アルファード&ヴェルファイアを比べてどうか?
その一番の原因は、アルファード&ヴェルファイアに比べて、Lサイズミニバンらしさが乏しいことだ。要素は複数ある。
まず外観だ。現行アルファード&ヴェルファイアは、プラットフォームを刷新したから、床を低く抑えて、乗降性や走行安定性を向上させることも可能だった。
しかしあえてそれをしていない。開発者は「お客様が周囲を見晴らす感覚を好むので、視線の位置を下げたくない。そこで床の高さも、従来に近い設定にした」と述べている。
周囲の見晴らし感覚に加えて、背の高い上級ミニバン独特の存在感(あるいは威圧感)も重視したのだろう。
そこで極端にいえば観光バスのように床を高め、見晴らしを良くするとともに、全高も1935~1950mmに設定して外観の存在感を強めた。
エルグランドは、これと逆の商品開発を行っている。現行型で従来の後輪駆動から前輪駆動に変更したこともあり、全高を1815mmに抑えた。外観はスポーティになったが、存在感は乏しい。
それなのに床の高さはあまり下げていないので、室内高が不足した。アルファード&ヴェルファイアの室内高は1400mmだが、エルグランドは1300mmだ。車内に入った時の頭上の広々感が異なる。
しかもエルグランドの3列目シートは、床と座面の間隔が不足して、膝の持ち上がる窮屈な着座姿勢になる。アルファード&ヴェルファイアに比べると、3列目の居住性が大幅に見劣りする。
3列目の格納方法も異なる。アルファード&ヴェルファイアは、左右に跳ね上げる一般的な方式だから荷室高を十分に確保できるが、エルグランドは3列目を前側に倒すタイプだ。
これでは格納時に3列目の厚みだけ荷室の床が持ち上がり、荷室高はさらに乏しくなる。アルファード&ヴェルファイアなら、3列目を格納して自転車を縦に積むことも可能だが、エルグランドでは難しい。
このように立派な外観、車内からの見晴らしのよさ、3列目を含めた多人数乗車時の快適性、広くて使いやすい荷室などは、すべてLサイズミニバンの大切な価値だ。
アルファード&ヴェルファイアは、この点に力を入れて売れ行きを伸ばし、スポーティな価値を求めたエルグランドは低迷している。
エルグランドがこれらの不満をすべて改めるには、フルモデルチェンジを行わねばならない。マイナーチェンジでは限界がある。
そしてもうひとつ、エルグランドにはハイブリッドシステムも欠けている。
エルグランドにハイブリッドやe-POWERが欲しかった!
アルファード&ヴェルファイアのハイブリッドは、後輪をモーターで駆動するE-Fourのみだから、2.5Lノーマルエンジンの2WDに比べて価格が90万円近く高い。
したがって、ほかの車種に比べるとハイブリッド比率は低いが、それでも約20%は占めている。
アルファード&ヴェルファイアの場合、ハイブリッドであれば、直列4気筒2.5Lノーマルエンジン車と比べて約30%の燃費節約が可能だ(WLTCモード燃費で計算)。
購入時に納める税金も安く、アルファードS(価格は7人乗りが390万8000円)の場合、環境性能割と自動車重量税(3年分)の合計で11万円少々を節約できる。
また上級ミニバンでは、高い付加価値も求められるから、ハイブリッドのラインナップも大切だ。そうなるとエルグランドにもハイブリッドのe-POWERが欲しい。
マイナーチェンジされたエルグランドの価格を販売店に尋ねると、直列4気筒2.5L、NAエンジンを搭載するベーシックな250ハイウェイスターSが369万4900円だ。
現行型の同グレードが359万7000円だから、安全装備の充実などによって10万円弱値上げされた。
この金額は妥当だろう。ライバル車のアルファード2.5Sは390万8000円だから、エルグランドに比べて約21万円高いが、安全装備や通信機能の違いを考えるとアルファードも割高ではない。
今回のエルグランドのマイナーチェンジは、インターネット上で話題になっている。今でもエルグランドの知名度は高く、ファンも多いわけだ。
今後の日産は、国内市場を改めて見直す方針を示しているので、エルグランドにもフルモデルチェンジを実施してほしい。
最終型のエスティマは、発売から10年後に規模の大きなマイナーチェンジを実施して、その約3年後に廃止された。
エルグランドも発売から10年を経過しながらマイナーチェンジで済ませるのは気になるが、エルグランドは国内では日産ブランドのイメージリーダーになり得る基幹車種だ。大切に開発を続けて、ユーザーの期待に応えてほしい。
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