■時が止まったかのような昭和の文化遺産的な店『北畔』@上野
いぶし銀の魅力漂う佇まいは昭和の大俳優の如き趣か。料理研究家の阿部なをさんが故郷青森の料理屋を始めたのは高度経済成長期の真っただ中、昭和34年のこと。
北の玄関口といわれた上野には地元の味を出す店はまだなかったという。当然、故郷を想う客であふれた。現在は長男で陶芸家の和唐さんの妻かよ子さんが切り盛り。
東北の旬の味覚をはじめ、体にやさしい素材を使った料理は滋養あふれる美味ばかりだ。酒飲みの健康を気遣って酒肴は野菜を多めにするなど「余計なおせっかいを焼いてます」と笑う。
名だたる文化人も通っていたそうで、彼らが酔って描いた壁画や書もすぐそこに。そう、ここは店そのものが昭和遺産なのである。
[住所]東京都台東区上野6-7-10
[電話]03-3831-8759
[営業時間]17時~22時半(21時半LO)
[休日]日・祝・月は月2回不定休
[交通]JR山手線ほか上野駅広小路口から徒歩2分
■店発祥の黒ホッピーと「やきとり」で一杯『たつや 駅前店(1階)』@恵比寿
今や酒場でお馴染みの黒ホッピーはこの店が発祥とされる。というのも初代がホッピーをギネスで割って出していたアイディアを元に開発された商品だから。
焼酎、ホッピー、ジョッキをキンキンに冷やして氷ナシで提供する“3冷”は「ホッピービバレッジ」の当時の社長の勧めで始めたとかで、その時に贈呈されたジョッキ専用冷蔵庫は歴史を繋いで現在2代目。
そんな伝統の1杯と最高の相性を発揮するのはやっぱり豚モツの串焼き「やきとり」だろう。毎日芝浦から仕入れるモツは鮮度抜群。
同じく名物の「がつ刺し」や「もつ煮どうふ」も一緒に味わえば酒が進んで仕方ない。ちなみに92歳の初代は引退後も時々店に飲みに来るそう。
[住所]東京都渋谷区恵比寿南1-8-1
[電話]03-3710-7375(1階)
[営業時間]8時~23時 ※金・土は~翌4時、日・祝は~22時
[休日]不定休
[交通]JR山手線ほか恵比寿駅西口から徒歩2分
■気取りない町酒場は安くてお得なメニューが豊富『大衆酒場 富士川』@大森
大森駅近の商店街を歩いていると目を引く「大衆酒場」の大看板。身も心も吸い寄せられるように暖簾をくぐれば提灯が連なるシブいカウンター。“ザ”を連呼したくなる昭和の風情は狙っても作れないんじゃないかな。
創業55年余り、重ねた年月の深みがある。グッと引き込まれるのは雰囲気だけじゃない。
100種以上の料理は大田市場から仕入れる旬の魚から定番の煮込み、銘柄豚のカツまで安くて量もたっぷり。中でも高知産の生本マグロ刺身は必食だ。
旨みとろけるトロや赤身など上質な味で一献やれば少々の疲れも吹き飛ぶはず。14時からの営業もうれしいねえ。おまけに17時までサワー類150円だとぉ?酒飲みのハートを射貫く。
[住所]東京都大田区大森北1-9-8
[電話]03-3765-4957
[営業時間]14時~22時(祝は~21時)
[休日]日
[交通]JR京浜東北線大森駅東口から徒歩4分
『おとなの週末』2023年10月号より
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