ボディがピカピカでもヘッドライトが黄ばんだり曇ったりするとクルマが一気に古くさく見える。クルマの使用年数が長くなっている日本、くすんだヘッドライトのクルマはかなりの数になる。
ヘッドライトの劣化はほかのパーツに比べて激しく感じている人も多いハズ。いつまでも新車時のようにとは言わないけど悲しすぎる。
ヘッドライトはなぜ黄ばんだり、曇ったりくすんでしまうのか? それを止める方法? 回復させる方法はあるのか?
文:諸星陽一/写真:HONDA、MITSUBISHI、平野学、ベストカー編集部
中途半端に古いクルマより極端に古いクルマのほうが黄ばまない不思議
ちょっと古いクルマのヘッドライトのレンズが黄色く変色していることをよく見かけますが、すごく古いクルマのヘッドライトのレンズは黄色くなっていません。これはどうしてなのでしょう?
古くなってヘッドライトのレンズが黄色くなるなら、より古い、すごく古いクルマのほうがヘッドライトのレンズが黄色くなっていてもおかしくありませんよね?
これはレンズの材質が違うからなのです。昔のヘッドライトのレンズはガラスで作られていました。それが今のヘッドライトのレンズの多くは樹脂製となっているのです。
実は樹脂には黄変という現象がついてまわります。黄変とはその名のとおり、黄色く変化するということです。部屋の中を見まわしてみて下さい。ちょっと古いコンセントカバーやエアコンのリモコンなど、白い樹脂製の製品が若干黄ばんでいることを確認できませんか?
それと同じ現象がヘッドライトのレンズでも起きているというわけです。
最大の敵は紫外線と高熱
街中に駐まっているじっくりと観察してみると、ある時期のクルマはすごく黄変していて、ある時期以後のクルマはあまり黄変していないような気がします。
これはあくまでも経験論なのですが、クルマのレンズが樹脂化されてすぐの時代のクルマはものすごく黄変している感じがします。
おそらく、自動車メーカーも黄変についての認識が甘く、そのために対策が 充分ではなかったのではないかと思うのです。
黄変の原因について調べたところ、その原因の多くは紫外線にあるということがわかりました。単純に紫外線が当たるだけでも黄変は起きるのですが、それに加えて温度が高いと黄変が進みやすいことも判明。
ヘッドライトはハロゲンにしてもHID(ディスチャージあるいはキセノンと呼ばれることもある)にしてもそれなりの発熱量がありレンズ自体が温められるため、黄変が進むのです。
ヘッドライトのレンズに使われている樹脂は、ポリカーボネートと呼ばれるものです。
ポリカーボネートはベランダや屋上に設置するサンルームの素材にも使われていますが、サンルームではあまり黄変が進行したものを見かけません。これは、ポリカーボネートがさらされている温度が違うことも影響していることでしょう。
ヘッドライトのレンズが樹脂製になったのはいくつかの理由があります。昔はアメリカでクルマを売るためにはヘッドライトを規格サイズのシールドビームにする必要がありました。
シールドビームというのはライトそのものが電球になった構造のもので、いわゆるライト本体と電球(バルブ)にはわかれていないタイプのものです。
それが自由化されたこともあって、ヘッドライトデザインが一気に変わりました。ヘッドライトのデザインが自由になったことで、より加工しやすい樹脂が使われるようになったのです。
昔の一部のヘッドライトはレンズのみを交換することができましたが、現在のヘッドライトはレンズのみの交換はできず、ヘッドライトをアッセンブリーで交換する必要があります。
ヘッドライトの防水性を確保するため、レンズは接着剤でしっかりとコーキングされているからです。アッセンブリー交換となりますので、コストはそれなりに高いものとなります。
シールドビームもヘッドライトと電球が一体化されていたので、交換時はアッセンブリーで交換することになっていましたが、こちらは規格品だったので価格はさほど高いものではありませんでした。
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