ドイツのメーカーは頑固一徹? BMWとポルシェのポリシー
ドイツには個性的な自動車メーカーが数多くあるが、BMWとポルシェはその代表格と言える。そして興味深いことに、クルマに関する考え方で、このふたつのメーカーには大きな違いがある。
近年はFFモデルにも力を入れているものの、BMWの主力製品は依然としてFR、あるいは4WDだ。これは前後重量配分を50:50にするのに都合がいいのはFRレイアウトだから。
先のマツダ車でも見たように、エンジンをフロント車軸より後ろに搭載してそこから駆動系をリアに向かって伸ばし、後輪にドライブシャフトを組み合わせれば前後の重量はほぼ均等になる。BMWが採用しているのがこの方法で、駆動効率などよりも重量配分を重視してFRを選んだ可能性が高い。
もちろん、操舵を前輪が担当して駆動を後輪が受け持てばFFに比べて前後タイヤを効率よく使えるようになり、結果としてクルマの操縦性は向上する。このことは重量配分と直接関係はないが、スポーティなモデルにFRが多いのはこうした理由も含まれている。
重量配分が50:50のクルマは走行中の荷重移動もさせやすく、高速コーナリングの際にドライバーが自由に制御できる範囲が広がる。BMWの目指す理想はここにあるのだろう。
対するポルシェのアイデンティティと言えば後輪軸よりも後ろにエンジンを搭載するRRレイアウトだ。BMW同様に最近ではRR以外のレイアウトを採用するポルシェも増えてきているが、フラグシップの911シリーズは現在でもRRを続けている。
メーカーからの正式な発表はないが、RRポルシェの前後重量配分は33: 67程度であると言われている。やはりリアにエンジンがあると相当なテールヘビー状態になっていることがわかる。
テールヘビーなクルマの利点はリアタイヤのトラクションが上がること。駆動輪であるリアタイヤへの荷重が大きいため、加速の際にはリアタイヤがしっかりと路面をとらえ、圧倒的な“蹴り出し”が得られる。
フロントが軽いこともあってコーナー進入時の回頭性も良好だが、問題は限界付近でリアが流れ出したとき。リアオーバーハングにあるエンジンの重さによって慣性が大きくなり、一度タイヤが滑り出してしまうとコントロールが難しくなる。
その対策としてポルシェではRR車のリアタイヤを太くしているものの、今度はそれが原因で重量増や車幅の拡大を招いてしまう。スポーツカーであってもRRの採用例が少ないのはこれらが理由だ。だが、初代モデルからRRを採用しているポルシェにとって、これは譲れない個性でもある。
ミドシップは理想的ではない?
理想の重量配分を考えるうえで欠かせないのが、運転席と後輪の間にエンジンを搭載するミドシップ(MR)。レーシングカーでも採用され、スーパーカーにも多いこのレイアウトだが、実はフロントミドシップに比べると50:50の重量配分に仕上げるのは難しい。
MRレイアウトでは駆動輪となるリアタイヤの直前にエンジンが載り、ギアボックスやドライブシャフトなどの駆動システムもリアに組み込まれる。このためどうしてもリアが重くなり、現状ではトヨタ最後のミドシップモデルであるMR-Sの重量配分は42:58だった。
つまり、フロントが軽くてクイックに向きを変えるものの、限界付近での挙動はシビアになりがち。とはいえRRほどではなく、ドライバーのコントロール下にあるのなら、十分に戦闘力の高いレイアウトではある。また、ミドシップレイアウトは重量物を車体中心に集めやすく、これも運動性能の向上に効果を発揮する。
しかし、実用性を考えるとFRやFFに対してあまりに不利であり、スポーツカーであってもミドシップを採用するモデルは減っている。
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