ありませんが、『けものフレンズ』を見たことがないという人は今すぐブラウザを閉じるか別記事へ飛ぶかBlu-ray版を購入して見ましょう。お薦めです。


夢の技術が詰まった超高機能車両、「ジャパリバス」

 いきなりですが、『けものフレンズ』を見ました。

 モデル動物の特徴をよく捉えたキュートで癒し系のキャラクター、謎めいた舞台設定と世界観、ほんわかと幸せな気分に浸れるシナリオ構成、張り巡らせた伏線を怒涛の終盤でほぼすべて回収し、

 そのうえきっちり感動させる演出力、全編をとおして染み込むように学べる動物の豆知識などなどなどと、多くの魅力を持った作品であり、普段あまりアニメを見ない本企画担当者も、友人から薦められて「とりあえず3話まで」と見始めたところ、気づいたらAmazon Videoで全話購入してました。たーのしー。

『けものフレンズ』

 『けものフレンズ』公式サイトはこちら

 本作は放映開始直後から、多くの側面からの考察記事が多数出ておりました。そんな中で本記事担当編集はひっそりと、第2話からずっと「ジャパリバス」が気になっておりました。

 サーバルさん一人で持ち上げられるほどの超軽量化技術、水没しても立ち木に激突しても問題なく起動できるどころか傷ひとつつかないボディ周りの耐水・耐衝撃性能、

 長期間屋外に放置してもまったく劣化が見られないタイヤと電装系パーツ、WRCマシンを彷彿とさせるラリージャンプ(オープニング映像のみ)可能な動力性能、

 そして何より軽量コンパクトにもかかわらず数時間の充電で広いパーク内を自在に移動でき最終話まで途切れることなく駆動力を発揮し続けた超絶高性能バッテリー…と、ジャパリバスには人類の夢と希望が詰まったドリームビークルでありました

 (そのわりに衝突軽減ブレーキ系の技術が搭載されていないように見えるのは、何か別の理由があるのでしょうか。フレンズが気軽に近寄っても誤作動しないよう、デフォルトではカットされているとか)。

 なおあのジャパリバス(より厳密にいうと前部トラクター型のトレーラー式バス)、動力機構はもちろん電動だと思うのですが、時折ディーゼルエンジンらしき駆動音&排気音が聞こえることがあり、

 あれは充電補助用小型エンジン音(つまりシリーズハイブリッド車)か、もしくは車両近辺のフレンズに接近を知らせるダミー音であると考えられます。

 さて。

 これらの性能や特徴についてそれぞれご飯三杯分くらいずつ話せるんですが、本記事担当編集が特に注目していたのは、「操作系インターフェースとしてのラッキービースト」です。まあちょっとこの感動に免じて聞いていただきたい。

アルパカ

近接(非接続・非直接)操作で運転するラッキーさん

 作中、第2話でジャパリバスがサーバルさんとカバンさんに発見されると、ラッキービーストがバッテリー切れを指摘します(不具合のチェックセンサーも内蔵しているということ)。

 その後、充電して以降最終話までずっと、ラッキービーストが車両前部の運転座面に立ち、操縦・園内ガイドを担当しています。

 運転席には「ハンドル」と、第5話でサーバルさんが、最終話でカバンさんがトラクター部分を操作しているところを見る限り、足元に「アクセル/ブレーキペダル」、コンソール下部分に「始動スイッチ」らしきものが存在するようです。

 いっぽうでメーター機器、レバー類(シフト含む)は見えるところには存在しないようで、またラッキービーストが操縦する場合は、ハンドルもアクセルも始動スイッチも操作している描写がいっさいありません。

 つまりあのジャパリバスは、「人およびフレンズによる手動操作」と「ラッキービーストによる自動運転」の切り替え可能な操作系オンデマンド車両なんですよね。

 後者を別の角度から言えば、ラッキービーストは「非接続型のジャパリバス操作インターフェース」ということでもある。「お任せ運転機能(会話・修理・解説可能)」が付いたラジコンのコントローラーみたいなものなわけですね。

 この形式、自動運転と応答型人工知能(三人旅を「楽しかった」と語るあの自律型ガイドロボットの思考経路を「知能」と呼ぶことに反対する人は少ないでしょう)の、すごく幸せな融合だと思うのです。

 というのも、現状、この日本で「自動運転車両」がこの先どういう形で普及していくのか、させてゆくのか、国も各メーカーもいまだ模索中なところがあるのですが、

 ああいう「ラッキービーストのような、運転・解説・操作インターフェースとしての高機能・高好感度キャラクターを運転席に置く(手動に切り替えも可)」というかたちは、非常に有効だと思うわけです。

 ラッキービーストは最終話で、複数個体の相互通信・一斉情報共有・同期行動が可能だと明かされました。これは車車間通信による事故防止に大変有効です。また音声応答機能とメモリ機能については、軽量小型携帯式(リストバンドとして装着可能)のガラス型チップに分離可能だということも判明しています。

 これはどういうことかといえば、ラッキービーストの本体と呼べるような機能は腹部(?)の小さなガラス型チップに集約されており(マイクもスピーカーも認識センサーもメモリもOSもあそこに搭載されているっぽい)、

 あの愛らしい耳と足が付いたボディは、そのほとんどが飾りであり、人やフレンズを威嚇しないための愛玩機能+ジャパリまん製造・貯蔵・運搬・供給装置なのです。

 (具体的な描写はありませんでしたが、第9話でジャパリバスが雪道スタック時に短時間でクローラー仕様へと改装しているところを見ると、タイヤ交換や修理等の物理的な整備機能が実装されている可能性はあります)

今の日本で「自動運転車両」が切実に期待される現場

 現代日本において、「自動運転車両」は、まずルートセールスや乗合バスを中心に普及していくだろうと期待されています。

 それは、これは都市部にいると実感しづらいのですが、高齢化が進んだ地方では公共交通機関がどんどんサービス低下しており、そのために運転免許が命綱となっている高齢者がたくさんいるという実態があるからです。

 加齢により視力も反射機能も運動能力も落ちてきた高齢者には、なるべくなら免許を返納してもらいたい。

 しかし電車もバスも採算が取れない地方都市では、自分で運転して年金をおろして、スーパーマーケットまで買い物に行けるかどうかは死活問題なわけです。

 こうした危機的な社会状況を、自動運転車両の普及で救えるかもしれないと。

 完全自動化された無人バスやルートセールス車が定期的に巡回するようになれば、危険を冒して運転する高齢者は減るはずなのです(だからこそ自動運転技術は経産省だけでなく国交省や警察庁も熱心に支援していたりする)。

 むろん技術的、社会的、予算的な課題はまだまだ山積していますが、少なくとも有力な緩和手段のひとつだと期待されています。

 しかしこうした地方都市で、運転席が無人のバスや乗合タクシーが走り回ることに、抵抗を感じる高齢者は多いでしょう。ハッキリ言って不気味だし、乗客の質問や疑問に答えたり、適宜説明、介助、アドバイスするインターフェースだって必要です。

 それがラッキービースト+ジャパリバスなら一気に解決ですよ。どうですか皆さん。

技術は「機能」だけでなく「使い方」も大事

 やや唐突ですが、以前から「ドラえもんって、四次元ポケットのインターフェースとして超有能だよなー」と考えていました。

 あらゆるスペース効率を無視できる四次元ポケット技術は(ドラえもんがやってきた)22世紀における究極の発明だっただろうし、そこに収納されている便利な秘密道具はどれも偉大なエンジニアたちの努力の結晶だと思うのですが、

 それを人がうまく使いこなすためには、「状況に合わせてどんな道具が必要かを判断し」「その道具を検索し」「手を突っ込むだけで瞬時に出し入れでき」「かつ成績のよくない小学生相手にも簡潔に用途を説明し理解させられる」という、愛らしい二頭身のネコ型高機能インターフェースが必要だったのです。

 たぶん。それと同じなのですラッキービーストは。

 話が大胆にドリフトしてきた気がしますが、進めます。本作中、サーバルさんとカバンさんはジャパリバス走行中に何度もキャビン部分で楽しげに(時にルーフから顔を出して)語り合います。

 もしあの時、運転席にラッキービーストがいなかったら、彼女たちはああまでリラックスして語り合えていたでしょうか。

 乗客のあの安心感、あの笑顔こそが、ラッキービーストのもたらす効能なのです。

 本作では、ジャパリパークにおける文明のモニュメントとして、ロープウェイや山頂の喫茶店、図書館、宿泊ロッジ、観覧車とともにこのジャパリバスが登場し、活躍します。

 人がすべて立ち退いたのち絶海の孤島で生まれた獣たちの桃源郷に、遺されたもののひとつが高機能自動運転車両とそれを操作する人工知能ガイドロボットだというのは、なんとも寓意的で現代的な話だなと思います。

 それはつまり、移動の自由は「どこへ」とともに「誰とどう」が大切なのだという話であったり、安心と安全の違いだったり、コミュニケーションとは何かという話だったり。

 あるいは『けものフレンズ』に通底する「人とは何か(人以外の生き物たちを見せることでそれを浮かび上がらせる)」という、優れた表現作品に共通する深くて伝統的なテーマを象徴していたのかもしれないなーなどと考えておりました。

 そろそろ長くなった本稿は、そもそも何を伝えたかったのかと申しますと、国土交通省や警察庁や経産省の偉い人、トヨタ、日産、ホンダ、スバルほか各メーカー経営陣および開発陣は、今すぐ『けものフレンズ』を見るべきだ、ということです。

 あそこには、社会の目指すべき未来のひとつがあります。

 (※一部追記/もちろん各メーカー開発者の皆さんが自動運転と人工知能の開発、連動に関してすでに多くの知見を積み上げており、なお試行錯誤を重ねていることは存じております。

 そんな皆さまにこの上なお不肖雑誌編集者が名指しで特定の作品を「見るべき」などというのはおこがましい提案であるとも思います。

 ただ皆さまが日々研鑽を重ねて目指している「車と人の幸せな共生社会」のひとつの理想がこの作品にありますと、一緒に楽しみたいと申し上げたいために、本稿において一部かなり筆が滑っていることをお許しください)

  以上、ご静聴ありがとうございました。

『けものフレンズ』オフィシャルDVD(1)
  • 『けものフレンズ』オフィシャルDVD(1)
  • 監修:けものフレンズプロジェクト
  • 3780円(税込)/KADOKAWA/2017年3月25日発売
  • ガイドブック+アニメ本編第1話・第2話収録ブルーレイディスク

 【調子に乗って公開してしまった、本記事の取材メモはこちら】

 『けものフレンズ』自動運転とAI考察のための感想メモ【編集部便り】

 技術はなんのために発展するのか AIと自動運転と少しだけ『けものフレンズ』【編集部便り】(2017年4月30日追記)

最新号

ベストカー最新号

【2021年新型Z登場!!】日産怒涛の新車戦略|ベストカー8月10日号

 ベストカーの最新刊が本日発売!最新号では、日産が2023年度までに国内投入する新型車10モデル最新情報ををお届け。  そのほか、2Lエンジン搭載カローラ、レクサスLCコンバーチブル、プジョー208など注目車種の情報から、2020年1/2ベ…

カタログ