国産セダンの名門中の名門、ブルーバードの系譜を継ぐシルフィ。2000年に11代目にあたるG10型が「ブルーバードシルフィ」に改名、2012年登場の13代目にあたるB17型で「シルフィ」となった。
そのシルフィの新型が、2019年4月の上海モーターショーで公開されると、スタイリッシュな姿が「カッコいい!」と話題となった。同年7月より中国市場で販売されているほか、11月には、米国のロサンゼルス・オートショーにおいて、新型「セントラ」としても発表されている。
しかし、日本市場のシルフィは、2012年に登場したモデルが販売され続けている状況で、モデル更新のウワサは今のところ、聞こえてこない。「セダンはクラウンしか売れない」日本市場に、新型シルフィ投入の可能性はあるのだろうか。
文:吉川賢一/写真:NISSAN
【画像ギャラリー】これはカッコいい…海外専売の日産のセダンを写真でチェック!
海外シルフィはミディアムクラスセダンの「世界戦略車」
上海モーターショー2019で公開された新型シルフィ(B18型)は、全長4641×全幅1815×全高1450mmという、立派なボディサイズをしている。国内向けの現行型シルフィ(B17型)は、全長4615×全幅1760×全高1495mmであるので、全長は2mm伸び、全幅は55mm広がり、全高は45mmも下がり、ワイド&ローのスタイリッシュなスタイリングへと進化した。
V37型スカイラインが全幅1820mmであることを考えると、ミディアムクラスセダンの「世界戦略車」だ、ということがよくわかる。ホイールベースも、2700mmから2712mmへと、12mmほど伸びている。
エクステリアデザインは、これまでのVモーショングリルの中でもダントツにカッコいいと感じる。大型で上下幅の狭いヘッドライト、グリル左右のフォグランプ周辺、そしてリアフェンダー上部のキャラクターライン、また低い全高によって、まるで4ドアのFR車のようにも見える。
リヤにあるCピラー付近でリアドアからキックアップしたラインも、シャープさを一層引き立てており、実にスポーティな雰囲気を持っている。
インテリアも、ステアリングホイールやメーター回りなど、昨今の日産共通デザインに沿ってはいるが、鮮やかなカラーの表皮やダッシュボード全面に施されたステッチ付の表皮のおかげで、実に明るい。シルフィのエクステリアに見合う、スポーティな雰囲気にまとまっている。
北米の新型セントラの場合だと、149ps/146Nmを発生する2.0リッター直列4気筒エンジンにエクストロニックCVTの組み合わせのFF駆動だ。フロントサスはストラット式、リアサスはマルチリンク式、デュアルピニオンEPSを採用し、タイヤサイズは16インチから18インチまである。先進安全装備も多彩に用意されており、アラウンドビューモニターも選択できる。
ちなみに、燃費アイテムとしてアクティブグリルシャッターを標準装備している。価格は19,019ドル(Sグレード)~21,430ドル(SRグレード)、日本円換算だと204万~230万円程だ。クルマの大きさや装備を考慮すると、実に「リーズナブル」ではないだろうか。
日本導入の可能性は「80%」と予測!
新型シルフィの日本導入に関して、今のところ、日産による明言は何もない。しかし筆者は、シルフィの日本導入は、80%の確率であるのではないか、と予測している。その理由は以下の通りだ。
先日(5月28日)、日産がオンラインで開催した、2019年度決算・事業構造改革計画発表において、日産は「日本市場は電気自動車の拡大(SUVと軽を追加)、電動化(e-POWERもしくはハイブリッド)を25%から60%にまで引き上げる」とし、具体的には、日本市場へ「e-POWER車を6車種、ICE車(ガソリン車)を3車種、EVを3車種導入する」と説明。
同時に、導入車種の名前や時期などの説明はなかったが、車齢の高くなったモデルの若返りも強調されていた。
シルフィの主戦場のひとつは、中国だ。その中国市場に向けた日産の戦略は、「EVとe-POWER」を推進することだという。ということは、キックスがそうしたように、パワートレインをe-POWERもしくはEVへとブラッシュアップした「シルフィe-POWER・シルフィEV」の開発がなされていてもおかしくはない。
ちなみに中国では、リーフのセダン版として「シルフィEV」が2018年8月から販売されている。
さらに内田社長兼CEOからは、商品ラインアップの効率化として「Cセグメント、Dセグメント、EV、スポーツを強化する」という大きな戦略の宣言もあった。Cセグメントの強化、電動パワートレインの推進、そして中国市場で成功しているシルフィの改良の可能性。
こうした要素を考慮すると、「シルフィe-POWERもしくはシルフィEVが2022年以降に登場」というのが筆者の予測だ。
気になるのは、日本市場でのセダン不人気であるが、それはこれまで「魅力的なセダン」がなかったからであり、この先も不人気が続く、ということを示すものではない。これまで日産であれば、やらなかったことであろうが、セダンの復権、そして日産の復権のため、ぜひチャレンジしてほしいと思う。
コメント
コメントの使い方