今年のF1日本GPの観客数が過去最低を記録したと各所で取り上げられた。「1990年代ブーム期のF1のほうが凄かった」という声も耳にするが、今のF1は凄くないのか? “5つの疑問”から検証する。
監修:津川哲夫/写真:Daimler、Williams、Honda、Ferrari
ベストカー2016年12月10日号
過去最高動員数は1990年代ではなく、2006年
鈴鹿で開催されたF1日本GPのなかで、観客動員数最低(3日間計14万5000人)は今年。では、最高はいつなのか?
まずは、鈴鹿サーキットを管理するモビリティランドに聞いた。
Q1 観客数が最も凄かった年とその理由は?
モビリティランド 過去最高は2006年(3日間計36万1000人)です。収容人数は、F1開催当初の1987年から2009年の大規模改修後も、大きくは変わっていません。
2006年の観客増の背景には、翌年から富士スピードウェイでF1が開催されることもありましたが、シーズン展開も見応えのある年だったことが大きいと思います。
2006年はこの年いっぱいで引退を表明したミハエル・シューマッハ(フェラーリ)とフェルナンド・アロンソ(ルノー)とのハイレベルなタイトル争いが繰り広げられ、現在まで破られていない鈴鹿のコースレコードが記録された年でもある。
では、ドライバーやマシンのレベルは1990年代と今で、どう変わったのか? ここからはF1ジャーナリストの津川哲夫氏が疑問に回答する。
Q2 1990年代と現代を比べて、トップドライバーのレベルは落ちた?
津川 アロンソを筆頭にルイス・ハミルトン(メルセデス)やセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)であれば条件が同じならセナやプロスト、シューマッハと遜色ない。
ただ、チームを操る能力は過去のドライバーに軍配が上がりそう。これは(F1デビューの若年化で)現役ドライバーが若すぎるのと、トップチームの巨大化・肥大化でドライバー個人がチームを引っ張ることが難しくなったからなんだ。
Q3 1990年頃と、2016年のマシンを比べると、どのくらい進化している?
津川 1990年頃はアナログ時代で、やっとデジタル化が見え、セミオートマやアクティブサスペンションのテストが始まったばかり。現在はすべてがハイテク管理下で、セッティングの多くはパソコンのキーボードで行っているんだ。
パワーそのものではなく、パワーユニットのハイテク制御技術が走行性能を支配し、電子制御がマシン性能を管理して、F1マシンはドライバーを包む“パワードスーツ”になった。それくらいデジタル化、ハイテク化を中心に性能は飛躍的に進化したといえるね。
Q4 では、現代F1の人気を上げるには何が必要?
津川 必要なのは2つ。ひとつはF1の徹底したハイテク高性能化と自由なスタイル。だけど、本当に必要なのはドライバー同士のガチバトルだよ。激しい渡り合いがレースを通して行われれば面白いはず。
今のようにタイヤや燃料マネジメントが勝負を決めるのではなく、それらを激しいバトルで使い切っての勝負こそが人気を呼ぶはず!!
Q5 来年のF1マシンは史上最速のマシンになると言われていますが、どのくらい速くなる? ドライバーに求められるものも変わる?
津川 来年はスピードアップを狙い、タイヤのワイド化、ボディサイズとウイングの大型化で、ダウンフォースが大きく上昇。1周のタイムは5~6秒も向上しそうなんだ。
それも最高速は上がらずにコーナーでタイムを稼ぐグリップマシンになるから、横方向のGが増し、ドライバーの首への負担が極端に増す。再び昔のような“マッチョドライバー”がF1に帰ってくるはずだよ。
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