■特別展示『30年前の未来のクルマ』から、かつての「未来のクルマ」たちを解説!!!
(車両解説/永田恵一)
●4500GT EXPERIMENTAL(1989年)……「先進技術」と「遊び心」も高次元で調和
“300km/h巡行が可能な次世代高性能スポーツカー”を目標に、その当時の「現代のトヨタ2000GT」を目指したコンセプトカー。
2ドアの4人乗りFRクーペ(2+2シーター)で、4人の乗員と荷物を快適に運ぶ高級車として登場した。Cd値は0.29と優秀で、エンジンはV8、4.5L DOCHをフロントミドに搭載する。
これは初代セルシオの積んでいた1UZ-FE型V8、4L DOHCをベースとしながら排気量が500ccボアアップされており、1気筒あたり4バルブから5バルブに変更されている。
エンジンのスペックは最高出力295ps/6600rpm、最大トルク39.8kgm/4800rpm。また、前後重量配分50:50に近づけるため、6速MTと一体化されたリアデフをトランスアクスルとなる点は、6速MTが80スープラ、トランスアクスルがLFAに通じる。
後輪舵角を電子制御するアクティブリアホイールステアリングを採用。ボディサイズは全長4365×全幅1830×全高1210mm、エンジンフードやフロントフェンダーなどにCFRPを採用し、車重1450kgと軽量に仕上げられていた
●AXV-II(1987年)……あの「セラ」の原型!
1990年登場のセラの原型となったコンセプトカー。ガルウイングドアを採用し、「単なる快適な移動を超えた、感性に訴えるライブ&パフォーマンス」というコンセプトを掲げていた。なお、セラのガルウイングドアは全面ガラスルーフを実現するためのものだという
●AXV-IV(1991年)……450kgと超軽量なコミューター
1991年の東京モーターショーに出展されたパーソナルコミューター。地球環境対策を主眼に据えたコンセプトモデルで、軽量化と高効率を追求したほか、省資源とリサイクルにまで踏み込んでいる。
アルミボディやマグネシウム製ドアといった軽合金材やFRP製スプリングを採用したサスペンションなどで、車重はなんと450kg。804ccの2サイクル2気筒スーパーチャージャーS2エンジンを搭載していた
●AXV-V(1993年)……「ハーモニックエアロサルーン」がコンセプト
人と環境の調和を目指した都市間交通の次世代ツアラー。このコンセプトを実現すべく直噴エンジンを搭載し、Cd値も0.20まで下げられ、高速域での燃費を追求した。
また現代に通じるダイヤル式のシフトや自動ブレーキ、電子制御ブレーキの採用も注目を集めたほか、従来型ポート噴射式エンジンの5倍以上の速さで噴出可能な世界初のピエゾEFIシステムを採用した直噴エンジンのD-4(1996年に初代コロナプレミオの3S-FSE搭載車で初採用)を搭載していた。
●GTV(1987年)……低公害なガスタービンGTコンセプト
ガスタービンエンジンを搭載するコンセプトカーで、GTVは単刀直入にガスタービンビークルを意味する。4代目カリーナがベースとなり、コンセプトは「パーソナルグランドツアラー」。
ボディサイズは全長4725×全幅1790×全高1325mm、ホイールベース2595mm。最高出力150psの小型2軸式ガスタービンエンジンはスムーズさ、高い静粛性、灯油などにも対応する燃料の多様性、高速燃費のよさといったメリットも多かったが、残念ながら幻となった。
●e・com(1997年)……都市交通に適した新しい交通手段
家庭用の100V電源でも充電可能(フル充電まで約6時間)なEVの2人乗りシティコミューター。ボディサイズは全長2790×全幅1475×全高1605mm、ホイールベース1800mm。
FFレイアウトで搭載された永久磁石型モーターの最高出力は22ps/2200~3500rpm、最大トルクは7.7kgm/0~2300rpm。航続距離と最高速はそれぞれ100kmで、駅までの足に使うパーク&ライドの実証実験も行われた。
かつてメガウェブでは、1999年の開業時から2010年まで「e.comライド」というガイドウェイ上を自動運転するe.comに乗ることができるアトラクションが存在していた。
また、「Crayon」(クレヨン)というITSを活用した共同利用システムが1999~2006年まで実証実験を実施。e-COMのコンセプトはひとり用のコムスや近々登場するふたり乗りの超小型EVにキチンと引き継がれている
●MRJ(1995年)……ミドシップ2+2オープンスポーツ!
「ニュージェネレーション・ライトウェイトスポーツ」をテーマとし、1999年に市販化されたMR-Sの原型となったオープンのコンパクトミドシップスポーツカー。コンセプトカーは狭いながらもリアシートを持つ4人乗りかつ電動オープントップだったことに驚く。
2代目のSW20型MR2をベースとするコンセプトで、ボディサイズは全長3995×全幅1695×全高1240mm、ホイールベース2550mm。フロントにマクファーソンストラット、リアにスーパーストラットサスを採用し、車速やハンドルの切れ角に連動して車両のヨーレイトをフィードバックするアクティブリアホイールステアリングで安定感ある走りが特徴。
エアロキャビンはスイッチのワンタッチ操作でクローズからオープンに変身する。欲を言うと搭載された最高出力170psの直4、1.8Lの5バルブDOHCで可変バルブタイミング&リフト機構を持ったエンジンの市販化も見たかったところだ
●レクサスLF-LC(2012年)……コンセプトがまんま市販車に
現在のレクサスLCの原型となった、レクサスのデザインスタディを目的としたハイブリッドを搭載するプレミアムクーペのコンセプトカーで、2012年のデトロイトモーターショーでワールドプレミアされた。
エクステリアデザインは米国カリフォルニアのデザインスタジオ、キャルティが担当。その完成度は非常に高かったことが当時も話題になっていた。当初は市販予定はなかったものの、コンセプトモデルの反響があまりにも大きかったことから市販されることになったエピソードを持つ。
結局、市販化までに6年以上もかかったが、市販車とコンセプトカーのスタイルの近さには驚かされる
●RAV-FOUR(1989年)……「新感覚、都会派4WD」!
こちらは1994年に登場のライトクロスオーバーSUV、初代RAV4の原型となったコンセプトモデル。オフロード機能をアート感覚でスタイリングしたのが特徴で、当時はなかったモノコックボディの乗用車ベースのSUVであることは初代RAV4にも引き継がれたが、初代RAV4とはだいぶ違う趣の月面車が似合いそうなスタイルも面白い。
ボディサイズは全長3485×全幅1695×全高1635mm、ホイールベース2200mm。エンジンは100psの直4、1.6L DOHCを搭載
●モーグル(1995年)……フォレストワーカーたちへ
当時のトヨタが「トヨタの森」という計画を進めていたこともあって開発された、林業従事者向け作業車のコンセプトカー。それまでは徒歩でしか行けなかった山岳路のような悪路でもクルマが傾かないようにアクティブサスを採用していたほか、現代のSUVに通じる下り坂をペダル操作なしで下れるヒルディセントアシストも搭載。
ボディサイズは全長3165×全幅1640×全高1795~2295mm、ホイールベース2000mmでエンジンは直4、1.5L OHCを搭載。
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