■幻のS-FRは年間20万台を売らない限り200万円台は難しかった
で、S-FRだ。2015年の東京モーターショーで華々しくデビューしたこのコンパクトFRスポーツカー。
キュートなデザインと小さいながらリアシートを持つ2+2であることなど、スポーツカー好きのハートを大いにときめかせたのだが、案の定というべきか、肝心の市販計画は何時までたっても聞こえてこず。
どうやら開発中止というのが業界筋の認識となっている。
2015年当時、メディアでは「1.5Lの直4エンジンのFRで価格は200万円を切る!」と期待する声が高かったが、アクアやヴィッツみたいに年間20万台以上造るならいざしらず、少量生産のスポーツカーでその価格は到底ムリ。
どうも、みなさん「トヨタならこのくらい安く造るだろう」という期待感があるみたいだ。
しかしいくらトヨタでもロードスター似たようなパッケージのFRスポーツカーを、ロードスターより遥かに安く供給するなんてことができるわけないと思いませんか?
思うに、クルマ好きの皆さん(とくにオジサン)は、トヨタMR-Sの初期モデルが160万円程度から買えた時代の記憶があるはず。
「ヴィッツあたりのメカを流用すればトヨタなら安くFRスポーツができるだろう」と考えているフシがあるようだが、そのMR-Sだって2007年の最終モデルでは240万円まで値上がりしている。
そこに現代の法規制が要求する衝突安全装備やADAS系装備を追加したら、どうやったって86/BRZ並の価格になってしまうわけで、これでは商品として成り立たないわけです。
むしろ、ロードスターが30年かけてコツコツ累計100万台という数字を積み重ねて来れたのが奇跡みたいなもので、普及価格帯でFRスポーツカーをビジネスの軌道に乗せるのはとてつもなく難しいコトと考えるべきなんじゃないでしょうか。
逆に、同じスポーツカーでも最初から高価な販売価格を設定できるなら、そんなに苦労はしないですむ。
同じトヨタでもレクサスで展開している“F”シリーズはまったく別のビジネスモデルで造られるクルマで、決して数多くくれているとは言い難いけれど、バリエーションを増やしつつ順調に改良が重ねられている。
先日もRC Fの試乗会が富士スピードウェイで行われたが、1000万円を超える価格レンジなら、スポーツカービジネスがきちんと継続できることを実感した。
86/BRZが8年目に入ったことで、そろそろその後継モデルが噂される時期となり、その可能性のひとつとしてS-FRから派生したFRスポーツというアイディアが語られたりもしている。
しかし、せっかくプラットフォームから立ち上げた86/BRZを一代限りで使い捨てるというのは疑問。
そういう意味でも、S-FRがコンセプトカーのようなカタチで市販されることは、ぼくは限りなく可能性が低いと思っている次第であります。
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