高性能4気筒は必然的に2.5Lになる
いっぽうで、そこまで体力のないメーカーは、2.5Lを上限として力を注いでいる。日本のスバルやマツダもそうだ。
ところで、2.5Lというのは、4気筒も5気筒も6気筒もある。最近では6気筒が減って4気筒が増えているが、4気筒として排気量の上限となるのが2.5Lで、4気筒で高性能を追求すると必然的に2.5Lになるわけだ。
高級車にとってひと昔前まで4気筒というと廉価版的なイメージが強かったものだが、最近ではそうでもなくなってきた。
小さな排気量と少ない気筒数のエンジンで性能はしっかり出ているのが偉いという考え方になってきたのは高級車にも当てはまる。
メーカーにとっても気筒数が少ないエンジンのほうがなにかと開発の手間が小さくてすむし、できるだけ手持ちの機種の数は増やしたくなく、リソースを集中してよいものを作りたいという方針だ。
その時に4気筒のほうが好都合で、4気筒でよいものをつくるのが最も効率的といえる。
いっぽうでフォルクスワーゲン(VW)系などの直列5気筒は、2L直列4気筒に1気筒をプラスしたモジュール設計によるものだ。
日本のメーカーはモジュール設計の採用例が少なくピンと来ないかもしれないが、1気筒あたりの燃焼の複雑な解析などがそのまま流用できるモジュール設計というのもこれまた効率的なアプローチといえる。
ただし、5気筒というのは、ややイレギュラーなものという感じで、やはり4気筒で2.5Lというのがメインとなることには違いないだろう。
思えばかつて日本でも自動車税が2L未満と2L以上で大きな隔たりがあったが、1989年に改定され、500cc刻みになってほどなく2.5Lが一気に増えた。
それは2.5Lという排気量が実に合理的であるからにほかならない。ひょっとして今、世界でも同じようなことが始まっているのかもしれない……。
スポーツターボの王道「2.5Lターボ」は蘇るのか?
VWがTSIで火をつけたダウンサイズターボ。ドライバビリティに優れた燃費志向エンジンとして大変ありがたい技術だけど、あれよあれよという間にベースエンジンの排気量がどんどん小さくなってしまったのはチト気がかり。
「“ダウンサイズ”なんだから当たり前」と言われれば返す言葉もないが、クルマ好き、特にパフォーマンス志向のユーザーには、この状況はあまり楽しくない。
電動化技術の進化もあり、このままだと内燃機関のキャパシティは1Lもあれば充分という時代がやって来たらどうします? 内燃機関にも多様性がないとツマラナイ、と感じるワケです。
もちろん、現在でも純スポーツカーではオーバー2Lターボも珍しくなく、ダウンサイズといいながらポルシェ911には3Lターボが搭載されている。そりゃわかってる。
でも、肝心なのはふつうのユーザーの手が届くところに、そういう面白いエンジンを積んだクルマが存在すること。かつてフェアレディZやスープラに3Lターボがふつうに搭載されていたことを思い出すと、今こそ普及版スポーツターボに頑張ってほしいのだ。
■従来の3.5L、V6が2.5L直4ターボへ
で、さまざまな条件を考え合わせると、これからの“スポーツターボ”の主戦場は必然的に2.5Lクラスになる、そう断言できる。
“ダウンサイズ”という大きな流れから、今さら6気筒はあり得ない。となると、4気筒では2.5Lあたりが実用上の排気量限界。
2.5Lあれば過給エンジンの弱点である低速トルク不足も心配ないし、“ダウンサイズ”の観点から見てもNAの3.5L、V6の置き換えにピッタリ。北米市場を中心に量産効果にも期待が持てる。
現実にも、すでに何種類か新型の2.5Lターボが登場しているが、ベンチマークとなるのはやはりポルシェ718ボクスターS/ケイマンSの水平対向2.5Lターボだ。
NA水平対向6気筒と比べると、ややワイルドなノイズとバイブレーションを感じさせるものの、ミドシップスポーツというキャラにはむしろお似合い。
350ps/420Nmというスペックも申しぶんなく、3.4L、NA6気筒の981ボクスターS(315ps/360Nm)を凌ぐパフォーマンスを誇る。
国産勢からも、すでにスバルとマツダが2.5Lターボにエントリーしている。北米向けWRX STIは2.5Lフラット4で305ps/393Nmで、日本仕様のEJ20よりフレキシブルなパワー特性が持ち味。
マツダはSKYACTIV初のガソリンターボとなる直4、2.5LターボをCX-9に搭載。スポーツチューンではないから最高出力250psと馬力は控えめだが、最大トルクは420Nmと強力だ。
注目なのは、この国産勢2車が北米では400万円を切る価格ゾーンにいること。こういう面白そうなクルマが、日本市場でも買えるようになってほしいものであります。
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