ホンダNSXがパッとしない理由と事情 スーパーカーにしては地味!??

■輝きを失わない日産GT-Rとは何が違ったのだろうか?

 一方、登場から13年も経過した35GT-Rは、いまだにメディアからの注目度は高いし、世界中に熱烈なファンがいる。

 35GT-Rも、ビジネス的に成功したとは言えない。販売台数を見ても、グローバルで年間1000台強にとどまっている。

いよいよ熟成の時期にきたGT-R。すでにモデルライフは13年を迎えようとしている

 これは、フェラーリやランボルギーニの販売台数と比較すると数分の1レベルで、価格の安さを考えると、ビジネス的には大失敗と言ってもいいかもしれない。

 しかし35GT-Rは、間違いなく神話になった。なぜならGT-Rは、価格当たりの速さなら世界一だからだ。

 加えて、チューニングによって世界一クラスの速さに仕立てることもできる。他のスーパーカーはいじるのが難しいので、この発展性はGT-Rの絶対的な強みだ。

 いっぽうNSXはどうか。

 エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド・スーパーカーとしては、他にマクラーレンP1やラ・フェラーリがあるが、それらは1億円以上の超雲上界クラスで、NSXは断然値段が安い。

 つまり、世界一安いハイブリッド・スーパーカーだ。しかし、世界一なのはその点だけ。世界一速いわけではなく、GT-Rのようにチューニングできるわけでもない。

 価格は2000万円台中盤で、フェラーリやランボルギーニより「そこそこ安い」という微妙な位置にいる。

 この微妙さ、まさにビミョーだ。富裕層から見ると安物スーパーカーなので魅力的ではないし、逆に大衆にはまったく手が届かない。

 それでいて、クルマそのものに強烈な個性や、圧倒的な唯一絶対性があるわけではない。

初代NSXはセナがセッティングを煮詰め、そしてミドシップながら荷室もあった。そして徹底的に運動性能を煮詰めたタイプRも設定し伝説になった。現行型はいったいどうなる??

 十分に速いし、よく曲がるし、シチュエーションによって使い分けもできるいいクルマだが、スーパーカーというのはバランスの良さではなく、圧倒的な非日常性のために存在している。

 ハイブリッドというメカも、スーパーカーとしては特にアドバンテージにはならない。

 現在、スポーツカーは二極分化している。雲上界か、ギリギリ大衆の手に届くかのどちらかだ。

 前者はフェラーリやランボルギーニで、後者はポルシェ・ボクスター系からマツダロードスターまで。

 ポルシェ911は例外的に中途半端な価格帯にあるが、これはポルシェという圧倒的なブランドゆえ、価格を超越して成り立っている。

 現在ホンダは、大衆車としての地位は世界中でしっかり築いているが、ブランドイメージが高いかといえばそうでもない。

 ましてやスーパーカーの世界では、初代NSXに続いてようやく2台目をリリースしただけの新参者。F1での神話も遠い過去の話だ。

 つまりホンダ車は、NSXも含めて大衆車の延長線上にあるわけで、スーパーカーをリリースするなら、安い値段で天上界のスーパーカーたちをブチ抜く! という、下克上的存在にすべきだったのではないか。

 棲み分けとしては、GT-Rのようにパワーで迫るのではなく、かつてのロータス・ヨーロッパのように、軽量ボディ&コーナリング性能で勝負する、ライトウェイトスーパーカーにすべきだったんじゃないか?

1000万円を切る価格で速さではなく操る楽しさでスーパースポーツを復活させたアルピーヌ。A110はまさに消費者心理を読み切った1台

 S660のお兄さん的な。アルピーヌA110はいいところを突いた。

 いまさら言っても詮無いことだが、いつか次期NSXが出ることがあれば、ホンダのスーパーカーはどういうフィールドで戦うべきか、勝算があるとすればどういうポジションなのか、それを考えてほしい。

 そして、世界中の大衆が憧れるような、独自のスーパーカーをリリースしてほしい。あくまで大衆向けでお願いします!

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