レクサス、スバルなど各メーカー「顔」デザインの成功&失敗 6選

レクサス、スバルなど各メーカー「顔」デザインの成功&失敗 6選

 昨今の自動車デザインを形成するうえで大きな特徴となっているのが「顔」だろう。各社が統一した「顔」をデザインに持たせることで、ブランドをすぐに消費者に理解させる狙いもある。

 しかしこの「顔」にもやはり成功と失敗がある。特徴的なデザインが消費者から敬遠されたり、あまりにも似すぎたデザインで「全部同じクルマ」なんて指摘されるメーカーも多い。

 各社の「顔」での成功パターン、そして失敗パターンを振り返っていこう。デザインには一家言ある清水草一氏に聞いてみました。

文:清水草一/写真:レクサス、BMW、ACURA、Peugeot、三菱、スバル、日産


■「顔」を作ることについて最後発だった日本メーカー

 現在、各自動車メーカーが、それぞれのデザインアイデンティティを持った顔を作っている。いわばブランドを表す看板とでも申しましょうか?

 誰が見ても、遠くから見ても一目でわかるように、目印として「統一した顔」を持とうってことですね。

 これは世界的な傾向だが、その中にあって日本メーカーは最後発グループだ。

BMWはその特徴的なキドニーグリルを戦前から使ってきた。80年以上の歴史がある「顔」と最近それを始めた日本車とは歴史の厚みが違うのは当然だ(写真は1936年頃に作られたBMW328)

 トヨタのキーンルックや、日産のVモーショングリルを見て、「なんだこりゃ」「こんなことして意味あんのか」と思ったクルマ好きも少なくないでしょうが、ようやく日本にもグローバルな流れが押し寄せた、というのが実情だ。

 考えてみりゃ、メルセデス・ベンツのラジエター型グリルやBMWのキドニーグリルは、戦前からのもの。

 こういった統一顔を持つのは、主に高級ブランドメーカーのものだったため、高級ブランドのない国産車には存在しなかったのだ。

 が、現在は高級じゃなくても、すべての自動車メーカーが自社のアイデンティティを明確にすべく、統一顔を持とうとしている。

 世界の市場がグローバル化して垣根が低くなった今、各メーカーともに全世界で勝負しなければならない。

 国産メーカーも、かつては国内市場が主で輸出は従だったが、現在は完全に逆転した。

 世界で戦うには、旗幟を鮮明にしないと生き残れないという、強迫観念に近いものが自動車業界には存在する。

 しかし、その統一顔がうまくいっているブランドと、あんまりうまくいってないブランドがある。そりゃそうだよね。どんな分野でも勝者と敗者はあるのが常だから。

 ということで、国産・輸入を問わず、近年誕生した「統一顔」の成功度をランキングしてみたいと思います。

■レクサス/三菱/スバルは成功者の部類に入る!!

【成功/レクサス】★★★★★

 レクサスのスピンドルグリルが登場したのは、2012年の4代目GSから。つまりまだたったの7年しかたっていないが、もう完全にレクサスの顔として認識されたし、好感度も高い。

 というより、「スピンドルグリル=レクサス=高級」という連想ゲームが、ユーザー側に定着したと言うべきか。

最初スピンドルグリルを見た消費者の反応は決してよくはなかった。しかし今やこのグリルをみればすぐにレクサスを連想させるのも事実。戦略としては成功だ

 登場当初は、特に国内では「エグイ」とか「あのヘンテコな形のグリルはなんだ」「目立ちすぎる」といった批判の声が聞かれたが、アウディのシングルフレームグリルも当初はそんなものだった。

 強烈な印象を残すデザインは、つまり個性的なわけで、当初は拒絶反応が出る。

 しかしブランドの統一顔は、見る者にある程度強烈な印象を残さなければ無意味。その点スピンドルグリルは適度に強烈かつ適度に個性的で、統一顔としての役割をきっちり果たしている。

 ちなみに、スピンドルとは「糸車」という意味だが、これはトヨタの前身が豊田自動織機という織物機械メーカーだったことにちなんでいる。つまりトヨタの歴史を体現している部分もあるわけですね。

【たぶん成功/三菱】★★★★☆

 三菱の顔と言えば、かつて「ブーレイ顔」があったが、これは完全に失敗し、現在はX字型にクロスする流れを持つ「ダイナミックシールド」を展開している。

 ダイナミックシールドは、パジェロなどのたくましいイメージ=プロテクションと、ランエボなどの台形グリル=パフォーマンスを融合させたということだが、レクサス同様、適度に強烈かつ適度に個性的であろうとした結果だろう。

 ダイナミックシールドが最初に商品化されたのは、2015年のアウトランダー(マイナーチェンジ)だった。つまりまだ4年なんですね。

三菱の新しいアイデンティティになりそうな「デリカ顔」。eKクロスにも採用されておりそのド迫力はまさに「三菱らしさ」の象徴だ

 当初は取ってつけた印象が強かったし、続くeKカスタムやRVR、エクリプスクロスも、「ふーん」程度のものだった。

 しかし今年発表されたデリカD:5とeKクロスでは、その個性派ぶりを盛大に開花させ、すさまじい賛否両論を巻き起こした。
 
 この賛否両論――というより、まず否定論が一斉に噴出するものの販売は意外と好調、という流れこそ、統一顔成功の兆し。

 一度見たらクセになって目をそらせなくなり、エグいとか醜いと思いつつ、「いや、意外とカッコいいかも!」となるのが黄金パターンだ。

 ダイナミックシールドは、まだその成否ははっきりしていないが、おそらく成功するんじゃないか。ただそれは、デリカD:5以降のエグいパターンのほうで、アウトランダー系のヌルいダイナミックシールドではダメだろう。

【プチ成功/スバル】★★★☆☆

 スバルも、顔のイメージをゆるーく統一しようという意図は感じられるが、その顔には、強烈な個性はない。

強い個性はないもののこの六角形グリルとライトの組み合わせは、地味ながらスバルらしさ全開のデザインだ

 どこにでもありそうな六角形のグリル形状と、角形異形のヘッドライトの組み合わせにすぎない。

 しかし、各ブランドが強烈な顔で勝負する中、この自己主張の弱さが、スバルらしい質実剛健さにマッチして、逆に好印象を与えている。

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