■50憶ドル相当の財宝をめぐる大冒険
こうやって書くと、まるで車とは無関係そうな映画ではあるのだが、実は車ファンに観て貰いたいシーンが用意されている。素晴らしい名車が登場し、しかも意外な使い方をされているのだ。
その車は、真っ赤なメルセデス・ベンツ300SL。50年代にダイムラーベンツが製造した高級スポーツカーだ。
この車の所有者はスペインの大富豪、サンティアゴ・モンカーダ(アントニオ・バンデラス)。
由緒正しき彼の一族は、黄金を持ち帰ることを条件にマゼランに資金提供したという過去があり、彼の隠した財宝はわがファミリーのものだと主張。ネイトたちのまえに立ちふさがり、あらゆる手を尽くして手に入れようとする。
そのモンカーダ曰く「この車は、私が18歳になったときに父がくれたもの。以来、私のラッキーチャームになっている」。
そういうくらいだから、どこに行くにも一緒。ニューヨークのオークションに参加するときもこの車で会場に乗り付け、母国スペインから財宝を求めてアジアまで足を延ばすときも、わざわざこの車を輸送機に乗せている。
もちろん、ピッカピカに磨き上げられていて、作業員に「絶対に傷をつけるな!」と厳しく言い放つ。
では、この車が壮絶カーチェイスを展開するのかというと、そんなことはない。ベンツ300SLがその威力を発揮するのは何と空の上。乗せられた輸送機から数珠つなぎになったコンテナが次々と落下し始めたとき、その最後を飾るかたちで本車が空を舞うのだ。
■劇的にスクリーンを舞うのはガルウイングのメルセデス!
300SLの特徴はガルウィング。カモメの羽根を連想することからこう名付けれたドアが大きく開かれ、何と本当に空を飛ぶというわけなのだ。
真っ青な空に、真っ赤なベンツ300SLの“羽根”が延びて舞う、その美しいことといったら! カーアクションといえばスピード、クラッシュ、チェイスと相場は決まっているけれど、本作ではそれとはまるで違う優雅さ&浮遊感を演出しているのだ。
おそらく、監督はこの図を撮りたくて、300SLを選んだに違いない。ガルウィングの車は映画でもよく登場するが、実際に空を飛んだのはおそらくこの作品が初めてではないだろうか。しかも、初めて市販車としてガルウィングを採用した300SLが、その役目を果たすのが何とも心憎い。
ゲーム版の『アンチャーテッド』の特徴には「独特なステージロケーション」と「超スリリングなシチュエーション」があるそうで、本作の場合はこの前代未聞の“空中のカーアクション”がそれに当たる。アクションファンはもちろん、車ファンも是非ともチェックして欲しい。
●解説●
兄のサムとふたり養護施設で育ったネイトことネイサン・ドレイク。その兄とは昔、生き別れとなり今はニューヨークでバーテンダーとして働いている。そんな彼の前にトレジャーハンターを名乗るサリーことビクター・サリバンが現われ、一緒にマゼランの50憶ドルの財宝を探そうと持ち掛けられる。
最初は断るネイサンだが、ビクターは兄サムの行方を知っているようだった。かくて手を組むふたりだが、そこにスペインの大富豪、モンカーダが立ちふさがる。
これまで6本がリリースされ、世界中で4400万本を売った大ヒットゲームの初の実写化だが、こちらはオリジナルのストーリー。ネイサンとビクターのチーム結成に至る前日譚になる。
ゲームではネイトの年齢は30歳くらいから始まり、サリーは彼より25歳上という設定だが、映画版ではもっと若々しく変更。トムホの実年齢は25歳で、ウォルバーグは50歳だ。
なお、一番の見せ場になっている空中のコンテナ落下シーンは、シリーズ3本目のゲーム『砂漠に眠るアトランティス』からの引用。ただし、ゲームには数珠つなぎのコンテナだけで車は登場しない。
メガホンを取ったのは『ヴェノム』(2018)等を手掛けたルーベン・フライシャー。
プロダクション側はシリーズ化にするつもり満々で、本作のエンディングもそういうノリになっている。もし実現すれば、トムホにとっては『スパイダーマン』に続く2本目のシリーズになる。
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『アンチャーテッド』
2022年2月18日(金)全国の映画館にて公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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