こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 日産が狙った2匹目のドジョウ「パオ」は1匹目を超える大ヒット!!

■技術的魅力は薄くても小型車の本質をしっかりと追求

 メカニズムはBe-1と同様にK10型マーチをベースとしている。エンジンは日常的な場面での使い勝手に優れたMA10S型1Lユニットで、トランスミッションは5速MTと3速ATが選択できた。

 走行性能については際立った特徴は持たず、1.0Lエンジンは自然吸気とあって力不足は否めず、乗り心地やハンドリングにも特筆すべき要素は皆無である。

 アドベンチャー感覚をアピールするべく外観はワイルドに仕上げられているが、オフロード走行を許容するわけでもない。

  しかし、取りまわしのいい小型のボディや、Be-1では未設定だったパワーステリングを標準装着するなど、小型車の本質はしっかりと体現されていることから日常的な場面でスマートに扱える。

「Earthy Color」と呼ばれる淡い色合いのボディカラーもPAOの特徴であるレトロ調スタイルの演出に貢献している
「Earthy Color」と呼ばれる淡い色合いのボディカラーもPAOの特徴であるレトロ調スタイルの演出に貢献している

 Be-1よりもさらにレトロ方向に踏み込んだ独特のスタイルもさることながら、Be-1のヒットから間髪入れず登場したことも、5万1657台という破格の予約台数を達成した要因だと言える。

 PAOのヒットは、日産パイクカーシリーズの人気を不動のものとし、エスカルゴ、フィガロ、ラシーンへと引き継がれていく。

 はっきり言って個性以外に秀でた部分は見当たらないが、その強烈なオリジナリティは、機能や走行性能、安全性といった基本的な能力を高い次元で調和させた現代のコンパクトカーでは得られない価値となって、ユーザーに所有する満足感をもたらしてくれる。

 それもあって生産終了から30年以上を経た今も乗り続けているユーザーがいたり、中古車を求める人も少なくない。

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