■思い出深いリトラ車:日産180SX
今20代~30代のみなさんは、「ワンエイティ」を知っているだろうか? S13型シルビア時代に、兄弟車として誕生し(約1年後の1989年5月発売)、約10年にわたって販売を継続した、スペシャリティクーペだ。
シルビアが2ドアクーペであったのに対し、180SXはファストバックの3ドアハッチバッククーペで、ヘッドライトもリトラクタブル式。各部のフラッシュサーフェス化(表面の突起や段差をなくすこと)なども図ったことで、空気抵抗係数は当時クラストップレベルのCd値0.30を達成。
前期型の搭載エンジンは最高出力175psのCA18DET型1.8L直4ターボで、S13型シルビアでは用意された自然吸気エンジンは180SXには採用されなかった。
1991年1月のマイナーチェンジでは最高出力205psのSR20DET型2L直4ターボに一新。また従来のHICAS-IIも、このタイミングで「Super HICAS」に進化しています。
1996年8月にはビッグマイナーチェンジが実施され、リアコンビランプがスカイライン風の丸型になるなどと同時に、自然吸気のSR20DE型2L直DOHC(最高出力140ps)を搭載するタイプSも設定された。
このような形で地道な改変を受けながら9年8カ月の長きにわたり販売が続けられた日産180SXでしたが、1998年12月、S15型日産シルビアに統合される形で生産終了となった。
50代の筆者にとって、シルビアがナンパなデートカーであったのに対し、180SXは硬派な走り屋のイメージが残っている。40代以下の人たちにはD1マシンというイメージかな。
蛇足となるが、180SXといえば「シルエイティ」の存在も記しておきたい。 シルエイティとは、要するに180SXのボディにS13シルビアのフロントまわりを移植した車両のこと。
そもそもなぜ180SXにS13シルビアの顔面を移植することになったかといえば、その発端は、走り屋さんが180SXの前部を破損させた際に「リトラクタブルヘッドライトだと部品代も修理代も高い。
だがシンプルな作りで台数も多いS13シルビアの前部を使えば、安価に直すことができる。さらにフロント部分の軽量化にもつながる」と考えたことから始まったと言われている。
そうして出来上がったシルエィティが自動車雑誌に掲載され、さらには当時の大人気マンガ『頭文字D』のなかで佐藤真子の愛機として青のシルエイティが採用されたことなどから、その人気に火が付いたのだ。
また1998年5月には限定500台で、日産純正のシルエイティが販売されたこともあった。これは名古屋のチューニングショップ「きっずはぁと」が、日産ディーラーに制作を委託したことによって実現したもので、純正シルエイティにはN1ライトやサイドステップ、専用ロゴやニスモ製LSDなどが装備されていた。
このメーカー純正シルエイティは、数あるシルエイティのなかで商標登録を使用することが日産から認められた唯一の車両。そのため現在シルエイティという名前は、日産公式の名称として存在していることは意外に知られていない。
また、180SXにS13シルビアの顔面を移植したのがシルエイティであるならば、「ワンビア」と呼ばれた、S13シルビアにワンエイティの顔面とリトラクタブルヘッドライトを移植したクルマもある。
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