これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、今も高い人気を誇るパイクカーシリーズの第二弾、 PAO(パオ)を取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/日産
■日産パイクカーシリーズ第1弾を超えるヒット作
1987年に登場した日産Be-1(ビーワン)は、パイクカーを広く普及させたクルマとして認知されている。限定10000台に対してそれを超える受注が殺到し、購入者を抽選で決定する事態となり、中古車市場では新車価格を上まわる値がつけられるなど、当時の自動車市場に大きな反響と混乱をもたらした。
このBe-1の大ヒットは次のパイクカー開発に繋がり、同年10月に開催された第27回東京モーターショーには、Be-1と同じくK10型マーチをベースにした新たなパイクカー「PAO(パオ)」が参考出品された。
PAOは、ショーでのお披露目から1年3カ月ほどが経過した1989年1月に市販される。日産としては2匹目のドジョウを狙ったのは明白だが、それは見事に的中する。
PAOはBe-1と同様に限定車として販売されたが、台数を絞ったことによって市場に混乱を招いたBe-1のときの反省をふまえ、台数限定ではなく期間限定での販売となった。予約受付期間は3カ月間だったが、それでも5万台を超える受注があり、最終的な受注分すべてを納車するのに1年半を要したという。
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