エルグランド10年目の大変身!! ビッグマイナーチェンジに販売現場の評価は?

9月10日、日産はエルグランドのマイナーチェンジを発表した

グリルが派手になり強面顔になったマイナーチェンジ後のエルグランド
グリルが派手になり強面顔になったマイナーチェンジ後のエルグランド

 そこで日産は2020年9月10日、エルグランドにマイナーチェンジを実施すると発表した。予約注文は9月14日に開始され、実質的に販売されている状態だ。

 販売店では「正式な発売は10月12日です。9月中旬には受注を開始したので、9月下旬に契約を頂くと、納車は11月中旬になります。通常の納期は約1ヵ月ですが、今回のマイナーチェンジでは従来型から乗り替えるお客様も増えたので、納期が伸びています」と説明する。

 マイナーチェンジでは、フロントグリルをセレナハイウェイスターのような緻密なデザインに変更する。内装ではインパネの基本的な配置は同じだが、各部の形状は見直す。従来の派手な印象を少し抑えて上品に変わる。

 装備については安全面を充実させる。以前から衝突被害軽減ブレーキは採用していたが、インテリジェントFCWに進化する。

 センサーには単眼カメラとミリ波レーダーを使い、2台先を走る車両も検知可能だ。

 ドライバーから見えない前方でアクシデントが生じた時も、早期に警報できる。このほか踏み間違い衝突防止アシスト、後方の並走車両を検知して警報する機能なども採用する。

 その半面、車間距離の自動制御に加えて、操舵までサポートする運転支援機能のプロパイロットは設定されない。

 以前から車間距離を自動制御できるインテリジェントクルーズコントロールを用意していたので、マイナーチェンジ後も引き続き採用する。

 またエルグランドの2列目セパレートシートには、背もたれの上側だけ角度を変える中折れ機能が備わり、足をゆったりと伸ばせるオットマンも装着されている。

 2列目の背もたれを寝かせた時の快適性は高いが、シートベルトは、以前と同じピラー(柱)から引き出すタイプだ。

 これでは寝かせた状態で走行中に衝突した場合、乗員を十分に拘束できない。アルファード&ヴェルファイアやオデッセイのように、シートベルトを2列目シートの背もたれから引き出す方式に改める必要がある。

 この点については、他メーカーのミニバン開発者も「2列目がキャプテンシートの場合、ピラーから引き出す方式は、今ではあり得ない」と述べている。

 ちなみにシートベルトを背もたれから引き出す方式は、乗員の拘束力を強められる半面、衝突で生じた力をすべてシートの脚とスライドレールで支えねばならない。抜本的にフロアを強化する必要があるため、おそらくマイナーチェンジでは対応できない。

 今はプラットフォームの解析能力が向上して、従来型から流用しながら、走行安定性、操舵感覚、乗り心地などを大きく引き上げられるようになった。

 例えば先ごろ発売されたキックスは、基本的にはマーチと同じ「Vプラットフォーム」を使うが、走行性能と乗り心地は大幅に進化した。

 つまりマイナーチェンジで変更可能な領域も広がったが、シートベルトのシステム変更、プロパイロットの採用など、フルモデルチェンジしないと困難なことも少なくない。

 今後登場するレクサスISも、発売から7年を経過しながらマイナーチェンジで済ませるので、外観は大きく変わるが安全装備などの目新しさは乏しい。

インパネ回り、シート地を変更し、より高級感のある材質、意匠を強調。インパネ中央部分のナビは従来の8から10インチに拡大した
インパネ回り、シート地を変更し、より高級感のある材質、意匠を強調。インパネ中央部分のナビは従来の8から10インチに拡大した

プロパイロットの設定を期待したのだが……

プロパイロット、あるいはスカイラインに用意されるハンズフリーのプロパイロット2.0を選べると喜ばれたはずなのだが……
プロパイロット、あるいはスカイラインに用意されるハンズフリーのプロパイロット2.0を選べると喜ばれたはずなのだが……

 日産の販売店にエルグランドのマイナーチェンジについて尋ねると、以下のようにコメントした。

「今はお客様の安全意識が高まり、各種の安全装備を組み合わせた360度セーフティアシストの採用は、メリットも大きいです。

 特に2台先を走る車両の検知機能は、デイズを含めて幅広い車種に採用され、日産の代表的な安全技術になっています。その半面、プロパイロットは設定がありません。

 エルグランドはLサイズミニバンなので、長距離を移動するお客様も多いです。プロパイロット、あるいはスカイラインに用意されるハンズフリーのプロパイロット2.0を選べると喜ばれたでしょう。

 このほか今の日産車には、デイズを含めて通信機能が増えており、エアバッグ連動式のSOSコールも装着できます。これらの先進機能をエルグランドにも採用して欲しいです」。

 ライバル車のアルファード&ヴェルファイアでは、通信機能が全車に標準装着され、エアバッグ連動型のヘルプネットも利用できる。衝突被害軽減ブレーキは、昼夜の歩行者に加えて、昼間の自転車も検知する。

 現行アルファード&ヴェルファイアは前述の通り、2015年に登場したが、2017年、2018年、2019年にも改良を行って安全装備などの商品力を向上させてきた。

 高価格車でありながら好調に売れるため、トヨタにとってコストを費やしても改良を行う価値が高い。それを実践した結果、売れ行きがさらに伸びる好循環が生まれている。

 対するエルグランドは、現行型を2010年に発売して、2012年の売れ行きは(2011年は東日本大震災で国産全車の売れ行きが落ち込んだ)、1200台前後であった。

 アルファード&ヴェルファイアに需要を奪われた影響もあり、発売早々に売れ行きが低迷している。

次ページは : アルファード&ヴェルファイアを比べてどうか?

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